前々回、無事に東部エリア最西端のポート・ノットシティまでたどり着いたブリッジズ第二次遠征隊のサム。前回はプライベート・ルームで一休みしたあと、オジサンたちのメール内容をおさらいしていました。休憩も済んだ今回は、プライベート・ルームから出て、ヴィクトール兄さんから指示されたとおり、港の波止場に向かおうと思います。

ところが、サムが建物のそとへ目をやると、雨が降らないはずのノットシティで嵐が起きていたのでした。小説『デス・ストランディング』で、ノットシティに雨が降らない点について、サムは「離れた場所に衛星(サテライト)のように焼却所が建設され、カイラリウムの汚染を排除しているのだ」と述べています。この北米大陸を宇宙に例える話はこれまでもなんどか出てきましたが、ノットシティが惑星で焼却所は衛星なのかな?

サムは警報も警戒を促す無線も鳴らないことをいぶかしがりながら、出入口前のスロープで吹きつける突風にさらされ、自力で立っていることもままならなくなります。ポート・ノットシティの入り口が、「サムを飲み込んで強烈な酸で溶かそうとする、鯨の内臓」のようだと感じています。ノットシティのインスピレーションはナビオじゃなくて口を開けた座礁鯨っぽいですね。

エコロケーションが使える時点で、ブリッジ・ベイビーたちも座礁鯨のイメージで見たほうがいいんじゃないかというようなことを以前に書きましたが、ノットシティに設けられたカイラル通信のシステムはブリッジ・ベイビーを人柱にしていると言うし、案外キレイにつながるかもしれません。たぶん、アメリは人間の赤ちゃんがほしくて本能的にビーチに引き寄せているんでしょう。

サムがポート・ノットシティのスロープで突風におののいているとき、胸に装着された BB-28は、突風で飛んだ物が叩きつけられる音に驚き、泣き出していましたが、サムは直感で「この子は怒っているのだ」と気づきます。厚生労働省が出している研究資料などによると、赤ちゃんは新生児のあいだは興奮しか感情がなく、その後3か月ぐらいで快と不快の区別がつくようになり、怒りを覚えるようになるまでは誕生から6か月ほどかかるそうです。まだ誕生すらしていない胎児のままのブリッジ・ベイビーが怒りを感じるのは、ちょっと早い気がしますが、ブリッジ・ベイビーとして製造されてから、本来なら生まれて半年ぐらいの時間は経過しているはずなので、ポッドのなかで感情の発達も起こっていると考えていいのかな?

打ち上げられたカニ

サムが湖岸のほうへ歩いて行くと、以前に見た座礁地帯と同じように、打ち上げられてひっくり返ったカニの姿が目に入ります。ちなみに、小説の記述によると、打ち上げられているものには魚やカニのほかに、サンゴもあるようです。座礁地帯のなかでも、ここまで激しく時雨が降る場所は、すぐに地面がぬかるんで全体にタール溜まりに近い状態になると書かれています。たぶん、映像だけだとわからないけど、むせかえるような、ものすごい潮の臭いが漂ってそうです。

サムはスロープを上っているときから、涙が勝手にあふれてくるなどのいつものアレルギーのような体の拒絶反応を覚えていますが、今回の嵐にはとくに自分に向けられた悪意のようなものを感じたようです。まあ、この嵐の主はサムをライバル視しているヒッグスだとこのあとわかるので、無理もありません。

雷が波打って津波になる。波は雷の雷光を発し、サムの頭蓋を直撃して爆発する。目の奥で小さな爆発が起きて、視界が真っ赤に染まる。見上げる空は血よりも暗い色の底なしの海だった。その空に吸い込まれる。海に吸い上げられて、サムは空で溺れそうになる。

小説『デス・ストランディング』

そとに出て嵐の様子を目の当たりにしたときに、サムは空に吸い込まれるような感覚に襲われています。身体的な拒否反応が強く出すぎて、空間認識の感覚がおかしくなっていることがわかります。また、このシーンは空を海、それも海面に例える描写が印象的です。前にもチラッと書いたんですけど、やっぱりこの北米大陸、見かたによってはすでに死の海に沈んでるんじゃないですかね?

