前回 Twitch で本編を配信した『LITTLE NIGHTMARES -リトルナイトメア-』のプレイ日記の続きで、DLC の Secrets of the Maw もプレイ配信しました。前回と同じように、一通りプレイし直して、気になったところのスクリーンショットをズラズラと貼り付けて、あーでもない、こーでもないとここに書き殴っておきます。

この配信は、「『リトルナイトメア』、『リトルナイトメア2』ゲーム実況に関するポリシー」(https://n6ls.bn-ent.net/guidelines/)に基づいて実施しました。また、同ポリシーに基づいて、配信内容を記録したバックアップ動画をこの記事に掲載しています。

DLC は初回めちゃくちゃ苦戦した思い出があるんですけど、やっぱり一度やったあとにコントローラーでプレイしたらずいぶんとストレスが減りました。本編より DLC のほうが厳しい操作が求められる気がします。キーボード操作では、さすがに無理がありました。レディのアトリエに入ってからは途中でキレてましたもん。

配信では、2周目プレイなのに、なぞ解きの仕掛けを忘れてムダにウロチョロさまよったところもあるんですが、まあ本編とそう変わらないクリア時間に収めることができたので、よしとしておきます。じつは始める前に、もっと迷走するかもしれないとちょっと心配していたんですよね。

水中に沈められるキッド

ということで、さっそく逃走劇を始めたランナウェイ・キッドです。名前もそのまま「逃げ出す子供」で、彼には固有名詞らしい名前がありません。「ランナウェイ」は「家出した」とも解釈できますが、詳しい背景がわからないので、無理やり連れてこられてモウに閉じ込められていたなら、この訳は適切ではないかも。右足首にわずかに残った足かせは、やっぱり本人の意志とは裏腹にどこかに拘束されていたことを表しているのかな?

本編でシックスを操作して通り抜けた監獄から脱走しますが、物語はその前にキッドの悪夢から始まります。本編もレディが振り返る悪夢をシックスが見てハッと目を覚ますところから始まりましたが、キッドの場合は水中から手が伸びてきて沈められる夢です。この手の持ち主はのちほど出てくる水棲おばあちゃんのもので間違いないと思います。シックスが見たレディの悪夢と照らし合わせると、キッドの悪夢も光が当たる範囲が、なんとなく作中なんども目にする眼の形をしているような気もしなくありません。その場合はやはりシックスと同じように、キッドが瞳に相当すると考えられます。しかし彼の場合は、おばあちゃんに引っ張られて画面からフェードアウトしてしまいます。なんか、彼の末路を暗示しているようにも感じられます。てか、冒頭だけ見ると、キッドはやたらとおばあちゃんと因縁があるように感じられるんですけど、どういう関係なんでしょうね?

ベッドから起きたランナウェイ・キッド。

大部屋に並べられたベッドでほかの子供たちと一緒に寝ていたキッドは、ここでハッと目を覚まします。上体を起こすとき、彼の身体から少しだけ黒い粒子が立ち上っています。そしてそのままベッドから飛び出すと、床板の上に彼の足跡がわずかに残ります。これって、濡れている表現なんじゃないのかなと思うんですよね。夢だけど、夢じゃなかったー! ……みたいな。

モウのなかに転がっているマットレスって、みんなよくわからないシミがついているんですよね。まあ、ある意味リアルな汚れではあります。子供部屋に限っては、オネショの表現もあるのかな~なんて思ってたんですが、水棲おばあちゃんの悪夢が絡んでいるなら、おばあちゃん由来の水分が、悪夢の主である子供のマットレスに滴り落ちた結果とも解釈できるかもしれません。キッドの足が濡れていたみたいに。

二人の子供

ちなみにこの部屋、本編でシックスが隠し部屋の監視装置でのぞき見た部屋かもしれないと配信で言っていたんですが、見比べてみると、やっぱりベッドの配置とかからして、ちょっと違う感じがします。つまり、シックスが通った部屋、キッドが寝ていた部屋、監視装置でのぞけた部屋の少なくとも3部屋が存在するということです。たぶん、また別にもう一階層、似たような子供の雑魚寝部屋があるんじゃないでしょうかね。わからんけど。

脱走した子供を捕まえる管理人

ベッドが並べられた大部屋からキッドが出ると、彼と同じように脱走した子供が、階下で管理人に捕まっている様子を早々に目の当たりにすることになります。脱走した子供は、なにもキッドだけではないということがここで示されます。名前と同じように、キッドはあくまで大勢のなかのよくいる子供の一人でしかありません。そして、キッドも見つかって捕まると同じ運命をたどることになるということがここでハッキリします。

船の落書き

管理人を見送ったあとに、廊下の反対側まで走って、ベッドの下の床板に穴が開けられた部屋に入ります。ここには船の落書きがあります。この船は、モウに乗り込んでくるゲストを運んでくるものかな?

船からモウに乗り込むゲスト

落書きをしたのは、キッドと同じようにこの監獄で暮らしている子供の一人じゃないかなと考えています。この部屋はほかのドアとドアノブが違っていて、もしかしたら外側からカギがかけられる監禁部屋だったりしないかなという話を以前にも書いていました。なかで暇を持て余した子供が描いたとしたら自然だと思います。あと、のちほどキッドにギュッとハグされて仲よくなるノームが落書きをしている姿も道中で確認できます。

落書きをするノーム

ここにいるノームたちは、火に照らされて伸びる影が人間の子供のシルエットになっていて、もともと人間であったことが示唆されています。実際にキッドも最後にはレディに捕まってノームにされてしまうので、ノームは人間の子供の成れの果てという等式で物語を掘り下げて差し支えないと思います。

ノームの影が人間の子供のシルエット

ということで、道中あちこちで目にする落書きを残していたのは、おもに監獄で暮らしていた人間の子供たち、あるいはその子供の成れの果てのノームだったと私は解釈しています。とは言え、相当アグレッシブなシックスはともかく、あそこにとらえられている人間の子供が、ゲストを運んでくる船が見られる場所まで脱走するのはなかなかめずらしいんじゃないでしょうか。シックスはめちゃくちゃ外壁を登っている最中に見てましたからね。それか、安全に見られる場所がほかにもまだあるのかな?

階下のベッド

もともと脱走用の経路としてベッドの下に隠されていたと思しき床板の穴から落ちると、見覚えのある部屋に出ました。本編でシックスを操作して来た部屋ですね。ということで、キッドがもともといた部屋は、シックスが通った部屋の1階上だったことがわかります。どうりで部屋の様子がちょっと違ったわけです。

シックスを操作して来たときと違うのは、このベッド下の黒い水たまりのなかに、ヒルのような敵が1匹潜んでいるところです。このヒルはけっきょくキッドを追いかけて出ていったから、本編ではいなかったのかな? あと、レディに似た日本人形の陶器もまだありませんね。もしかしてこのヒルがあの人形になっていたりして……?

脱走する女の子

以降は、シックスが来た道とは逆に進んでいきます。途中でキッドに先行する形で逃げている女の子の姿を目にします。最初はこれが黄色いレインコートを手に入れる前のシックスなのかと思っていたんですが、よく見ると背がシックスより高いように見えますね。

シックスは同名のそっくりなキャラクターが続編の『リトルナイトメア2』にも出てきます。中身が同一人物なのかはハッキリしていないんですが、『リトルナイトメア2』のほうのシックスは、途中でレインコートを羽織るようになるので、レインコートの下の容姿がある程度わかります。その姿は短髪の細身で、男の子と言われても最初はわからないぐらい中性的でした。なんならキッドにも似ているぐらいです。だから、ここでキッドに先行して逃げている女の子は見た目に女の子とわかるぐらいフェミニンな容姿をしている時点で、シックスっぽさがないんですよね。

逆に長い髪の毛、女の子らしい女の子という特徴は、レディとの接点を疑いたくなるものです。もちろんこの子がレディ本人というわけではなくて、レディの過去を示唆するために配置されている存在というような可能性はあると思います。レディもモウの主になる前はもともと監獄に捕われていた子供の一人に過ぎなかったという妄想ができそうですね。本編のエンディングからすると、シックスがレディを食べたことで明らかに特殊な能力に目覚めていました。モウの主の座は、弱肉強食で受け継がれてきたと考えられなくもないかなという気がします。ここで逃げている彼女も次期モウの主候補、つまりシックスの対抗馬の一人だったのかもしれません。

彼女をキッドが追いかけている構図も、どんな含みがあるのかと考えると興味深いところがあります。今作の主要キャラクターはみんな性別がはっきりしているので、男の子が女の子を追う構図、男の子が女に捕まる構図という意味も考えるべきかもしれません。とくにシックスのときとは違って、キッドのときはレディが鏡に映った自分の顔を見て容姿に悩んでいるような素振りを見せるシーンがあります。

鏡をのぞき込むレディ

そしてその姿をキッドに見られたと知ったことでレディは大きな悲鳴を上げて姿をくらまします。本編のレディはシックスに追い詰められるまで仮面で素顔を隠していました。床に突っ伏して仮面が取れてからは、立ち上がる前にシックスに無残にも捕食されてしまったので、彼女の素顔や、素顔を見られたときのリアクションにスポットライトが当たることはありませんでした。

