ブリッジズ第二次遠征隊として、風力発電所もカイラルネットワークに加えて、序盤の東部エリアの未接続拠点は、残すところポート・ノットシティのみという状態にしたのが前回までのサムの働きでした。今回は辺境の風力発電所からいったん K2西配送センターまで配達がてら戻ります。

前回でサムじゃなくてもできる「指名なし依頼」が配送端末から受注できるようになったんですけど、ストーリーと関係ない部分は Twitch でまとめて配信して、物語と関連する重要そうな部分だけ別途プレイ日記にまとめようと考えているので、今回はサム指名の配達依頼 No. 11「K2西配送センターへ『樹脂素材』を配送せよ」をやっていきます。風力発電所から、またもと来た場所へ戻っていくような動きになります。

風力発電所が保管していた樹脂素材を K2西配送センターへ届ける。1ケースも不足しない配送が望まれる。素材が増えるとカイラル・プリンターで出力できるモノのバリエーションが増える。

サム指名依頼 No. 11「K2西配送センターへ『樹脂素材』を配送せよ」の依頼の詳細より
Anything You Need

今回の配達は来た道を戻るだけの簡単なお仕事です。とくにカイラル通信に接続されたことで、ほかのプレイヤーが設置した看板や道具、建設物が新たに現れるので、行きよりもずいぶん楽に戻れるようになるはずです。

難関の足場が悪い森林地帯の崖を越えると、坂道を下り始めるところで、また Low Roar の楽曲 Anything You Need が流れ始めます。

今回の楽曲は短くて、歌詞も決まったフレーズを繰り返すだけの簡単な内容になっています。

Come in, come in, come in
Take anything you want from me
Come in, come in, come in
Take anything you need
Anything you need

Anything You Need

「どうぞ、どうぞ、なかに入って。あなたが必要なものを私から取っていって。あなたが必要なものはなんでも」と歌い上げる歌詞の意味を追うと、けっこう慈悲深い感じがするので、どっちかって言うと、サムよりブリジットやアメリの博愛精神に近いものを感じます。とくに前回でカイラル通信をつないだ風力発電所は、初めてのブリッジズの発電所で、カイラル通信のデータだけでなく、電力もビーチを経由して配給するシステムを正式に運用し始めたところなので、ビーチの機能を北米大陸のために提供している絶滅体のアメリ視点のほうがなんとなく合う気がします。

簡単な仕事とか言っといて、途中で調子に乗って大きな落とし物を拾ったら、限界重量を超えてしまったので、途中でサムに「水を飲ませろ」とケンカを売られながら足を引きずって K2西配送センターまで戻ってくることになりました。まあ、無事に戻れたからいいよね。

今回はサム指名の配達依頼でしたけど、物語のメインストリームが、キャピタル・ノットシティまでいったん戻って、そこから配達荷物を持ってポート・ノットシティまで行くことになっているので、今回の配達ではとくに物語上、重要そうな話は出てきませんでした。

強いて言えば、K2西配送センターの担当者、ベンジャミン・ハンコックさんさんが別れ際に言う「あんたみたいな伝説の配達人が他にも大勢いる気がする」という言葉が、このゲームでほかのプレイヤーとのつながりも考慮されているシステムとかを反映していますし、ハートマンが以前に言及した多次元宇宙理論にもなにか関わっているのかもしれません。

さて、配達任務はこれで終わりなんですが、前回、エネルギーを生み出す風力発電所をカイラル通信につないだことで、ブリッジズが各地に電力を供給するインフラストラクチャーが確立されました。安定して電力が供給できるようになったので、カイラル・プリンターで生成できるサムの建設装置に、ママーが「発電機」を新たに追加してくれました。文字どおり、周囲にあるもののバッテリーを充電してくれます。

放置トライク

ねえ、サム。発電機で充電すれば、バイクが動かせるようになるかもしれない。試してみる?

ママー

これで K2西配送センター前にずっと放置されていたバイクというか電動トライクを充電して勝手に乗り回すことができますし、今後バッテリー駆動のサムの配達道具がどんどん追加されていくので、発電機はある意味サムの仕事の生命線になってきます。こういうところは現代の生活と変わりませんね。災害で停電したりすると身にしみてわかりますけど、電気がある生活って本当に便利ですもん。

発電機 ver. 1

建設装置で建てたいものを発電機に切り替えて、ポストや簡易観測塔と同じ要領で任意の場所に建設します。

トライク充電中

発電機は周囲の一定範囲にあるバッテリーを自動的に充電してくれます。ちなみに無線です。充電中は稲妻のような視覚効果が出るので、充電の完了を目で確認できます。これもこれですごい技術です。新しい iPhone SE にしてからワイヤレス充電の Qi を利用しているんですけど、ケースも考えて選ばないといけないぐらい、充電できる範囲が狭いので、こんな広範囲のワイヤレス充電、逆におそろしくすら感じます。