前回書いた話ですが、サムは結び目から自分の肉体に帰ってくるとき、「海の底に繋留された身体のイメージを求めて還ってくる」と述べていて、上から下へ降りてくるイメージであると判明しています。死の海を基準にすると、ビーチや結び目が海上や浅瀬で、北米大陸が海底みたいな解釈をしたほうがいいのかもしれません。

サムの脚を引っ張るハンター

そろそろとポート・ノットシティの入り口から歩き出して、そとの様子を確認し始めたサムのオドラデクが急に起動して、足下を照らします。間髪いれずにタール溜まりから BT のハンター連中が姿を現して、サムの脚を引っ張り始めます。BB-28は大声で泣いています。小説のサムはその声を「獣」のような「絶叫」と表現していました。

サムはハンターにつかまれてキャッチャーのもとまで連れていかれると、あとは対消滅するだけだと認識していて、ハンターに引っ張られるあいだ、走馬灯のようにイゴール先輩や出会ったばかりのその兄のヴィクトールさん、今回の任務を託していった養母のブリジット・ストランド大統領、そのあとを引き継いでずっとサムに指示を出してくるダイハードマンなどの顔を思い浮かべています。「さようならアメリカ」と自分の運命を悟ったときに、BB-28の獣のような絶叫が響いて、サムはふと我に返ります。気がつくと、なんだかんだハンターたちに運ばれた先でもタール溜まりのなかで立っていられる自分がいました。

タールの上を歩くヒッグス

サムの視線の先には、一人の男が立っていました。それも、サムのようにタールに足を突っ込んでおらず、イエス・キリストの水上歩行のように、タールの上を歩いています。サムは本能的に、この男がこの嵐の悪意の主だと気づきます。

男はある程度サムに近づくと、ふいに足下の岩を浮かべて、サムを見下ろすように語り始めました。水上歩行できていたのは、タールの水面下に岩場があったからなんですね。

ヒッグス

「俺はヒッグス。宇宙を満たす神の粒子(God particle)」という中二病の塊みたいな自己紹介もそうなんですが、サムより目線を上にして、わざわざわかりやすくマウントをとろうとするところに、普段から劣等感に苛まれている小物感が見え隠れしているような気がします。

私、言語の勉強をしている時期によく空を飛ぶ夢を見るんですが、似た状況でこの手の夢を見る人は多いみたいです。空を飛ぶっていう状況が俯瞰で客観的に自分のことを見ようとしている意識を表していて、新しい物事に触れてやる気になっている状態なのと、もうひとつは、頭上を飛び交う不慣れな言語を理解しようという心理が空に行こうとするイメージとつながるらしいです。もともと親が話す母国語を子供のときに聞いて学習しているから、頭上のイメージが強くなるみたいですけどね。なんとなく、サムを上から見下ろす彼のマウントも、「俺、お前の知らないこともわかるもんね!」みたいな心理があるような気がします。

ヒッグスは分離過激派テロリストの顔みたいな存在です。小説のサムも、これから向かう中部エリアで活動しているテロリストの頭領として、その名は聞いたことがあると述べています。物語の後半までサムの好敵手として立ち回りますが、最初から漂う小物感どおり、終盤には絶滅体アメリのただの腰ぎんちゃくだったことが判明します。ただ、現段階ではアメリから強力な能力を授けられているので、かなり厄介な存在なんですよね。

英語版の自己紹介は“The particle of God that permeates all existence”なので、「森羅万象に染み渡る神の粒子」みたいなニュアンスですかね? なんかもっとスケールがデカくなった気がします。宇宙物理学的な話はもちろんですが、ヒッグスが分離過激派のテロリストとして象徴する「ホモ・ディメンス(錯乱する人)」の特質は、普遍的に人間に見られる性質でもあるので、そういうのも匂わせたいのかな?