このキッドを操作して初めて見えてくる彼女のこのシーンの演出は、シックスと対峙したときのレディの姿とはちょっと趣旨が異なるように感じられます。ここでこんなレディの姿をあえて見せるということは、彼女がじつは素顔にコンプレックスを持っていて、さらにそれを他人に見られたことが本当にショックだったこと、つまり彼女の女らしい一面が前面に押し出されていると考えられます。ここの構図は、シックスのときと明らかに違う演出になっている点から、女性が異性である男の子に醜いコンプレックスを見られたという視点で解釈してもおもしろいんじゃないかなと思います。なんというか、レディの部屋に侵入するシックスは暴力で、レディの部屋に侵入するキッドは無自覚なセクハラみたいな差を感じるんですよね。もしこの解釈が成り立つなら、キッドはこの物語における男性の役回りを代表して表しているキャラクターになります。

メッセージボトル

逃げる女の子を追う前に、まずはDLC の収集要素であるメッセージボトルを拾います。今回も血眼になって探しはしなかったので、普通にちょこちょこ取り忘れていました。必死こいて取ったあとにすぐに死んで、けっきょく取らなかったことになっている場面もありましたね。このボトルも、全部集めたからといって、とくにエンディングが変わるとかいった大層な仕掛けはなかったと思います。たぶんトロフィーが手に入るだけだったんじゃないかな。あらためて調べてみると、トロフィーの名前は「一人じゃないよ」と「そこにだれかいるの?」と「きみをもっと知りたかった」だったらしいです。

このメッセージボトルもなんでキッドが集めているのかナゾなんですよね。ここから少しのあいだ、キッドが背中を追い続ける女の子の影といい、どこかにキッドの相手、それも異性の相手がいることを匂わせる演出になっているような印象を受けます。ボトルに詰められたメッセージって、本来は海を漂うものでしょうから、意味を掘り下げていくと、モウの外に広がる海の向こうの世界も視野に入れて考えられるかもしれません。

キッドは本編のシックスと同じように、ノームともハグして友達になりますが、シックスよりも明らかに共同作業をしていますし、どうも他者ありきの性質が強いように感じられます。それに対して、シックスの収集要素はレディと似た姿をした陶器の人形を放り投げて割るという破壊行為になっています。捕食相手以外にも、殺めていたり、傷つけていたり、道中出会う相手を、全員とは言わないまでも、だいたい不幸にしているのもシックスの大きな特徴です。その点、キッドがはっきりと危害を加えるシーンが描かれているのは水棲おばあちゃんぐらいのもので、ここでもまた逆にキッドと水棲おばあちゃんの因縁が浮き彫りになっています。じつはお母さんだったり、キッドが追い求めていた運命の相手こそ本当は水棲おばあちゃんだったり……なんてことがあったりして……?

窓から垂れ下がった布

キッドが初めてメッセージボトルを拾った部屋は、本編でシックスを操作して反対側から来るとき、一定間隔で結び目がついた白い布、おそらくシーツかなにかあり合わせの布をつなぎ合わせたものがすでに窓枠にくくりつけられて垂れ下がっているので、それをはい上ってこれるんですが、この布はキッドの先を行く女の子が脱走用に用意したものであることが、ここの DLC のシーンからわかります。したがって、DLC は本編よりも時系列が少し前であると考えられます。

ちょっと上のほうで、性別に注目して掘り下げてみたので、ここでも性別を意識すると、ここで脱出経路を作るのは女の子です。同じようにモウから脱出しようと動き出すシックスも公式に女の子とされていますが、彼女はこの女の子とは真逆に進み、果てはモウのすべてを司ると公式に説明されているレディの部屋まで突き進んでいます。それに対して、男であるランナウェイ・キッドは、ここで女の子が作った道を使って脱出し始めます。もっとさかのぼれば、水棲おばあちゃんに足を引っ張られて溺れる悪夢で目覚めてから、ここで女の子を追いかけて「深淵」と呼ばれる下層に転落し、レディのアトリエに迷い込み、シックスの栄養にされます。どうも自発的に道を切り開くよりも、終始女に振り回される女難の相が出すぎている気がするんですよね。

ちなみに、先行する女の子は懐中電灯を持っていますが、キッドにはそんなものありません。シックスも本編開始時にライターを持っているので、最初に女の子が光を持っていて、なにもない男の子のキッドがそれを追いかける図になっています。そしてキッドが追いかけた先には女の子の姿がなく、懐中電灯だけポツンと落ちているので、女の子のその後が非常に心配される状況になっています。そう言えば、シリーズ次作のモノも病院で懐中電灯を拾うので、キッドと同じく、後付けで光を得るパターンになっています。まあ、それを言うと、次作のハンターは最初から懐中電灯を持っている特徴があるので、セットで考察する必要がありますけどね。それに、病院の患者たちが光を当てると動けなくなる点も関係してくるでしょうね。

あと、この布を上って窓から侵入するシーンは、シリーズ次作の学校に窓から侵入するシーンを連想します。このモウの監獄にある子供たちの住み処と学校は似ても似つかない雰囲気なんですが、子供がたくさんいること、子供たちにとっておそらく居心地がとても悪い場所であることは共通しています。もしかしたら、このモウの子供たちが集められている場所は、シリーズ次作の学校とよく似た場所を表しているのかもしれません。

トランク

女の子を追いかけて穴に落ちたキッドは、しばらくモウの浸水した下層エリアをさまよいます。足場にするために動かせるもののなかにトランクがあるんですが、トランクって本編の開始時にシックスが寝床にしていた場所でしたよね。オブジェクトの作成時間を抑えるために深く考えずにモデルを使い回したりなんて現実的な可能性も考えられますが、男の子が先に進むために女の子の寝床を足蹴にすることが、なにかの暗示になっていたりする可能性もあるかな? これは考えすぎかもしれませんが、シリーズ次作のシックスは、学校でいじめられっ子にいじめられてから、いじめっ子に先制攻撃を仕掛けるという変化を見せるようになります。今作本編のシックスも、先に進むために袋に詰められた死体と思しき物体を踏み台にしていると前回書いたんですが、こうなってくると男も女もどっちもどっちで、強いて言うなら先に、それも無自覚に女に仕掛けたのが男のほうで、女が報復のために強烈に行動している図式が成り立ちます。キッドの顛末にしたって、レディ目線から見れば、勝手に部屋に入ってきて、見られたくないものを勝手に見られたわけですからね。

ヒル

女の子のあとを追って監獄を脱出したキッドは、ここの道中で頻繁にヒルと遭遇します。ヒルは本編のシックスも、DLC のキッドも、共通して敵対している存在です。シックスとキッドの違いに注目したあとだと、逆にどっちにも襲いかかってくる姿が作中共通して描かれているヒルはめずらしいほうになるかもしれません。ほかの存在っていうと、管理人になるんですけど、なんかつながりでもあるのかな? あと、レディも、対シックスと対キッドだと攻撃の性質がちょっと違う可能性も残されていますが、いちおう最初に見つかったときにキッドもシックスと同じような演出で一発 K. O. されるので、同じ枠に入れていいかもしれません。

瘴気

ヒルは本編のほうを掘り下げたときに、日本神話のヒルコを取りあげて、もしかしたらだれかが産み損なった赤ちゃんを表しているのではないかなどと書いていました。だれかと言うか、一番可能性が高いのはレディでしょうけどね。

人形をかわいがるレディ

物語の後半にレディのアトリエへ入ると、人形を我が子のように慈しむレディのプライベートな姿を垣間見ることができます。これもシックス視点の本編では見られなかった姿です。女性のレディが母親になるには、普通に考えて生殖相手の男性が必要ですから、これも上からずっと述べてきているような生物学的な性別による掘り下げをする理由の一つになっているんですよね。じつは生物学的に女性じゃないから子供を産みたくても産めなくて、代わりに人形を赤ちゃんの代わりにしている説も考えられなくありませんが、このゲームの人形は、管理人が大事にしている大量の人形といい、シリーズ次作のハンターの家といい、そこにはもはや存在しない人物のことを示唆する要素として設けられているような印象を受けます。レディのこの人形も、大量の赤ちゃんが過去に産まれたのに、この場に存在することを許されない事情があったと解釈するほうが辻褄があう気がします。

灰は灰に

その根拠として思い浮かぶのが、このトロフィーが獲得できる隠し部屋です。レディのアトリエには、クリアには不要な寄り道が存在します。進路を開くスイッチになっている本のなかから、レディの仮面が背表紙になっている本を進行方向とは逆の隅にある本棚にしまうと入れるようになります。なかには上の画像のように、怨霊の顔のようなものがひしめく不気味な絵画に、おなじみの一つ目の模様が施されたツボ、そして床には子供の形をした灰が何体分も転がっています。

シックスもキッドも通った監獄のホールには、壁から光を放つ一つ目があって、その前には同じように眼の光に焼き尽くされて灰にされてしまった子供たちの亡骸が転がっていました。

