なんかひょんなきっかけで、昔、子供の頃に観た TV アニメ『天空のエスカフローネ』を見返す機会がありました。たぶん今の子供にはなじみのないセルでまだ手描きされていた時代のアニメーションで、ちょうど CG が手探りでアニメーションに活用されるようになってきたぐらいの過渡期の作品です。大人になってからあらためて観ると、当時わからなかったところをいろいろ掘り下げてみると面白いかもと思うようになったので、ほかのゲーム日記と並行してここで考察記事を書いてみます。これはその目次のページです。書き上がった記事から追加していきます。

手の込んだ劇場版まで製作されたので、人気がなかったわけじゃないけど、今となってはそれほど有名な作品でもないから、こんな辺境のブログでこそっと触れるぐらいなら害はないだろうと考えてリサーチを始めたんですが、意外や意外、リサーチ対象が広がりに広がって大がかりになってきたので、調べながら気になったことを随時書き殴って、最後にいつかそれらしいまとめができたらいいな~という希望的観測で見切り発車をする、いつものうちのブログらしいノリでやっていくことになりました。

作品の概要

『天空のエスカフローネ』

公式の宣伝動画みたいなものを探してみたんですが、古すぎてそれすら存在しないという……。公式サイトが残っているだけでも、ファンとしては有り難いことですけどね。

陸上部に所属する、占いが趣味の元気な女子高生・神崎ひとみは、ある日不思議な幻覚=ビジョンを観る。それは空に地球が浮かび、巨大ロボットが戦う異世界の光景だった。その翌日、突然出現した光の柱から甲冑を身に纏った少年バァンが巨大な竜とともに現れ、ひとみは戦闘に巻き込まれてしまう。竜に苦戦するバァンを勝利に導いたひとみは、再び出現した光の柱に飲み込まれ、異世界“ガイア”に転移してしまう。そこは空に月と地球が浮かび、人間はおろか、狼族や猫族などの獣人、そして竜までもが跋扈する、ひとみがビジョンで観た光景が広がっていた…。

『天空のエスカフローネ』公式サイト

『天空のエスカフローネ』は、『機動戦士ガンダム』をはじめとしたロボット・アニメでおなじみのサンライズが製作した作品です。1996年に放送されて、上にも書いたとおり、2000年には TV シリーズをベースにアレンジされた映画も公開されました。

当時としてはめずらしい、戦わない女の子が主人公のロボット・アニメで、占いや恋愛といった女性向けとされる要素が積極的に取り入れられた点が大きな特徴になっています。これが同時にサンライズのロボット・アニメが好きな当時のファンの評価を二分する要因にもなっているわけですが、私は製作者の苦悩が見える自己矛盾というか、作品に残された独特な幅の広さが嫌いではなかったんですよね。逆に考察のしがいがあるから、こうして感想記事を書こうと思い立ったわけです。

本作は現役女子高生の坂本真綾さんが主人公の声と主題歌を担当し、声優としてブレイクするきっかけになった作品としても有名です。子供の頃から洋画の吹き替えなどをされていて、別に当時もキャリアが浅かったわけではないんですが、今や人気の揺るぎようがないベテラン声優さんですからね。インタビューを聞いていると、この作品がなかったら音楽の仕事をしてなかったかもしれないとまでご本人が発言されていました。ちなみに本作の音楽を担当し、坂本さんの音楽活動をこの後10年近くプロデュースされたのは、今や NHK の朝ドラや大河ドラマまで手がけるようになった、これまた大御所の菅野よう子さんです。なんだかんだ平成初期の景気のよさがまだ残っている豪華な作品だと思うんですよね。

インターネットに転がっている話や、DVD などについているインタビューによると、昔のこの作品以前の映像作品は、DVD などの記録媒体でお商売をする方法がまだ確立されてなかった時代なので、それこそ家庭向けの記録媒体なんてものがろくになかった時代からあるサンライズの主要ブランド『機動戦士ガンダム』シリーズの初期作品あたりでは、作中に登場するロボットをオモチャとして販売するなどしてお商売を成立させていました。当然、物語の展開もそれありきで練られることになるんですが、『天空のエスカフローネ』はちょうどこういうアニメーション作品がそれ自体、映像として売れる時代に入ってきたもので、その点でも作品作りが根本的に変わっていた過渡期の作品だったようです。女性向けの要素が多く取り入れられたのも、それを機にファン層を増やそうと考えた戦略だったんでしょうね。こういうチャレンジ精神は、判を押したようにオリジナルの模造品で作品数を水増ししている最近の『機動戦士ガンダム』シリーズ作品より好感が持てると私は感じています。

考察を始めた理由

最初に興味を引かれたのは、小説の冒頭で、主人公のひとみが最近見る夢の内容を、初恋の相手である部活の先輩に相談した際に返される言葉です。彼女は先輩に、最近なぜだか巨人と剣を振るう少年の夢を見ると明かし、彼は彼女の夢を以下のように分析します。

フロイト流に考察すると、巨人と剣士は性的な抑圧と欲求不満を表していて……

天野 進, 小説『天空のエスカフローネ1』

じゃあ、サンライズのほかのロボット作品のアレコレも、全部性欲を持て余したヤバいヤツらの乱痴気騒ぎだった裏設定とか、考えられそうですよね。

なに! 戻れというのか。ナナイ! 男同士のあいだに入るな!