壊れ物「フラジャイル」

サムへの自己紹介を終えると、ヒッグスはポート・ノットシティの配送センターの屋上にいるフラジャイルに目を付けて、彼女の傘を吹き飛ばしてしまいます。時雨を避けるために彼女はワープしてその場から姿を消します。そもそもその傘で最初から雨を避けられていたのかという疑問は残りますけどね。

彼女はサムがこれから乗り込む予定の船を貸してくれるフラジャイル・エクスプレスの代表です。過去にヒッグスとは業務提携して裏切られた因縁があります。フラジャイル(Fragile)は運送用語で「壊れ物」のことで「まだ『壊れてない』ようだな」という言葉には、彼女自身を「壊れ物」にしたいヒッグスの心理が表れています。英語では“Ah, so it was you that dragged him into all this?”と言っているので、ヒッグスはフラジャイルがサムを巻き込んだという認識で話しているようです。小説の記述によれば、その言葉には怒気が感じられたと言います。単純にヒッグスの性癖と言い切ることもできますが、たぶん、その裏には父親といい関係を築けなかった男が、父親から愛された女に嫉妬する感情とかもあるんじゃないかなと考えています。

このシーンからもうひとつわかることは、フラジャイルの見事なストーカーっぷりです。サムは彼女の気配にまったく気づいておらず、ヒッグスに言われて後ろを二度見しています。今回彼女が駆けつけたのはヒッグスの気配も感じてのことでしょうけど、当のヒッグスは「ああ、こいつは、お前が運んできたのか」と言ってますし、最初にフラジャイルがサムの前に姿を現した状況も加味すると、今までもちょくちょくサムの道程を陰ながら見守っていたと思うんですよ。途中フォトモードで記念撮影しながら来てたら、彼女がちょいちょい写り込むシステムがあっても驚きません。ちょっと怖いですよね。

ブリジット・ストランド大統領の死

フラジャイルに気を取られているあいだに、気がつけば宇宙を満たす神の粒子がサムの目の前まで距離を詰めてきました。サムが思いっきりのけぞっています。オドラデクが震えているので、BB-28も怯えていることがわかります。ここのシーンでヒッグスが自分のまわりを至近距離でウロつくあいだ、サムはヒッグスが近くに来るとカイラリウムのアレルギー反応が強くなり、姿を消すと反応が弱くなる緩急を体感しています。ヒッグス自身がすでにカイラリウムの塊みたいなものになっているのかもしれません。それとも、ビーチから流れてくるカイラル物質の原理には、ヒッグス機構の粒子の概念が関わっているのかな? サムは制御できない身体的な反応と未体験の恐怖もあって、とにかくヒッグスの仮面の奥にある瞳をとらえて必死ににらみ返そうとしています。

一人芝居のように鼻を鳴らして「ブリジット・ストランドは死んだ?」と勝手に話し始めるところを見ると、ブリッジズが頑張って機密情報にしていた大統領の死は、すでにテロリストに筒抜けだったようです。英語版のセリフでは、ご丁寧に火葬したことも把握していることを明かしています。まあ、クリアすると当たり前ですが、アメリから情報がダダ漏れなんでしょうね。

“彼女”

サムのわずかな抵抗は気にも留めず、ヒッグスは「『彼女』を大統領に?」と一人芝居を続けます。サムもすでに紹介されていますが、次の大統領はアメリしかいません。英語版でも「母親のあとを継ぐことにしたのか」という表現がされているので、アメリで間違いありません。サムはアメリに被害が及ぶことを想定してさらに身震いしたはずです。ヒッグスはアメリを「政治向きじゃない」と言い切ります。初回は「なんでだろな?」と思ったんですよね。明らかにウソついてそうなキャラクターだからピッタリだと思ったんですけどね。