光を放つ眼

レディの隠し部屋には光を放つ一つ目は存在しませんが、よく見ると壁紙が焼け落ちていて、煤が空中を漂っています。絵画の下はとくに損傷が激しくて、壁が炭状になっています。一つ目の光とはまた違った形ですが、人間を灰にできるほどの熱が絵画の下部に向かって発せられていたことがうかがえます。ここの眼の持ち主は絵画に描かれている怨霊たちということになります。

台の上のツボを落として割ることもできますが、なかは空っぽで、割った直後に白い粒子がわずかに立ち上るだけでした。これはシックスが本編でレディに似た陶器の人形を割ったときに、黒い瘴気と一緒に立ち上る光と同じかもしれません。

ここで手に入るトロフィーの名前は「灰は灰に」です。とくにキリスト教圏で故人の遺体を埋葬するときに使われることが多い言葉で、キリスト教の『創世記』第三章十九節にある“By the sweat of your brow you will eat your bread until you return to the ground, since from it you were taken; for dust you are and to dust you will return.(あなたは額に汗してパンを食べ、ついに土に帰る。あなたは土から取られたのだから。あなたは塵だから、塵に帰る)”が思想の根底にあると考えられます。これは原初の人間であるアダムを土から創造した神が、エデンの園で禁断の果実を食べたアダムとイブを楽園から追放するときに語る言葉で、彼らの命が楽園の外では有限になり、一生懸命土から作られた物を食べて、土から生まれた者として、やがて土へと還る必然を説いています。この考えにのっとると、レディの消えてしまった子供たちも、形を変えてどこかに存在していると考えられます。ツボが骨壺のようなものであるなら、中が空っぽなのはそういうことを意味しているんでしょう。灰は灰に、塵は塵に、土は土にすでに還っていて、立ち上る光がその循環するエネルギーを表しているのかもしれません。モウの中心になっているのは、意外と女主人のレディではなく、子供たちのほうなのかな?

重要なのは、レディの赤ちゃんとは作中のだれのことなのか、灰は灰になる輪廻転生の過程に含まれているのはだれかというところです。ツボの足下に監獄の子供に似た灰が転がっているのなら、キッドをはじめ、監獄の子供たちもレディの赤ちゃんにつながる存在なのかもしれません。そう言えば、お腹をすかせたシックスは最初、監獄の男の子からパンを分けてもらっていましたね。

パンに食らいつくシックス

偶然かもしれませんが、少なくとも監獄の子供たちが、『創世記』で神にアダムが言われたのと同じようにパンを口にしていることがわかります。まあ、この聖書のパンは食物全般の代表的な例えでもあるんで、そこまで決定的ではないんですが、モウの台所や食べ物があふれかえるゲストエリアというステージを含む本編には、ほかの食物のモデルが豊富に存在しているので、ここでハムでもソーセージでも魚でもなく、あえて土から生える穀物製のパンを最初に選んでいるあたりに『創世記』が意識されているんじゃないかと考えられなくもない気がします。

それじゃあまた後で

シックスが飢えるたびに口にするものは、このパンからネズミの罠のエサ、そしてネズミ自身、最後には元人間のノームになっていきます。土から生える植物性の食べ物から動物の肉に変わり、最後は同じ躍り食いでも共食いになっていきます。とくに最後は目の前のソーセージを差し置いてのノーム捕食となっているので、対象の遷移は意図されていると思います。この点から、シックスは土から創られしアダムと同じ人間からスタートして、人食いに成長を遂げているわけです。上からずっと述べてきている性別にも注目すると、そこに異性が絡んでいるのもなにか意図があるのかもしれません。

影の子供たち

レディが欲していながら、持つことが許されなかった子供たちとパッと見すぐに結びつけやすいのは、明かりが落ちたあとに彼女のアトリエに出没するようになる「影のこどもたち」でしょう。この名称は、Steam 版の公式な作品の説明文に記載されています。さらにこの影のこどもたちは、「レディによって操られている」ことも、同文からわかります。英語では“the shadow enemies summoned by The Lady”と書かれているので、彼女に使役されている召喚獣みたいな影らしいです。

決して逃れることのできない、静寂に包まれたレディのアトリエ。
レディによって操られている影のこどもたちや、いくつもの死の罠をのりこえなければ、この先に進む道はない。

ランナウェイ・キッドは懐中電灯の明かりだけを頼りに、歩みを止めることなく進み続けた。
悪夢にうかぶ幻影をかわし、奇妙な書斎を越え、彼が彼自身の運命に立ち向かう時、その光がモウの最も暗い秘密を照らし出してしまうとも知らずに。

Steam: Little Nightmares The Residence DLC

キッドが最初に出会う影のこどもは、レディが赤ちゃんの人形を愛おしそうに抱えていた部屋に登場し、懐中電灯で光を当て続けると、本編でシックスが破壊したレディの人形と同じように黒い瘴気と白い光を放って消えてしまいます。しかし顔に着けている仮面だけは質量があるようで、本体が消えると床に落ちてパリンと陶器が割れるような音がします。顔の仮面は召喚主譲りなのかな……?

ちなみに、配信でも言ってましたが、この DLC がキーボード操作では難しいと書いたのは、この影のこどもたちに懐中電灯の光を当てるために、キッドの微妙な体の向きの調整が求められるからでした。ところであちこちから迫り来る敵に懐中電灯の光を当てつづける絶妙な操作が求められるのは、シリーズ次作の病院の患者たちも同じだと思います。患者たちはモノに光を当て続けられても、消滅したりはしませんでしたけどね。彼らも体の一部を義手や義足などの似た人工物に置き換えられている人形に近い存在です。なにか関連性があるのかもしれません。

消えた女の子とヒル

さて、ここまでまとめると、レディの子供と考えられる余地があるのは、まず子供という共通点がある監獄の子供たちと影のこどもたちです。子供の成れの果てであるノームたちも含まれることになります。さらに私の推測で、おもにモウの下層に出没するヒルもその可能性がありそうという話をしました。演出からして、道中の人形ももしかしたら一部が該当するかもしれません。いやいや、多すぎやん。レディ、なんぼほど子供おんねん。

深淵をスイスイ泳ぐ黒いヒルもレディの子供と考えると、ちょっと気になるのが、キッドに先行する形で脱走していた女の子のその後です。キッドが懐中電灯を拾った場所のすぐそばには、なにかを引きずった黒い水のあとがあり、周囲には同じ黒い水で人間の手のひらや足跡が残されています。隣の部屋に入ると、目の前にヒルがいて、そこで足跡が途切れていることがわかります。普通であれば、女の子はここでヒルに襲われて……と考えられる場面です。でもキッドの前を走っていた女の子が姿を消したのは、キッドが到着するほんの少し前のはずです。目の前のヒルの体は、明らかに女の子の体積以上に膨らんでいません。かといって、ヒルの隣に人間の遺体らしきものも転がっていません。女の子はどこへ行ったのか? ちょっと私、思ったんですけど、目の前のヒルそのものが元・脱走女子だったりしませんかね? あ、いえ、根拠がない完ぺきな思いつきで書いているので、適当に受け流してください。

In the dark, moist corners of The Maw, the leeches writhe as one, awaiting the swollen wanderers. Slimy, venomous parasites that feed on the living ? the leeches truly belong here.

https://en.bandainamcoent.eu/little-nightmares/little-nightmares

ヒルの説明は日本語の公式サイトには記載がないんですが、英語版にはあります。この説明を読む限り、ヒルの習性にはあまり個体差がなく、共通して水分を含んで水ぶくれした放浪者を狙って襲いかかっているようです。ゲーム内の挙動どおりですね。水死体かなと思って読み進めると、“feed on the living(生者をエサにする)”なので、腐肉食ではなく、生きたまま食うのがお好きみたいですね。

グラニー

ヒルでなくても、女の子が姿をくらました深淵には、同じく水をスイスイと泳ぐおばあちゃんがいます。水棲おばあちゃんは私が勝手に付けた名前で、正式名は「グラニー」というらしいです。

こどもたちは脱出を目指す。けれど、「キッド」はひとり、「モウ」のさらなる深淵の彼方へと落ちていく。

彼は、このうすよごれた場所こそが「グラニー」のすみかだということをまだ知らない。
ここに落ちたものは脱出を許されず、怒りながら腐り果ててゆく運命にある。

ここから生き延びるには前へ進むしかない。
恐ろしいものが潜む水の中へ引きずり込まれないため、打ち捨てられた破片の上を渡り歩きながら、この深淵を抜け出すための道を見つけるのだ。

Steam: Little Nightmares The Depths DLC

グラニーは英語で“The Granny”とつづるので、そのまんま「祖母」や「おばあちゃん」を意味する“grandmother”を短縮した口語から来ているニックネームのような名前だと思います。つまり、公式にこの水中の怪物は女性なんですよね。ちょっと見える頭部は完ぺきに落ち武者なんですけども、年老いただけで中身は立派なレディです。そう言えば、レディが鏡とにらめっこして悩んでいた顔とグラニーの顔が似ていなくもないかなと思います。暗闇のなかに浮かび上がるほど白い肌も、レディのアトリエに飾ってある肖像画に似ていますね。

レディの肖像画

姿が見えなくなった女の子やこのグラニーの存在に加え、男であるキッドがうまく深淵から脱出できたところを見ると、モウの深淵はどうも女性が朽ち果てる場所という印象が残ります。それも公式の作品説明を読むと、どうやらここに落ちた者は怒りを覚えているらしいです。誰に対してでしょうね? あまり主体性がなく、シックスほど凶悪性がないキッドが、グラニーだけここで無残に殺めているところを見ると、私はやっぱり男に貶められた女の怨念というイメージが頭にわいてしまいます。キッドの先を行く脱走女子、じつはキッドがあとを追っていたんじゃなく、キッドから逃げている構造にもなっていたりして……? ということは、ヒルも女性なのかな? ヒルもグラニーと同じように泳ぎが得意で、水がある場所では素早く移動します。対するキッドは泳ぎを知らない子が一生懸命溺れないようにもがきながら進むフォームをしています。そう言えば、同じ女の子のシックスもスタート地点が下層で、スタート直後はどんどん上へ上がっていく形で進んでいました。レディの子供のうち、女の子はヒルで、男の子がノームや影のこどもになっていたりして……?