うちはサムが育ての親の死体を48時間放置して、外でほっつき歩いていたので、そのあいだにバイクが時雨にさらされて、劣化に劣化を重ねてボロボロになっていたので、充電を終えたあとは、すぐに K2西配送センターの車庫に入れて、ブリッジズの裏方作業班に修理してもらいます。配達に使う乗り物は、サムがプライベート・ルームに入るときに一緒に車庫に入れると、メンテナンスに回されるムービーが少しだけ確認できます。

修理が完了したトライク

修理が完了して、ピカピカのバイクと一緒にサムがプライベート・ルームから出てきました。しかし、東部エリアはバイクを乗り回すほどマップが広くなく、しかも途中で道を分断するように座礁地帯も広がっているので、正直あまりここで活躍する乗り物ではないと思っています。中部マップからは国道を復活させることができるので、本領を発揮できるのはそこからじゃないでしょうか。

質より量

ひとつ配達依頼を済ませると、また各地のブリッジズ担当者からサムにメールが届くようになります。今回おもしろいなと思ったのは、キャピタル・ノットシティのニック・イーストンさんのメールです。配達人グレードのうち、「数量を優先すべきだと思わないか?」と持論を展開します。配達依頼がひとつ完了すると、サムの仕事は都度、安全性、数量、速度、サービス、ブリッジリンクの5点から評価されます。彼はそのうち、数量が一番重視されるべきだと訴えています。これは彼がキャピタル・ノットシティという人口が多い大都市の担当者であることも関連しているのでしょう。

安全が一番

これと同様のメールが、ベンジャミン・ハンコックさんからも届きます。彼は5項目のうち、「安全性を最優先すべきだと思っている」とサムに訴えます。これは彼が座礁地帯とミュールの脅威にさらされた土地で長いあいだ孤立してきた拠点の担当者であることも影響していると思います。

こうしたメールによって、同じブリッジズの担当者とは言え、サムの仕事に対して重要視するポイントが違うことが描かれています。現実の配達業者もそうなんでしょうけど、やっぱり人によって違うニーズをくみ取って、丁寧に対応していくのが本当は一番ってことなんでしょうね。難しいわ!

あとは、ハートマンが書いた過去のメール文書も2通出てきたので、一緒に見ていきます。最初はカイラル汚染について書いたメールの続きです。

ライクチン

カイラル汚染は、ストレスと同様に緩和することはできる。もちろん、カイラル物質との接触を避けなければ根本的な解決にはならないが。
最近になって、カイラル汚染の影響を緩和し、体力や精神力の低下を回復させる Likecin(ライクチン)ホルモンが注目されるようになった。これはオキシトシンのように外側からは取り込めず、外部からの刺激によって自ら分泌するしかない。達成感や高揚感、人に感謝されたり、褒められたり、つまり「いいね!」と言ってもらえた時のプラスの感情が大きく作用すると言われている。

ハートマン

この手の論文を細かくチェックしているわけではないので、あながち否定はできませんが、おそらく Likecin(ライクチン)ホルモンはこのゲーム独自の架空の分泌物だと思います。それより重要なのが、他者から認められることによって分泌されるホルモンで、カイラル汚染が緩和できるという設定です。ここらへんはアメリがブリジットの代わりに訴え続ける「人は孤立する生き物じゃない。寄り添って、お互いを補う生き物だから」あたりの言葉に結びつけられると思います。この『デス・ストランディング』の世界では、死は孤独なのかな?

あと、「いいね!」でカイラル汚染を緩和できるなら、カイラル汚染の結果「いいね!」ほしさに暴走した配達依存症のミュールは、ある意味で本能的な自己防衛に走っている姿なのかもしれませんね。

BT の手

私たちの祖先は、直立二足歩行をしたことで、両手を自由に使うことができるようになった。240万年前のアフリカで、石器をつくった『道具を作る人(ホモ・ハビリス)』が生まれた。
私たちの世界を感じるためには、目や鼻、口、耳といった器官を使う。これらの顔についている器官は、みんな受動的だ。目は光を受ける。鼻は臭いを、耳は音を、口は味を受け止める。
だが、手は違う。自分の意志で差し出せば、モノに触れる。掴むこともできる。BT が人間を探しに来る時に手形が現れるのは、奴らが私たちと繋がろうとしているからだ。
死者の世界とこの世界を結びつけるために、手を差し伸べてくるんだ。

ハートマン

次のハートマンのメールを読むと、BT が能動的に生者に手を伸ばしていること、そしてそれは、彼らが生者とつながることを望んでいるからだということがわかってきます。つながるために差し出される手は、ホモ・ハビリスを祖先に持つ人間だけがビーチを持っている理由のひとつになるかもしれません。

ここらへんは、カイラル結晶の形状に関連して、私が絶滅体について書いてきたことにもつながります。ビーチの存在はなんらかの目的を持って、生者との接触を切望しています。私はそれを、爆発が彼らの繁殖行為だからじゃないかと推測してきました。

先日、クリストファー・ノーラン監督の新作映画 TENET (『テネット』)を観てきまして、小難しい量子力学の知識をバカなりに頭を爆発させながら調べていました。その知識は『デス・ストランディング』の掘り下げにも役立つと思います。