俺が彼女を保護してやる

ヒッグスは「俺が彼女を保護してやる」とサムに話します。一度クリアして見返すと、このくだりはサムの認識に合わせた小芝居ですよね。アメリは実際にテロリストに追い込まれてエッジ・ノットシティに捕われているわけではなく、ヒッグスを操ってビーチ姫を演じていただけでした。ヒッグスはすでに彼女を見つけているというか、ヒッグスのほうが彼女に見出されています。

デス・ストランディングの正体

ヒッグスはサムの肩を叩いて、一人で納得した様子を見せると、サムから離れながら「俺は『デス・ストランディング』の正体を掴んだ」と話します。「じゃあ、教えてくれよ~!」と私は思いました。

彼女は違う

ヒッグスはアメリが能力者(DOOMS)とは違うと話し出します。そして「あれこそがこの世界を絶滅させる絶滅体(Extinction Entity)なのだ」と結論づけます。

絶滅体って、あらためて考えるとなんなのか意味不明ですよね。そのまんま読んで字のごとく、世界を絶滅させる個体なんでしょうけど、この物語における役回りとか、細かい意味とか、けっこうフワッとしています。こんな序盤のシーンで「絶滅体なのだ~!」みたいな独自の専門用語を出してババ~ンと決め台詞のように放り込まれると、こっちもポカーンとしてしまいます。続く言葉は「で?」しかありません。

初回プレイ時は正直、あまりにも突拍子もない会話の流れだったので、主語の「彼女」が前のセリフを引き継いだアメリのことだと気づかず、「だれのこと話してんだよ?」と思ってました。どうやらこの物語には「絶滅体」と呼ばれる超越的ななにかがいるらしいという盛大な匂わせだと思ったんですよね。今見返すと、普通に「アメリってすげぇんだぜ!」という主張で、だから「政治向きじゃない」って言ってんですよね。すごい力を持ってるから武力に物を言わせるテロリスト向きってこと? そんなしゃべっちゃって大丈夫か? ビーチに帰って姫から怒られないか?

小説のサムも耳慣れない「絶滅体」という言葉に困惑して、「テロリストたちのなかでも常軌を逸した過激な行為を行うものたちは、錯乱者、あるいは逸脱したもの(ホモ・ディメンス)と呼ばれる。ヒッグスはその代表格だ」とひも付けて、すべて頭がおかしくなったテロリストの妄言みたいな結論に至っています。ある意味、正しいけど、悲しいことにこの妄言、あなたの大好きなアメリお姉ちゃん考案なのよね。

つなげない手

サムに一通り説明を終えたヒッグスは、両手を黒い炎のように変化させてサムに背中を向けます。その際に「この手を人と繋ぐことはできないが、俺はあの世とは繋がっている」と言っているので、この手は縄と棒なら、棒に相当するものなんでしょう。手の形状で言うなら、拳を握りしめた排他的、あるいは攻撃的な状態です。BT が生者に伸ばす手とは少し違います。ヒッグスがこの手の炎を出そうとした直前に胸元の彼のブリッジ・ベイビーが反応してオドラデクが起動しているので、この手からは死者の気配がするんでしょう。あの世は棒でもつながれるんでしょうか?

一度背中を向けたヒッグスが、思い出したかのようにもう一度サムのほうを振り返って、サムは架け橋(ブリッジ)ではないと否定します。クリフ・パパの遺言を否定したいようです。「俺こそがあの世とこの世界、彼女とを繋ぐ架け橋(ブリッジ)だ」と言うので、サムに求められている役割は自分のものだと主張したいんでしょう。架け橋になりたいっていうより、サムを否定したい気持ちのほうが勝ってる印象を受けるんですよね。サムと違ってヒッグスが架け橋になれなかったのは、他者とのつながりを拒否する攻撃性なんかも大きかったと思います。ブリッジ・ベイビー第一号としてブリジットのお気に入りだった時点でサムの勝利は決まっていたような気もしますが、もしヒッグスがこれほど中二病じゃなくて、サム程度に人とのつながりに寛容で、アメリの言うことをホイホイ聞く人間ができた男だったら、アメリはどうしてたのかな? 乗り替えも検討してたんでしょうか?