シックスは物語の展開からも、七つの大罪の6番目にあたる「暴食」を表しているんじゃないかと述べていましたが、グラニー、あるいはここに落ちた者が怒りを覚えているのなら、七つの大罪では「憤怒」に相当すると考えられます。憤怒は記載されている書物によって順番が違うので、シックスのようにズバリこれといった特定の数字と結びつけられないんですが、この罪を象徴する悪魔はサタンだと言われています。サタンは文献次第ではルシファーとも同義と解釈できる堕天使です。もともと神に仕えていた存在ですが、それが堕天して神と人間に敵対する者になり果てました。私はどちらかと言うと、ルシファーは聖書に登場する堕天使、サタンはもっと人間を惑わし、害をなす者の漠然とした概念という印象が強いように感じています。まあ、ここらへんの細けぇことは書き出すとキリがないから別にいいかと流すにしても、両者はちょっと似ているということで、七つの大罪では、モノが数字の関係上、ルシファーの「傲慢」と結びつけられるんじゃないかと書いていたので、こうやって考えていくと、水棲おばあちゃん、あるいは彼女のもとに落ちてきた者は、モノともちょっと近い存在なのかもしれません。

電波塔の発する怪電波に捻じ曲げられた世界で、モノは彷徨う。彼がかぶる薄い紙袋は憎悪に満ちた世界を忘れさせてくれるが、一時的でしかないそれが彼に永遠の休息を与えることは決してない。

『リトルナイトメア2』公式サイト

そう言えば、シリーズ次作でモノの頭部を覆う被り物は、「憎悪に満ちた世界を忘れ」るためのものらしいです。モノ自身が怒りを覚えているかどうかはわかりませんが、彼の出所である怪電波あふれる世界は、少なくともモウの深淵と結びつけられる特徴を持っていそうです。

サタンは旧約聖書では、イブをだましてアダムと一緒に知恵の実を食べさせています。二人は禁じられていた実を食べたことで神の楽園を追放され、永遠に生きることができなくなりました。また、『サムエル記』では、古代イスラエルの王となったダビデをそそのかし、自国の人口調査を実施させています。この調査は神の祝福を受けて日ごと大きくなる自国の国力を確かめ、自身の国王としての権力を驕る行為であり、国がいかなる状況にあっても神がお助けくださるという信仰心を失った末の愚行であると解釈できます。神に愛された古代イスラエルは神の国であり、厳密にはダビデの手腕で栄えた国ではなかったのに、ダビデは神の寵愛が受けられることにあぐらをかいて、まるで自分の国のように振る舞って神を冒涜してしまったというような感じです。この罪をあがなうために、ダビデと彼の国には、三つの神罰から彼が選んだものが下されることになりました。彼に提示された選択肢は、まずは3年間の飢饉、次は敵国の追っ手から3か月間逃げ惑う災難、そして最後は3日間の流行病でした。ダビデはせめて落ちるなら人の手ではなく、神の手に落ちられるように慈悲を求め、神はダビデの国に強力な疫病をもたらすことを決めます。この病でダビデはいっきに7万人の国民を失ったとされています。

ダビデはキリスト教に詳しくない人でも、ゴリアテを倒したことでただの羊飼いの少年から王になった英雄としてよく知られています。ただ、キリスト教圏では聖人扱いはされていません。それはこの『サムエル記』に記されている信仰上の罪に加えて、晩年の女癖がとても悪かったからです。彼は家臣の妻が水浴びをしている姿を偶然目にして惚れ込み、寝取った挙げ句にその夫である家臣を戦地に追いやって殺してしまいます。この略奪した妻が、のちに有名なソロモン王を産むことになるバトシェバです。

『リトルナイトメア』の物語とサタンの所業を照らし合わせるとちょっとおもしろいと思います。モウは海洋を漂う浮島のような建造物で、毎年同じ時期に、かならず別の場所に現れると言われている神出鬼没な場所です。そのなかはこの世とは切り離されている不思議な空間になっています。神の楽園から切り離された場所と考えると失楽園とも結びつけて考えられるかもしれません。グラニーが潜む深淵はモウの下層にあるので、サタンが堕天の末に落ちた先のイメージとも一致します。モウの漂流は、グラニー、あるいはグラニーのもとに落ちて捕われた者が、とある重要な女をそそのかし、相手になる男ごと居場所をなくさせたことに端を発しているのかもしれません。

階下でゲストたちがおおいに満たされている間、レディは自室に引き下がる。
この場所を知る者はほとんどいない。
誰もここへ近づこうともしない。
モウの飢えは彼女の飢え。
モウの渇きは彼女の渇き。
すべてを司るのは、このレディなのだ。

https://ln.bn-ent.net/places/

ダビデに下された神罰の内容も照らし合わせるとおもしろいと思うんですよね。先にも書きましたが、モウには台所と宴会場のようなゲストを食事でもてなすスペースがあり、食べ物であふれかえっています。一見食べ物もろくに与えられていなそうな監獄の子供たちの居住空間だって、シックスが空腹でうずくまれば食べ物を恵んでもらえる余裕がありました。公式サイトの説明文を読むと、根底はレディが飢えているからモウに食べ物があると考えることもできますが、普通に考えて飢饉とはかけ離れた様子の場所と言えます。

次の敵に追われて逃げ惑う災難ですが、モウのなかで敵に追い立てられている者はとくにいないはずです。レディや管理人は自分がこさえた居心地のいい場所に引きこもっていますし、双子のシェフは台所で率先して料理に勤しんでいます。監獄の子供たちも虐待や監禁の疑いはあるものの、最低限の寝床と食事は与えられており、彼らの脱走は命を狙う敵が迫ってくる状況とは少し違います。ノームたちにもモウの動力室という隠れ場所があります。そもそも、モウという場所自体が浮世離れした避難先のような場所です。キッドや、おそらくシックスも、モウから脱出を企てるのは、少なくとも敵対者に命を狙われて追い立てられているからではなく、むしろ逃げだそうとするから追われる状況になっています。

ただ、実際にダビデの国に下された神罰である最後の疫病は、今作の主人公の名前からして英語で病んでいることを意味する形容詞“sick”と音が似ていますし、彼女は道中たびたび咳をしています。途中で空腹にあえいで、病原菌を運ぶ不衛生な害獣のネズミも食べています。レディを捕食したシックスは、モウから脱出するほんのわずかなあいだにも、触れることなく次々とゲストたちの精気を奪いとっていました。シックスの存在自体が神罰の疫病であったと考えられるかもしれません。

暴力と肉をこよなく愛する双子にとって、シェフはまさに天職だ。
冷たい床の上をすり足で歩き、肉を刻み、ミンチにし、ごちそうを用意する――
ふと、何者かがそこにいる気配を感じとった。招かれざる汚れた客。
彼らの台所に忍び込んだ害虫は、1匹たりとも逃げることは許されない。

https://ln.bn-ent.net/characters/

公式サイトの双子のシェフの説明文を読んでも、台所に入り込んだ者を「汚れた客」と述べ、シックスが不衛生であることを匂わせる文章になっていますし、次の行ではもっとハッキリと「害虫」扱いされていることがわかります。病原菌を媒介して、病を蔓延させることが、モウの物語におけるシックスの役割だったのかもしれません。

サタン路線で考えると、グラニー、あるいはグラニーのもとに落ちた者こそ、モウの主にたくさんの死人を出す罪を犯させた黒幕なのかもしれません。ただ、モウの主と言うとレディですが、女癖の悪いダビデと性別が一致しないので、けっきょくこれも私の考えすぎのような気もします。

グラニーの部屋

モウの深淵を進むと、途中でグラニーお気に入りの一人掛けソファが置かれたリビング、あるいはダイニングのような一室があることに気づきます。家具がロープで床や壁に固定されているんですが、コンセプトアートなどを見るに、おそらく水中でグラニーが生活するために、浮力で勝手に家具が浮かないようにするための措置だと思われます。DLC の説明文にあるとおり、やはりここは彼女なりに過ごしやすいように工夫した住み処なんでしょう。レディには自室とアトリエがあり、双子のシェフは自室がすぐそばの台所で料理に勤しみ、ゲストは宴会場で食欲を満たし、管理人は隠れ家に引きこもり、ノームは動力室に隠れ住むといったふうに、モウはたいていの人にとって居心地のいい場所になっています。少なくとも、子供たちを除いては。