シャア・アズナブル, 映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』

こんなこと書くと怒られそうですけど、これとかまさにそれっぽくないですか……? えっ、私の頭が邪なだけですか。そうですか。

『天空のエスカフローネ』で気になるのは、女性向け要素と言いつつ、主要な製作スタッフに女性の姿が見えないことです。業界の性質からしても、当時としては仕方なかったのかもしれませんが、サンライズは今シリーズ最新作の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』でもシリーズ初の女の子が主人公の物語を作りながら似たようなことをしています。重要なのは女の子の視点じゃなくて、おじさん視点で見映えする女の子の物語で、けっきょくこの作品も、女性向け要素と自分たちで言いつつ、働くおじさんたちが苦労の末に手探りで作りだした幻想の女の子要素だったんだなあと、大人になってから振り返って思いました。現役女子高生の女の子をキャスティングしたのも、女子高生視点の物語が必要だったんじゃなくて、オジサンたちがそれを作りながら「やっぱり現役女子高生の告白シーンはいいですな~」とときめくための作品だったんだと思います。ちょっと気持ち悪いですね。海外のアニメーション製作の現場で、女性の製作陣が等身大の生きる女性像を描く作品を発表しているのと対比すべき動きだと思います。

この違和感は私が本作を考察するうえで大きなポイントになっています。女の子向けと言いつつ、別に女性視点の何かを積極的に分析して取り入れようとしているわけではなさそうなのはなぜか。私が行き着いた仮説は、けっきょくこれも偉大な富野由悠季監督が残した『機動戦士ガンダム』の世界観から、男性向けの『ガンダム』ブランドでは描ききれないこぼれネタを、女性狙いと称して組み直した作品だったからじゃないのかというものです。

作中に見られる『機動戦士ガンダム』との共通点は、じつは意識しなくてもちょいちょい最初から気付いていたポイントでした。主人公のひとみの占いに視覚効果として飛び交うダビデの星は、想い人のアレンが率いるクルゼード隊の十字軍要素と合わせて、俗に言う1st ガンダムのジオニズム、さらには富野監督が後年発表する作品のレコンキスタというテーマと結びつけて考えられそうだし、もう一人の主人公であるヴァンが立て続けに敵を殺めたあとに闇落ちする姿は、めちゃくちゃ『機動戦士Ζガンダム』の主人公カミーユ・ビダンの姿と重なります。

そんなわけで、一気に気になる『機動戦士ガンダム』シリーズ作品を調べることになったので、リサーチのボリュームが恐ろしいことになっています。いろいろまとまったものから、参考にした文献と各話の感想を以下に追加していきます。

あと、今は有名な作品じゃないから大丈夫だろうって、上に書いたんですが、そんなこんなで、けっきょく大御所の作品を取り挙げずにはいられなくなってしまったので、またブログが荒れそうならさっぱり全部削除するつもりです。

感想

1. 運の告白
2. 幻のの少女
3. 華麗なる
4. 魔性の少年
5. 兄弟の
6. 策謀の
7. 予期せぬ
8. 天使のう日
9. 根の記憶
10. 青きの王子
11. の予言
12. 秘密の
13. 赤い運
14. 危険な
15. 失われた楽
16. かれし者
17. このの果て
18. 運命の
19. 恋の黄律作戦
20. 偽りの
21. 幸運の作用
22. 黒きの天使
23. の予感
24. 運の選択
25. 絶対運圏
26. 永遠の

映画『天空のエスカフローネ』

参考文献

『宇宙の戦士』
『月は無慈悲な夜の女王』
『宇宙の呼び声』

『映像の原則 改訂版』
『シークレット・オブ・ザ・タロット 世界で最も有名なタロットの謎と真実』
『現代魔術の源流 [黄金の夜明け団]入門』
『心理学と錬金術Ⅰ』
『心理学と錬金術Ⅱ』

『ピピちゃん』
『海のトリトン』
『機動戦士ガンダム』
『機動戦士Ζガンダム』
『機動戦士ガンダムΖΖ』
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
『機動戦士ガンダムF91』
『∀ガンダム』

『伝説巨神イデオン』
『聖戦士ダンバイン』