ヒッグスの指

サムを否定して満足したらしいヒッグスは、指をへその緒のように伸ばしてタール溜まりのなかに沈めます。それがぐんぐん伸びて、海苔の養殖場みたいになっていきます。そして最後に海苔以上の大物が釣れたようです。死体焼却所前にも現れた海獣タイプのキャッチャーが姿を現しました。

上にも書きましたが、キャッチャーを引き上げる前に、ヒッグスは「俺こそがあの世とこの世界、彼女とを繋ぐ架け橋(ブリッジ)だ」と言っています。英語版だと“I’m bound to all of it – this world, that world, and our sweet little angel of death.”というふうに「オレはこの世界とあの世、そしてかわいい死の天使とつながってんだ」みたいなニュアンスになっています。語順の都合から、ヒッグスがへその緒状になった指をタールのなかに沈めてなにかを呼び出そうとする直前に、ちょうどその“our sweet little angel of death(俺たちのかわいい死の天使)”というセリフが来ます。もしかしたらこのキャッチャーがその天使、つまりアメリの分身ってことなのかな?

ここのキャッチャーは基本、いつもゲイザーに見つかってハンターに捕まると連れていかれるキャッチャーと同じだと思うんですが、ドクロの金色の仮面がついていたりして、特別な個体ではあると思うんですよね。あと、もしかしたらちょっと大きいのかな? 大きさは体感的なものなので確証はありませんが、金色の仮面が浮き出ていると言えば、サムがイゴール先輩と運んだ死体のネクローシスでも同じ特徴が出ていました。

黄金の仮面

小説のサムはこのキャッチャーを目にして、「それはディメンスの想像力が造形したこの世にあらざる生命だった」と述べているので、キャッチャーのデザインはヒッグスをはじめとしたホモ・ディメンスの想像する架空の生物を基本としているのかもしれません。

BT キャッチャー

キャッチャーを呼び出すヒッグスの指の形状は、この巨人型キャッチャーと同じですよね。このキャッチャーは、終盤のエッジ・ノットシティで戦うことになるんですが、そのときはアメリと融合しているので、アメリに一番近い個体なんじゃないかと感じています。ヒッグスのこの手は、アメリから借りてる能力じゃないかな。

キャッチャーを呼び出したヒッグスは、コイツに食われて都市ごと対消滅で消えろと脅してきます。英語版はサムをレストランのメニューに例えているんですが、続く“All it’ll take is one itty-bitty voidout to blow us all to kingdom come!”のセリフに、キリスト教の影響が感じられます。こっちのほうが宗教戦争とか信念の対立を背景にしたテロリズム感があってリアルに感じられます。ヒッグスは錯乱して破壊衝動に突き動かされているわけではなく、少なからず来たるべき神の王国を意識して動いているようです。死後も魂は存在し続け、死はあくまで通過点に過ぎないというのはエジプトの死生観にも見られましたが、魂は輪廻するという考えかたの日本の仏教と違って、キリスト教にもちょっと似ているところがあります。彼にとって、アメリこそ死後に神の王国へ導いてくれる救世主なんでしょう。

GAME OVER

ヒッグスはまたサムににじり寄って、じつはこれがお前が退屈して望んでいた“GAME OVER”じゃないかという言葉を残していきます。サムは余生を持て余してさっさと死にたいとでも思ってたのかな?