ソファに座るグラニー

グラニーお気に入りのソファチェアは、同じものがレディのアトリエのピアノがある部屋にも置かれています。

ピアノがある部屋

この部屋は入り口がモウの出口のような絵画になっていたり、部屋への入り口を開ける前に影のこどもたちがやたらと襲撃してきたり、モウの絵が飾ってあったり、絵の後ろの隠し収納にメッセージボトルがあったり、モウをかたどった入れ物のなかに先へ進むためのレディ型人形が置かれていたりして、妙に示唆に富んだ不思議な部屋になっています。

ピアノの部屋への入り口

それにピアノと言えば、シリーズ次作の先生の存在もあるので、いろいろ勘ぐって見ていくべき要素がたくさんあるように感じています。ピアノの上のバラが寄り添うような2輪なのも気になります。

暖炉の間

そもそもレディのアトリエの暖炉の間には二人分のソファチェアが向き合うように置かれているので、グラニーと対になる存在も欠けていて、それにはキッドだけでなく、レディもかかわっているような気がするんですよね。

首つりする細長い人

ちなみに、グラニーの部屋でソファチェアの前にあるダイニングチェアは、シリーズ次作でモノが最後に座り込んだイスと似ているタイプのもので、本編でシックスを操作していたときに、ノッポ男のような細長い首つり死体の足下にあったものとも似ています。そう言えば、この部屋の家具はロープで上に引っ張られていて、グラニーの部屋とはロープの使いかたが逆になっていますね。しかし画面左奥の歪んで伸びた足長の棚はちょっと似ているような気がします。

グラニーの部屋でこのイスとセットになっているらしき四角いダイニングテーブルの上には、先に進むためのカギとヒルが1匹入ったツボが置かれています。ヒルとグラニーの関係性も興味深いところです。このテーブルはダイニングテーブルであるという私の解釈が正しければ、ヒルはグラニーのエサということになります。ただ、食器や調理用品ではなく、ほかの用途もあるツボに入れられているところを見ると、かならずしも捕食と被食の関係とは限らないような気もします。そもそもこのグラニーの部屋へは水を抜いてから入るんですが、このツボとダイニングチェアはロープで固定されていないので最初は水面に浮かんでいます。もしかしたらたまたま外部からきただけの物で、ヒルとグラニーは共生の関係にある可能性もありますし、ダイニングチェアはソファチェアとは打って変わって、グラニーのお気に入りでもなんでもない、ただ部屋に置いていただけの家具である可能性もあります。

水中リビングダイニングっぽい部屋で暮らすグラニーは、まるで人魚のような生活をしているんですが、人魚は七つの大罪では3番目の「嫉妬」を象徴する悪魔です。そう言えばレディの掘り下げで、レディの部屋に五人の少女が並んだ真ん中にレディらしき女が立っている絵があったので、左右どちらからでも3番目のレディの罪は「嫉妬」かな~なんて前に書いていました。グラニーにもそれっぽい要素があるんですね。サタンなのか、人魚姫なのか、どちらなのかが問題ですが。

魚

グラニーに追いかけられながら泳いで渡る深淵には、途中、台所から廃棄されてきたと思われる魚のぶつ切りが落ちてきます。受け皿はこの世界ではめずらしい湯船です。やっぱり本来の使用方法とは異なる使いかたをされています。キッドは魚を水中に投げ入れ、おとりにして先に進みます。グラニーがつかんだ魚は水中に沈んで二度と浮かんでこないので、水中で食べているのかどうかわからないんですが、捕食であれば、グラニーにも少なからずレディやシックスと同じ食欲があると考えられます。ただ、キッドを捕まえるのが食べるためなのかどうかまではわかりません。

水中に引きずり込まれるランナウェイ・キッド

グラニーがキッドを水中へ引きずり込むシーンは、キッドが溺れる様子だけしか描かれていないので、その後捕食されているかどうかまでは確かめようがありません。キッドを食べるのであれば、隣の袋からはみ出した死体の腕も食べていそうなものですが、こちらの腕は水中に沈んでいたにもかかわらず、キレイに原形を留めていたので、カニバリズムの趣味は持っていないか、子供は食べない主義なのかもしれません。あれ、そうするとこのババア、シックスよりまともじゃない……?

水中から伸びる手

DLC の説明文によれば、深淵にあるものは「打ち捨てられた破片」なのだそうです。グラニーから逃げるためにキッドが足場として利用するのは、だれかによって捨てられた物と考えられます。ドラム缶、湯たんぽのような容器、木片、木箱などに混ざって、シックスの寝床と上で解釈したトランクケースもありますし、グラニーが座ってリラックスしていたソファも特別そうです。

家具なら時計が捨てられているのも、時間を捨てたと解釈できるので特別な感じがします。そのわりには、グラニーの部屋に時計もトランクケースもあるんですけどね。あと、ここにはほかではあまり見ない洗濯機もあるので、なにか意味があるのかもしれません。簡単に考えれば、浴槽と同じように、衛生観念が捨てられていることの示唆かな? グラニーが出現する水辺の入り口あたりに、脱ぎ捨てられたオーバーオールみたいな布も転がっているんですが、あれはなんなんでしょうね?

袋からはみ出した手

ほかには、海洋を漂うモウらしい大きな浮標に、おなじみのフックや、上で先に取り挙げたとおり、死体を詰めたような袋も水中から出てきます。袋からは腕がはみ出していて、袋を引き上げる際に、まるでグラニーがその手をつかんで引きとめているかのように抵抗します。ちなみにはみ出しているのは左腕で、グラニーはキッドを水中に引き込む際に右手を使っています。

ボート

ほかの物から文字どおりちょっと浮いているのは、二体分の死体袋が詰められているように見えるボートだと思います。このランナウェイ・キッドを操作する DLC では、先に述べたピアノの上の2輪のバラのように、二人で一つであることを意味するようなビジュアルが非常に多くなっています。死体とグラニーが手をつないでいるかもと考えついたのはこのせいでもあります。本編では双子のシェフを中心に挙げたペアの図ですが、DLC では異性の関係を示唆するものも多くなっています。

壁のらくがき

道中たびたび目にする壁の落書きには、二人一組で手をつなぐ棒人間風の絵があります。左の棒人間はどちらも三角頭なのでノームだと思います。右の二人は、右側の人間がスカートをはいているようなので女の子として描き分けられているカップルのように見えます。またその女の子は右脚のほうに重石のようなものを垂れ下げています。そう言えば、キッドの足かせも右足首に付いていましたね。ただ、キッドは男の子なので、性別が反転しているようです。

先生の絵

レディのアトリエの奥にも、こちらはよく似た女の子同士ですが、なにか重要そうな首がもげた像が2体飾られています。二人のあいだには立派なクモの巣が張っているので、首がもげて久しいようです。体の向きもちょっと背を向けるようになっちゃってるし、その昔は仲良しだったけど、今は……といったような雰囲気が感じられます。深淵の袋からはみ出していた手が左手で、グラニーがよく使う手が右手なら、向かって右がグラニー、左が死体という解釈にもなりますけどね。

ちなみに、ここのナゾ解きに使われる壁の絵画の一つに、シリーズ次作の先生らしき肖像画もあります。このことから、先生はレディの生涯になんらかの形で関わっているか、あるいは直接面識がなかったとしても、モウの主であるあのレディができあがるまでの工程になんらかの影響を与えていたと考えていいと思います。

日本人形を持つ像

隣の部屋にも似たような出で立ちの首がない石像が隅っこに2体あり、こちらは左側のほうがレディのような日本人形を抱えています。案外レディも人形のなにかがモウの魔力かなにかで具現化した存在だったりするのかな?

はるか昔に忘れ去られし場所の、はるか昔に忘れ去られし多くのモノを持って、この世から逃げ出し、モウにやってきた男。
そんな彼は、まるで物語の中から飛び出してきたような姿をしている。
いまや管理人となった男は、一体何をしているのか。沈黙の中、一人ぼっちで。

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以前に、管理人がこの世から逃げ出してモウに逃げてきたときに持ってきた「はるか昔に忘れ去られし多くのモノ」は、管理人の部屋に所狭しと並べられている人形じゃないかと推測していたことがありました。案外、モウの住人も人形がベースになっていたりして……?

壁の肖像画

ちなみにこの日本人形を抱えた石像がある部屋には、シリーズ次作の学校で暴れ回っているいじめっ子と同じように、頭部が陶器のように割れた子供の肖像画も掛けられています。そう言えば、いじめっ子たちも、頭部が無機質に壊れるあたり、人形っぽさがあるんですよね。

あとはノームや管理人の肖像画に混じって、グラニーらしき肖像画もあるので、レディとグラニーも同じモウに住む女同士、なんかしら接点があるみたいです。どういう関係なのか知りたいところですけどね。

ドクター

先生の肖像画が掛けられた部屋の隅には、同じようにシリーズ次作に登場するドクターに似た肖像画もあります。いちおう、三白眼すぎて目がイッてるように見える熱い眼差しと、分厚い唇というチャーミングポイントが確認できます。ただ、これは絵のタッチも相まって、そうと言われればそう見える程度の類似性なので、他人の可能性もありそうです。せめて上下逆さまだったら決定的だったんですけどね。

だれ?