例えば、アルベルト・アインシュタインが考え出した有名な E=mc2 の等式です。E はエネルギー、m は質量、c は光速度になっていて、めちゃくちゃザックリまとめると、バカでかいエネルギーは質量を持つ物質と等価であると考えられます。エネルギーが特定の条件下で物質に置き換えられる現象は「対生成」、反対に物質がエネルギーに置き換えられる現象は「対消滅」と呼ばれ、後者は「ヴォイド・アウト」というルビ付きで本作のゲームプレイにも登場しています。

物質とエネルギーが変換できるわかりやすい例が、原子爆弾です。物質を構成する基本単位の原子から、さらにその構成要素である電子や陽電子などを抜く、あるいは中性子を人為的に加えるなどして、不安定になった原子核が安定した状態に落ち着くために崩壊する核分裂反応を利用しています。その原子が崩壊して別の元素に分裂する反応では、質量が失われて大量のエネルギーも放出されます。原子爆弾や原子力発電は、そのエネルギーを目的としています。

サムはオープニングムービーで、みんな爆発で生まれたとポエムを詠み上げています。宇宙の始まりとなる爆発は、そのエネルギーで原子を構成している要素をかき混ぜ、新しい元素を生み出し、豊かな物質を生み出しました。反対に、電子と陽電子など、粒子と反粒子といった相反する存在が触れあうことで、エネルギーが生成される現象もあります。

『デス・ストランディング』の世界では、生者と BT のように、対になる存在が触れあうことで、両者が無に帰す対消滅が起こります。物質としての両者は消えますが、そこから莫大なエネルギーが生み出されて爆発が起こります。その爆発から、また新しい対生成が起こる可能性もあります。

今まで、本作の死生観の考察は、古代エジプトのような神の魔法を前提にした口承や神話、ファンタジー視点で掘り下げることが多かったんですが、ちょっとかじっただけの量子力学の知識を当てはめるなら、おそらく肉体を持つ生者が物質であって、死者の魂がエネルギーになるんだと思います。北米大陸の生者は肉という物質を生み出し、種の繁栄を目指しています。ビーチの存在は物質からエネルギーを生み出して、新しいなにかを生み出そうとしています。私のデス・ストランディングは絶滅体の繁殖期説をあえて説明するならこんな感じでしょうか。

エネルギーという点で着目するとおもしろいのが、前回から風力発電所という、まさにエネルギーを生成するブリッジズの拠点をカイラルネットワークに加えている点です。カイラル通信はデータだけでなく、エネルギーもやりとりできます。それもロス率ゼロの高効率です。なんでビーチを介すだけでそんなスーパーテクノロジーが実現できるのかと言えば、北米大陸よりビーチのほうが、エネルギーが質量を持つ形態にあまりならない宇宙に存在しているからなのかなという気がします。

BT キャッチャー

対消滅関連で、もうちょっと掘り下げておきたいのが BT のキャッチャーの特殊性です。生者と BT は対になる存在なので、触れあうと対消滅を起こすと書きましたが、厳密に言うと生者がゲイザーに引っ張り回されても、ハンターに体をつかまれても、対消滅が起きることはありません。爆発が始まるのは、最後に登場するキャッチャーが生者を体内に飲み込んだときだけです。キャッチャーの体内に反物質のようなものが蓄えられているという知識は、イゴール先輩が爆発したシーン小説『デス・ストランディング(上)』の記述からわかります。

BT が古代エジプトで言うところのカーであり、死者の魂であり、エネルギーであると、これまでまとめて書いてきましたが、その性質は生者の肉体や北米大陸を構成する物質とは反対のものです。でも、キャッチャーの体内にあるものが反物質のようなものであれば、その部分は少なくとも物質です。現実の対消滅は、電子と陽電子といった電荷が反対になっている素粒子の衝突によって起こります。電子と陽電子はどちらも素粒子であり、物質を構成する最小単位です。BT のキャッチャーが反物質を持っているなら、彼らはある意味、生者の肉体を一部に持っているとも言えます。この点から、BT のなかでも、対消滅を起こすキャッチャーだけは、純粋な死者の魂とは言えないと思います。おそらく死者の国と生者の国の両方の性質を映し出すビーチの絶滅体の性質が出ていて、生者の部分も具現化しているんじゃないでしょうか。あるいは、ネクローシスでタール溜まりに消えた死体が反物質に加工されてキャッチャーの体内に蓄えられている可能性もあるかもしれません。

ルーデンス・マニアの落とし物

また、話が盛大に逸れてしまったので、ここらへんで切り上げます。バイクを充電したときに、K2西配送センターの目の前にルーデンス・マニアの落とし物があることに気づきました。ここ東部エリアにはブリッジズの拠点のほかに、個人のシェルターが2か所あって、こういう落とし物を拾って届けることで交流が始まって、ブリッジズと同じように配達依頼を受注できるようになります。この荷物はそのうち Twitch の配信ででも届けにいくことにします。

指さし スピード配達には応じないうちのサムワンに続く
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