“GAME OVER”の言い回しが印象的に使われているのは、前にデッドマンのセリフにもあったので今回が初めてじゃないんですけど、なにか小島監督のこだわりがあったのかな? 古巣から巣立ってコジマプロダクションができたときに、なんか言われたり、考えたりしたことでもあるのかな?

サム v. s. BT

ヒッグスが姿を消すと、サムの脚を固定していたハンター連中がタール溜まりに消えて自由になりました。ハンターもヒッグスの言うことは素直に聞くらしいです。とは言え、サムの目の前にはヒッグスの置き土産の巨大なキャッチャーがいます。

サムはイゴール先輩の最期の言葉「逃げろ」を思いだし、先輩から受け継いだ BB-28と、ポッドにくくりつけられた宇宙飛行士ルーデンスの人形を見て、最後まで足掻く決意をします。

ナゾの上昇気流

とりあえずタール溜まりのなかから出ようと思って来た道を戻ると、ナゾの上昇気流が行く手を阻んで、前に進めなくなります。ダイハードマンが必死で「そこで対消滅(ヴォイド・アウト)を起こせば、ポート・ノットシティをすべて失うだろう」とか、「そいつは必ず、排除しなければならない」とか、無線で訴えかけてきます。つまりは「お前はこっちに来んな」だし、「そこで BT を処理しろ」ってことですよね。ひどくない?

細かいことなんですけど、ここの字幕を文字起こしして初めて気づいたんですけど、日本語版は「ヴォイド・アウト」で中黒が入るんですね。英語版では“voidout”で一語なので、中黒が入る余地がないんですよね。前回の過去メールで「リーダー・シップ(leadership)」の表記もあって違和感を覚えたんですけど、「宇宙を満たす†神の粒子」みたいなもんなのかな。

ここからかならず倒さないといけない BT とのボス戦が始まるんですが、アクションが苦手な私としては、ちょっといきなりすぎる気がするんですよね、この展開。初回プレイ時は唐突すぎて、戸惑っているうちに死にました。そもそも BT と対等に渡り合える武器はここに来るミッションでやっと手に入るものなので、せめてもうちょっとチュートリアルになるミッションをあいだに挟んでほしかったんですよね。こう、BT は避けるものという認識でいる状態で唐突に戦場に放り出されると、どうすればいいのか頭が混乱しますしね。ツラい……。

Mr. サムワン

戦闘中はヴィクトール兄さんが分けてくれた血液グレネードをひたすら放り投げて応戦するんですけど、たぶん、それだけじゃ数が足りないんですよね。このボス戦のフィールドには、別のプレイヤーの白塗り Mr. サムワンが出張してきて、異世界から血液グレネードなどの物資を投げて応援してくれます。これがないとたぶん詰みます。

ひたすら浮き出た建物や岩などの高所に逃げて、血液グレネードをポイポイ投げ続けると、なんとかボスを撃退できました。2周目はさすがにハードモードでも一度も死にませんでしたが、評価は B と辛口でした。

総合評価 B

まあ、盛大に転けて BB-28が途中でギャン泣きしてましたからね。異論は唱えられません。ワイのサムにしては死ななかっただけ上出来です。

カイラル結晶

BT のキャッチャーを始末すると、金色の粉をまき散らしながら粉々に崩れ去って、その場にたくさんのカイラル結晶を残します。うまー!

この演出からすると、キャッチャーを構成するのはカイラリウム、つまり無機物なんでしょうね。それがなにかの意思が介在して生物みたいに活動していたと考えていいような気がします。ま、なにかっていうか、絶滅体なんですけどね。