仮にドクターに似ている肖像画が本当にシリーズ次作のドクターなら、ここのナゾ解きで照明を当てなくてもいい肖像画3枚のうち、2枚が先生とドクターなので、シリーズ次作に出演しているキャラクターという共通点が見出せるかもしれません。となると、残る1枚のこの肖像画は……ハンターの素顔かな? う~ん、そのわりには色白で線が細くて、ちょっとイメージが違うかなぁ……。女の子っぽいもんね。

二人のゲスト

そうそう、話が逸れてしまいましたが、二人一組という話をしていたんでした。最後に、レディによってノームにされたキッドが、ゲストエリアをさまよって、シックスを待ち受ける一室へと落ちる一歩手前でも、満腹になったゲストが二人仲よく並んで寝ている様子が見られます。シックスを操作した本編では、お腹いっぱいで寝ているゲストは一人だけで、それをノームが眺めているような状況でした。やっぱりキッドの物語は、シックスの話の展開より、どこか相手ありきで、相方の不在が示唆されているような気がするんですよね。

肩を寄せ合って座る人形

本編でシックスを操作して隠し部屋に行くと、眼の形をした監視装置で敵対キャラクターの様子を少しだけ覗けたんですが、DLC でもモウの動力室で似たような監視装置がある部屋に入れます。その監視モニターを一緒に仲よく見上げるように、肩を寄せ合って座る二体の人形が置かれています。

もう少し進むと、便器に仲よく入って見つめ合う別の人形も出てきます。そんなところで見つめ合わんでも……と考えていると、監視室で隣に座っていたサルの人形が、今度は上の窓から二人を見下ろしていることにも気づきます。便器はこの作品が大好きなオブジェクトですし、なんか意味でもあるのかな?

ここの人形は、同じデザインのものを2体並べてもいいのに、あえて違うものが使われている時点で、似たもの同士の双子のシェフや似た女の子同士の像とはまた違った解釈ができる仕掛けだと思っています。それこそこの二人が男女であることを示すみたいな区別ができるんじゃないかなと思うんですよね。

漏電

深淵には、漏電の表現もあります。なによりキッドはグラニーがいる水中にテレビを落とすことで感電死させています。その前からちらほらヒューズも画面に入り込んでいますが、ヒューズはこのあとの動力室はもちろん、シリーズ次作でも病院を中心に、ナゾ解きに使われるようになるアイテムです。シリーズ次作の病院では、機械につながれて人工的に心臓を動かしているらしき特別な患者の装置を主人公のモノが切り、その患者が死に瀕してドクターが駆けつけてくる場面があります。その騒動を起こすことで、モノは先に進むために必要なヒューズを手に入れます。また物語の終盤、モノは電波塔から流れる怪電波によって狂ってしまった人々から逃れようと、追ってくる人々を感電させて倒します。人命を奪う電気という共通点があり、また性別で掘り下げるなら、電気で人を傷つけるのはキッドとモノ、つまり男のほうです。

グラニーの命を奪ったTV

テレビと言えば、『リトルナイトメア2』の歪んだ世界では、電波塔から怪電波が放たれていて、その怪電波によって見た人が正気を失うノイズがテレビに映し出されていました。この DLC はクリアするとエンディングのあとに、正気を失った人々の追っ手をかいくぐってモノが駆け抜けたアパートの一室が映ります。その部屋のテレビに一瞬だけノッポ男のシルエットが映るので、DLC の開発時点で次作の構想はある程度できていたと考えられます。

ノッポ男

あ、テレビの上に置かれた缶も2個仲よく寄り添うように並べられてますね。まあ、こんなふうに、DLC にはシリーズ次作との接点がよく見られ、レディよりもグラニーのほうが次作の要素と結びつけやすくなっています。いちおう次作をプレイすれば、レディを彷彿とさせるオブジェクトも寄り道で見つかるんですが、あちらはレディ単体というより、ファンサービス的に詰め込まれた前作の要素と考えることもできますからね。

というか、モウのなかではちゃんとつくテレビは貴重なんじゃないでしょうか。キッドがたどり着いたときには電源が落ちて観られなくなっていたんですが、その昔はグラニーが娯楽として観ていたりもしたのかな。それともここのテレビは水面に浮かんでいるほかのものと同じ、 「打ち捨てられた破片」 に含まれるんでしょうか。そうするとモウにも、テレビと明確なつながりがあるノッポ男とモノの影響が及んでいると考えるほうが自然だと思います。そして、水中暮らしのおばあちゃんからすると凶器でもあるので、グラニーと結びつけて考えるより、モノとノッポ男と結びつけて考えるほうが考察が進むかもしれません。

この深淵のテレビ以外では、本編でも管理人との追いかけっこ中に、シリーズ次作のハンターの家に似たキッチンで女性が歌っている映像がテレビで見られましたが、深淵のテレビには、作品で繰り返し象徴的に使われている眼と三角がモチーフの静止画が映し出されていて、放送終了後などに流れていそうなテストパターン放送っぽい印象を受けます。動く映像が流れる点では、管理人が釘付けになっていたテレビのほうがより『リトルナイトメア2』の世界に近そうかな。

長いハシゴ

グラニーを退けて、無事に深淵から脱出したランナウェイ・キッド。長い長い階段を駆け上がり、ハシゴをひたすら上ります。このシーンも、シリーズ次作でモノが怪電波にやられた町を駆け抜けて、ノッポ男と対峙する直前に上る長いハシゴに似ていて、次作とのつながりが感じられます。ノッポ男と対峙するシーンは土砂降りの雨が降っていて、キッドがハシゴを上った先で頭を出す排水口が、一昔前の浴室とかによくあった屋内用の丸い排水目皿なのも相まって、下水っぽいイメージがつきまとう深淵とちゃんとイメージが重なるようになっているんですよね。やっぱり怪電波あふれる町は、モウの深淵と結びつけて考えられる場所なのかな?

シリーズ次作のエンディングを見るに、ノッポ男は未来のモノであると解釈できるようになっています。ゲーム開始時はモノがテレビのなかから飛び出してきたんじゃないかと思われる状況からスタートするので、監獄の子供たちが灰は灰に還りながら輪廻転生を繰り返しているのと同じように、モノは怪電波のなかでテレビに出たり入ったりしながら、モノに戻ったりノッポ男になったりを繰り返して、シックスとの接触を繰り返している可能性があります。そう考えれば、シックス、または似た役割を果たす少女もまた、輪廻転生を繰り返して似たような運命のもとに生まれてくるんでしょう。モノはハシゴを上りきった先で未来の自分と対峙しましたが、DLC のランナウェイ・キッドはなすすべもなく管理人の長い手に捕まるだけです。ここらへんにも、キッドの運命に抗えない非力さが表れているような気がします。

シックスと一緒に捕まったモノ

そしてシックスと同じ部屋で、仲よく似た檻に入れられます。本編でも描かれていますが、DLC をプレイして初めて、二人がニアミスしていたことが確認できるシーンになっています。

布に包まれて

キッドはその後、布に包まれてフックにぶら下げられ、どこかへ送られてしまいます。本編でシックスを操作したときに、人型のものを布に包んで、フックに付けてどこかに移動させている管理人の作業風景を見たことがあるので、包まれていたのはキッドのような脱走した子供たちだったと考えられます。フックにぶら下げられたナゾの袋が動かないのは、なかの子供が……まあ、そういうことと解釈していいと思います。もしかしたら脱走した子だけでなく、脱走せずに監獄の子供部屋で亡くなってしまった子たちもあそこからどこかへ移送されているのかな?

ここで送られる先は、キッドが途中で脱走してルートから外れてしまったのでわからないままなんですが、本編で似たようなフックを動かす装置が台所にも通っていることが確認できるので、ここの子供たちは台所方面へ送られていたようです。ということは、その後のことはお察しという感じでしょうか? でもあの台所って、そんなに怪しい肉なんてなかったんですよね。むしろシェフに解体されていた疑惑の演出が本編のゲストエリアで見られるゲストのほうが、食用にされていた危険性が高そうに感じています。シックスがフックにぶら下がって行き着いた先でも、ナゾの袋に包まれた塊が山積みのまま放置されていて、むしろネズミに食べられていたぐらいなので、この袋詰めにどういう用途があったのかはハッキリしません。ネズミは、飢えたシックスが食べたものを掘り下げれば、シックスとかなり近い存在だとは思うんですけどね。

どうも一度でも子供が脱走すると台所送り決定になるのは間違いないようですが、フックのレールは台所を通って、ゲストたちが乗り付けてくる船をシックスが見た外壁の手前まで続いていたので、あのまま外の海へ投げ捨てられるようにもなっていたのかもしれません。そこまでぶら下がっている袋が見当たらなかったので、けっきょくこの子供たちの体は「灰は灰に」方式で、モウのなかで循環していると考えられますが、そうすると依然どう循環しているのかナゾのままです。ここらへんのレールフックの用途は、子供たちのモウにおける立ち位置の分析にも役立ちそうですし、シックス含め、登場人物の食性の掘り下げでも参考になりそうなんで、調べてみたいんですけどね。

ノームをハグするキッド

フックにぶら下げられた袋からはい出たキッドは、そのまま下へ落ちて、モウの動力室をさまよいます。そこはノームたちが隠れ住むたまり場になっていて、キッドは本編のシックスと同じように、出会った彼らを片っ端からギュッと抱きしめて友情を築き、さらに彼らの協力を得てここからの脱出を図ります。

ノームは元ネタの精霊のファンタジー設定としては、風、火、水、土の四元素のなかで土属性を代表する存在で、地中を泳ぐように機敏に動き回れるとされています。今作のノームと同じ、三角帽子がトレードマークの小人の姿をしています。ガーデン・ノームみたいに、庭先に像を飾っておくのもここらへんの土属性のイメージから御利益が得られそうな気がするからかなと思うんですが、このゲームの英語版を確認すると、ノームのつづりは“Nome”らしいので、“Gnome”とつづる元ネタとはあえて区別されているようです。土属性の精霊っぽい存在なら、ここが地中で、今までグラニーと戯れていた深淵がさらに下層の地獄で、レディのアトリエが地上なのかな~なんてイメージができそうだったんですが、そうとも言えなくなってきました。

動力室の機関部

動力室では、ノームたちが石炭を機関部の火室に放り投げることで周辺の機械が動いていました。モウの外観は頭に大きな煙突が生えた人の顔のようなデザインでしたから、あの煙突から出ているのはここらへんの機関から輩出される蒸気や煙だったのかもしれません。

キッドがここに落ちたとき、最初からノームたちが働いていたわけではないんですが、仲よくなったキッドのあとについて火室の前まで来ると、ノームたちがキッドのそばを離れておのずと動き出し、石炭を焼べ始めるので、モウの動力を動かさずにはいられない習性が備わっているんじゃないかという気がしてきます。別の部屋では火の前でくつろぐ姿が確認できるので、根本的に火が好きなのかもしれません。シリーズ次作ではシックスも、病院でドクターを焼いた炉の前で思わず暖を取っていましたし、今作のシックスも最初からライターを持っていたりして、火と関連があるのかな~なんて書いていました。こういう点では、キッドよりシックスのほうがノームとの類似点や接点を多く持っていそうですね。

ノームが日常的に動力室で火をおこしているのなら、モウの電力はノーム、つまり児童労働によって賄われている説も考えられます。ノームは何度も述べてきたように、キッドと同じ、モウに捕えられているらしき子供たちの成れの果てです。ここの子供たちはモウの動力を生む労働力でもあるというわけです。そう考えると、普通なら世話をしなくちゃいけない面倒な子供たちが、わざわざ冷酷なモウの世界で育てられている理由にもなると思うんですよね。

壁のらくがき

ノームの住み処ということで、ここには落書きが大量にあります。気になるものを取りあげると、まずは上の管理人らしき人物です。腕の長さや頭部のバランスなどのシルエットから、管理人が連想できるんですが、どうも顔面いっぱいに一つ目があるように見えます。そうじゃなければ、黒い目隠しとその下の皮のシワを表すためにグチャグチャッと雑に塗りつぶそうとしたかですね。

管理人

モウのあちこちに存在する一つ目のモチーフが管理人だとしたら、なかなか興味深いですね。今作のゲームプログラム名がアトラスだったので、子供たちを石化させる光を放っていた眼はメデューサじゃないかと前回書いていたんですが、メデューサだと女じゃないと辻褄が合いません。これだけだといまいち説得力はない気がします。

TV と落書き

動力室の隙間に設けられた小部屋に、同じ管理人の落書きがあります。この部屋には次回作とのつながりが感じられるテレビが2台積まれていて、左下の画面に、おなじみの一つ目の絵がドドンと貼られています。右上の画面のほうには、シックスに似たシルエットのコートを羽織った子供と、管理人らしき腕が長い男の絵が貼られています。

ここらへんの要素、管理人やノームがどうこうというより、めちゃくちゃシリーズ次作『リトルナイトメア2』のことを表しているように感じられます。物語の初っ端、モノが森のテレビの前で目覚める前に、ノッポ男がいる怪電波の世界をカメラが漂うんですが、そのカメラは長い廊下の突き当たりにあるドアにクローズアップしていきます。そこにはこの落書きのように、大きな一つ目のレリーフが彫られています。物語の後半に主人公のモノがテレビのなかに入ってこの世界を探検するので、左下のテレビは次回作のテレビのなかに存在する怪電波の世界を表しているんじゃないかなと思います。

じゃあ、右上はなにかと考えると、これって、モウにいるシックスと管理人ではなくて、次作のシックスとノッポ男なんじゃないでしょうか?

放送局から絶え間なく発せられる不快な電波の中、その男は終わりのない旅を続けている。
荒廃した世界で影の中を行き、何かを見つけるために。

https://n6ls.bn-ent.net/

管理人って、けっこうノッポ男と、ひいてはモノと似たポジションのキャラクターなのかもしれません。服装はフォーマルな感じが似ているし、管理人は腕だけ異様に長いんですけど、ノッポ男は全体に長いから、脚だけ妙に寸を詰めたら管理人っぽいシルエットになります。ノッポ男はなにかを探して電波のなかをさまよっている存在で、管理人ははるか昔に忘れられた場所から、はるか昔に忘れ去られたものを持って、この世からモウへ逃げてきた男です。

With long forgotten things from long forgotten places, he fled the world and found The Maw. Now as The Janitor he is a tall tale hiding in the shadows, stalking the silence, a monster alone.

https://en.bandainamcoent.eu/little-nightmares/little-nightmares

英語版の公式サイトには「逃げた先にモウを見つけた」と書かれていて、執念深く自分の探し物を見つけようとしているのがノッポ男で、執念深く探した結果、モウを見つけて逃げてきたのが管理人とも考えられそうです。

壁の落書き

左手の壁にも眼がいっぱいに映し出されたテレビの絵が描かれていますね。ここらへんの落書きはノームが描いたものじゃないかと書いていたんですが、いちおうシリーズ次作にも、シックスが捕われているハンターの森小屋に今作そっくりなノームが存在することが確認できているので、ふたつの世界はどういう関係かまではわかりませんが、なんらかの接点があることは間違いないと思います。

壁の落書き

反対側の壁には、手をつなぐ棒人間風の絵と、それを見つめる眼の絵があります。手をつないだ人間とそれを眼が見ている描写はこの下層でも繰り返し描かれていますし、あちこちで見られます。眼がモノとシックスの仲を見ているノッポ男のもので、それはこのモウの世界では管理人のものでもあるんだけど、管理人はモウに逃げてくるときに視力を失っているので、今はノッポ男のように視力に頼ることができなくなっている……みたいな筋書きの可能性はあるかな? あ、いえ、これは私が思いつきで書いている妄想です。

三つの眼

レディのアトリエには、ことさら多くの眼のレリーフを使った仕掛けがあるので、管理人の眼の力を奪ったのはレディのまじないかもしれませんね。でなければ、ノッポ男とレディの接点を探さないといけなくなりますが、今のところそこまでキレイに結びつく線を見つけられないんですよね。

壊れた頭

レディのアトリエにある一つ目の仕掛けは、レディそっくりな日本人形が目の前にあるとまぶたを閉じたり、眼のレリーフが隠れるように扉が開いたり、監獄では光を放っていたのに、逆にレディのアトリエでは光を当てるとまぶたを閉じたり、特殊な挙動を見せるので、シックスとレディ、さらにはノッポ男とモノと管理人を同一視して、探し物であるシックス、あるいは彼女に相当する女をついに見つけたノッポ男の心理と考えるとなんかピースがはまる気がします。シックスはシリーズ次作のエンディングでモノの手を払いのけています。モノは初対面のときにシックスに手を差し伸べています。今作のシックスは管理人の手を切り落としています。管理人はシックスを捕まえようと隙間から手だけを出して手探りでシックスの居場所を探っています。表現の過激さは違えど、手を使った両者の関係がちょっと似ている気がします。

手と言えば、次作の病院でモノが手に襲われる場面があるんですが、あれもなにか関連があるのかもしれません。

ノームの人形

動力室の一角には、工具が並べられた人形工房らしき管理人の部屋があり、彼がここで人形を作っているらしきことがわかります。状況証拠的な推察ですが、モウの人形は基本、管理人のお手製だったりしますかね? もっと言うと、レディの部屋にある人形や、そっくりな人形があるレディすら、管理人が人形から作り出した存在だったりして……? 管理人がノッポ男と類似の存在であれば、探し物は次回作のエンディングから察するに、シックスのような女だった可能性があります。レディはモウのすべてを牛耳る女主人です。管理人がモウを理想的な逃避先としたのは、シックスの姿を重ねられるレディの根城だったからだったりして……あ、何度も書きますが、これはあくまで私が勝手に書き散らしている推測の一つです。

つられた人形

管理人の工房に入る前の部屋には、首をつられている人形があります。首つりはゲーム本編からマップ全体でよく見られるモチーフなんですけど、やっぱりシックス操作時に見たノッポ男似の首つり死体から、ノッポ男との接点を疑いたくなります。