港に急いでくれ

BT を撃退すると、大興奮のハートマンが無線でまくし立ててきます。小説ではこの前にヴィクトール兄さんも興奮して「イゴールの死も無駄じゃなかった」とサムに無線で話しかけていました。ハートマンの見識は「君の体液や血液は BT に接触しても対消滅(ヴォイド・アウト)を起こさない。君の魂(カー)がビーチとの結び目から押し戻されるように、おそらく君の血は BT をあちら側に押し戻すように作用する。そうとしか考えられない」というものです。小説のサムは、笑顔ながら目の奥が笑っていないハートマンの姿を写したアイコンを見て、恐ろしいと感じています。そう言えば、サムはもハートマンの印象を「眼鏡の奥の両目には、恐ろしいほどの知性の光が宿っていた」みたいに話していたので、なんかサムが本能的に怖がる特質をハートマンは備えているのかもしれません。

帰還者のサムが対消滅を起こすと、エネルギーがきちんと対にならずに分散し、通常より小規模な爆発にとどまるという説明がのちのち出てきます。今回ハートマンは「君の体液や血液は BT に接触しても対消滅を起こさない」と言っているので、エネルギーの分散を引き起こしているのはサムの体液や血液といった液体の構成物で、その他のお肉や骨はきちんと爆発のエネルギーに変換されているのかもしれません。でも、よく考えたらその爆発エネルギーになって消えてしまった体の構成物をどうやってかき集めてまたこの世に帰還しているのかな?

サムの血や体液が生者として北米大陸に戻る性質だけでなく、死者の魂をビーチに送り返し、本来あるべき形に戻す力があることは以前にもなんどか指摘していました。この力を実現するのはサムの帰還者特質だけだと無理な気がするので、アメリの絶滅体としての能力が合わさって実現されているものと推測したほうがいいと思います。やっぱりサム、ブリッジ・ベイビーとして一度死んだときに、アメリの血をもらってるんじゃないですかね?

ハートマンがひとしきり話したいことを話して一方的に無線を切ると、間髪入れずにダイハードマンが「船の用意もできた」とか「港に急いでくれ」とか言い出して急かしてきます。

えっ? このまま……?

せめて、もう一度プライベート・ルームに戻ってシャワーでも浴びさせてくれませんか? 船にプライベート・ルームが完備されてるならともかく、人様の船を借りるんだから、そんな気の利いたことお願いできないでしょ……? 今のサム、めっちゃ潮臭いと思うよ……?

汚れたサム

ダイハードマンの急かす言葉を無視して、ポート・ノットシティのプライベート・ルームに戻ってきました。見てくれ、この汚れたサムを! こんなんで人様の船に乗ったらあかん!

BT のフィギュア

プライベート・ルームのテーブルに、BT のフィギュアが追加されていました。のちほどまたベッド横のディスプレイ・スペースに追加されると思います。こう見るとまたデカい気がします。このフィギュアはだれがなんの目的で用意しているのかナゾが多いんですが、私は勝手に絶滅体が母親目線でサムのやる気を維持するために与えている説を唱えています。なんていうか、功績を視覚化したトロフィーみたいなもんですね。連絡ノートに学校の先生が書いてくれる「初めて BT 倒せた、えらいね!」のオタク心をくすぐるバージョンみたいな感じです。

イーストンさんのメール

新しいメールも届いていました。ニック・イーストンさんが、キャピタル・ノットシティで怪しい光を見たと言ってきます。怪しい光はだいたい収集要素のメモリーチップなんですよね。また探しに戻らないといけません。

Big Fish

メモリーチップはちょくちょく拾えるものを入手しているんですが、今作に影響を与えたらしい作品のなかに BIG FISH がありました。「膨張宇宙論のビッグバンという言葉も『大ボラ』という意味だった」として「この世界はホラ話から生まれているのだ!?」という言葉で締められています。膨張宇宙論が発表当時、無視や軽視の対象となったのは有名な話らしいので、なかなか感慨深いと思います。

前に書いたシュレディンガーのネコも、本来は量子力学を批判するために生まれた比喩だったのに、今では量子力学の性質を語る典型的な例え話になっています。現実なんて、どれもどう転ぶかわかんないですね。

指さし グラウンド・ゼロ湖を横断に続く
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