また、管理人の人形工房に置かれた作業台の上に、トロフィー獲得に絡んでいる特殊なノームの人形があります。ノームが石炭を放り込んでいる火室までこの人形を運んで焼べると、「モウの燃えカス」というトロフィーが手に入ります。

燃え滓
燃えがら。
燃えたあとに残ったもの。もえかす。

広辞苑 第七版

つまりは灰ですよね。先に述べた「灰は灰に」の実績解除のトロフィーにつながるので、もしかしたら、監獄の子供たちも突き詰めれば管理人の人形だったりするのかもしれません。そもそも管理人の腕も、切り落とされたときに流血表現がないので、彼自身もこの世のなにかをモウで再現している人形にすぎない可能性があります。

ベッドの人形

物語を一番はじめまでさかのぼって、キッドがグラニーの悪夢から目覚めたとき、彼のベッドのすぐ真隣に寄せられているベッドにはだれも寝ていないんですが、空のベッドにこのノーム人形と似たようなサイズ感の人形が転がっています。三角帽子はかぶっていないのでノームではなさそうですが、顔の中央が鳥のクチバシのように膨らんでいて、ほかではあまりみない造形のオブジェクトだったので、これも特別ななにかを示唆しているのかなと考えていました。強いて言うなら、これが本来であればキッドとペアになるはずだった不在の相方なのかな?

監視装置

管理人の人形工房の隣には、本編でシックスが隠し部屋からのぞいていたのと同じような瞳型の監視装置があります。シックスのときは敵対キャラクターとノームの様子が一通りうかがえたんですが、こちらのキッド使用時は、脱走した子供を袋詰めにしてフックにかけて運んでいた管理人の作業台と、軽快な歌を歌う女性の映像が流れたテレビがある部屋、そしてシックスが管理人の腕をちょん切った部屋が順番に映り、最後に大量のクツの海を渡り歩くシックスの姿が見えます。ここは管理人の袋詰め作業台から少し進んだところだったので、キッドとシックスはほぼ同時期に管理人と接触していたようですね。

ところでこのクツの海、実際にシックスを操作したときは、クツの山の下からナゾの怪物が迫ってきて、けっこう背後まで詰め寄られていたと思うんですけど、キッドがのぞくカメラには一切その動きが映っていませんでしたね。動いているのはシックスの黄色いレインコートぐらいです。アレって、シックスが見ていた幻覚かなにかだったの……?

管理人の袋詰め作業台

ところでこの監視装置、シックスを操作していたときは、だれが使っているものなのか一切わからずナゾのままでした。ここの装置の土台におなじみの落書きが貼られているし、肩を寄せ合って映像を見上げる人形のペアもいるので、この装置を使っていたのはもしかしたらノームたちかな? そう言えば、ノームの形をした人形の三角帽子にも眼のマークがありましたね。管理人が失った眼の力は、モウではノーム、つまり子供たちに引き継がれている……とか?

それにしても、作業台はまだいいとして、最後のシックスに腕をちょん切られる部屋のカメラは、管理人の運命を先読みしたカメラの配置っぽくてちょっと不気味ですね。ノームたちにはシックスの到来と管理人の行く末が予見できていたのかな?

レディのエレベーター

管理人を適当にあしらって、動力室のノーム全員と抱き合って仲よくなったら、動力室のさらに上層へ上るリフトを動かしてもらって、次にキッドはレディのアトリエに向かうことになります。その移動手段は、レディのエレベーターに便乗する方法でした。そう言えば、本編のシックス操作時にも、ゲストエリアからエレベーターに乗って移動するレディの姿が見えましたね。レディのアトリエはゲストエリアのさらに上階にあるようです。

このキッドとレディの何気ない位置関係なんですが、やっぱりキッドがレディの上にいることが私は気になります。細かいところなので、気にしすぎかもしれませんが、キッドは先に述べたとおり、シックスの寝床と同じトランクケースを足蹴にして深淵の水辺を渡っていたりします。なんか女を足蹴にする性質があるように感じられます。さり気なく女にマウントを取るキッドの図です。

レディの着物、左前

レディのアトリエのホールには、大きなレディの肖像画が飾られているんですが、この着物、左前ですよね。

着物を右前に着ている像

石像とかはよく見ると右前なんですよね。あと、石像で思い出したんですが、レディのアトリエの肖像は頭部が砕けているものが一定数あるので、もしかしたら学校のいじめっ子ともつなげて考えられるかもしれません。首がもげていると考えるなら、首つり死体とも接点があることになるんですけどね。

頭を使って遊ぼう

蛇足かもしれませんが、頭部がないと言えば、グラニーの深淵には逆に包帯グルグル巻きの頭部だけが転がっていて、それを近くのバケツに放り投げると「頭を使って楽しもう!」という怖い名前の実績が解除されます。包帯グルグル巻きの頭部ならむしろ、連想するのはシリーズ次作の病院の患者ですね。

レディのマネキン

石像のほかには、マネキンもちゃんと右前で着物を着ています。どうして絵画だけ左前なのか不明ですが、もしレディも人形がもとになってだれかの再現としてモウに存在している人物説が有効なら、オリジナルの女性はもうとっくに死んでいない表現なのかもしれません。ま、一番凡庸な可能性は、日本文化に詳しくない開発者が深く考えずに絵画のテクスチャを左右反転させた説ですけどね。

肉の目

レディのアトリエの奥には、眼の絵が飾られた細長い廊下があります。こと眼のモチーフにかんしてはめずらしくないこのモウの世界ですが、この新鮮なピンクの生肉に複数の眼が生えたような見た目は、シリーズ次作の怪電波のなかで見られるタイプに近いと思います。レディのアトリエは電波塔に近い場所なのかな? モウのてっぺんの煙突は、『リトルナイトメア2』の世界だと電波塔に置き換えられる存在なのかもしれません。

地球儀みたいな眼

そう言えば、ホールにも地球儀みたいにクルクル回せる眼のオブジェがありましたけど、これもまわりに彫られた装飾からして、あの増殖する肉塊の眼を表しているのかな?

怪電波のなかで見られる肉塊は、あの電波に魅了されてテレビに飲み込まれてしまった人々の肉と目線なんじゃないかと考えていたんですが、モウのレディのアトリエと繋がる場合はどう解釈すればいいのか悩みます。ノッポ男はレディと対になっているのか、モノを蹴落として一人テレビから脱出したシックスの代わりにレディはモウの深部に閉じこもることになったのか、いろいろ考えられますね。

レディに捕まるキッド

素顔を見られて悲鳴を上げたりしながら、最終的にキッドを捕まえてノームにしてしまうレディの図です。やっぱりご本人もお召し物は右前で着ていますね。ここではまたしっかり仮面を着用していますが、レディの鏡に映った素顔は、顔面だけでなく首元のお肉もだいぶ垂れ下がっていて、輪郭がまったく変わっていたので、仮面を着けただけではこういう外見にならないと思うんですよね。それこそ仮面のなかに垂れた肉をねじ込んで収納するぐらいじゃないといけない気がします。もしかしたらあの醜悪な素顔はレディの恐れが表れた幻覚だった可能性もあるかもしれませんね。あるいは未来が映る鏡とか……?

シックスもそうですけど、キッドも遠慮なくドカドカ人の部屋に無断で入ってくるのに、レディは命を奪う反撃をしないんで、この世界にしては意外と優しいというか、小心なのかもしれません。

ノームになったキッド

ノームになると、着ていたものが周囲の床に散らばるようです。ここらへんは怪電波に魅了されてテレビに吸い込まれるシリーズ次作の人々に似ていますね。あと、ノームになることで、初めて右足首の足かせが取れたランナウェイ・キッドです。なんだろう、もしかしたらノームになることは自由になることでもあるのかな?

ノームになるとジャンプ力も弱くなり、簡単なアクションしかできなくなります。ノームになったキッドは落ちるようにこの先を進み、ゲストエリアに迷い込みます。

それじゃあまた後で

そして、お腹を空かせたシックスがやってくるこのソーセージの前にたどり着きます。キッドとしての命はここで終わりなんですが、灰は灰に戻って輪廻しているこのモウの世界なら、また形を変えてどこかで誕生するんでしょうか?

キッドは男性としての役割をもってこの物語の中心人物になっているんじゃないかと最初のほうに書いたんですが、同じ男性で言うなら、次作の主人公のモノは、シックスに裏切られても死ねずにずっと怪電波のなかで暮らしてノッポ男に成長していました。道中で死体と思しきノームの体をかじっているネズミを見たので、シックスが残したキッドの体は、ネズミの栄養になり、ネズミはシックスの栄養になり……って、けっきょくみんなシックスの栄養になってしまうやん。食物連鎖の女王かよ。

けっきょく掘り下げてみても、ランナウェイ・キッドの本作における立ち回りはよくわからないままでした。とにかく不憫な少年という印象が強烈に残ります。この物語は本当に救いがないなぁ……。でも、『リトルナイトメア2』もやります。

Twitch 『リトルナイトメア2』のプレイ日記に続く
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