暴力の温床
学校とは残酷な場所である。
前作『LITTLE NIGHTMARES -リトルナイトメア-』から引き続き、Twitch でプレイ配信している『リトルナイトメア2』のプレイ日記を書いていきます。前回はハンターの森を抜けて、街にたどり着いたところまで進めていました。今回は学校を冒険します。
個人的に学校はシリーズ随一の残酷な表現に満ちているステージだと思います。前作とつながっていると考えられるところも複数あるので、配信のスクリーンショットを貼り付けながら、またあ~だこ~だ書き連ねていこうと思います。
前回は、このテレビに頭を突っ込んで消えてしまったらしい人の服を見て、ちょっとノッポ男っぽいと言ったところで終わりました。前作始まってすぐにシックスが見た首つり死体をちょっと思い出します。
モウとこの街はもちろん全然関係ない場所のはずですし、前回ハンターを殺めた森から海を渡ってはるばるたどり着いた街なので、森とも関係ないはずなんですが、モノが画面右手に進むと、床に落ちているまた別の服のそばにカラスがいるので、どことなく森での出来事からは逃げられないというメッセージが込められているように感じられます。
崩壊した建物のなかを通り抜けて裏通りに出ると、通りの奥の地面に大きな穴があいていて進めなくなっていることがわかります。ちなみにこの崖、普通に落ちて死ねます(経験済み)。
ここの行き止まりには今作の大きなテーマであるテレビ、そして積み上げられたゴミの上に、またリビングチェアが置かれています。モウの深淵でリビングチェアに座っていたグラニーとの関連性があるように感じられるんですよね。
グラニーとの関連性と言えば、ここは空飛ぶ小さな一反木綿のように空からフワフワと紙か布のようなものが舞い降りてきます。前のハンターの森でも言ってたんですけど、この動きは普通の重力だけじゃなくて、水のなかにいるような浮力も働いているように見えるんですよね。
この街はあちこちに小包が乱雑に置かれているんですよね。人の気配があんまりないのに、人と人がなにかをやり取りしてつながろうとしている雰囲気が伝わってきます。そう言えば、前作の DLC で主人公だったランナウェイ・キッドは、収集要素としてボトル入りメッセージを回収していました。あれも彼と交流しようとしている相手がどこかにいることを示す要素でした。
通りから小さな飲食店に入っていきます。ちょっと厨房の雰囲気がハンターの家のキッチンを連想させますが、お店全体の印象はイタリアの一般的なバールみたいな感じでしょうか。ここも人気がなく、カウンターのハイチェアに人の肉体だけがキレイに消えてしまったかのような衣服が取り残されています。おそらくテレビの怪電波が原因なんでしょうけど、骨抜きどころの騒ぎではありませんね。
カウンターの先には、お客さんから見えるように高所に設置されたテレビがあり、壁に肖像画が2点飾られています。左は若かりしころの先生っぽく見えます。右はハロウィーンでシーツをかぶったオバケのコスプレをしたみたいに、真っ白い人の顔をしていて、シリーズ2作品通じて見覚えがありません。Little Nightmares Comics に似たような登場人物がいたけど、その子かな?
飲食店を抜けると廊下に出ます。右手のドアの下半分が朽ちていて、モノたちが通れるようになっているんですが、これってなんかシックスが監禁されていて、前回モノが斧で叩き壊したドアみたいですね。
壊れたテレビが山積みになった場所に出ました。明らかに衝撃で壊れているので、怪電波の危険性に感づいた人たちが破壊しようとしたあとだったりするんでしょうか? あるいは、明らかにロープでつり上げようとしているので、ただたんに飾り立てようとしてうっかり壊してしまっただけかな?
シックスに手で足場を作ってもらい、高所の穴を通ってモノだけ隣の部屋に来ました。シックスが「お~い!」と呼ぶ声が聞こえますが、この先の階段は崩れていて進めません。目の前に明らかに怪しいテレビが置いてあるので、そのテレビから伸びて、梁をまたいでぶら下がっているロープの端を持ってモノを揺らしてみます。ここのテレビにくくりつけられたロープの端は、ループが作られていて、前作から何回も見てきた首つりの輪みたいになっています。最初はテレビの上に乗ればいいのかと勘違いしてジャンプさせて、そのまま下の穴に真っ逆さまに落ちたのは内緒です。
前作では時計もロープでつられて、首つりを連想させるシルエットになっていましたから、もしかしたらこのテレビも首つり死体があることを示唆する表現のひとつなのかもしれません。
モノはそんなテレビを穴に蹴り落として、ロープをつかんだまま上層階へ移動します。
上層階でもロープがくくりつけられたテレビを下の階へ落として、代わりにシックスが乗っていたテレビを、モノがいる階のさらにもうひとつ上へ引き上げます。これを上げてほしくて、シックスはずっとモノに「お~い!」と呼びかけていたんですね。ちょっとかわいそうと言うか、かわいらしいと言うか、いじらしいと言うか、モノに置いていかれたくないんだろうなという印象が残ります。
ここのテレビはエレベーター代わりの移動手段なんですよね。このテレビ、けっこうなスピードで上がってくるので、上まで来たときに勢いがついて、そのまま上に乗っているシックスが吹っ飛んでいきそうなんですけど、大丈夫だったのかな? ロープをつかんでたにしても、関節やられそうな勢いだったよ……?
上の階まで吹っ飛んでいったシックスに手を差し伸べてもらって、すっかりおなじみになってきた連携ジャンプで崩れた階段を乗りきります。このジャンプをするときのモノは、いつも以上のジャンプ力を発揮していると思います。ここの距離なんて、平時の2倍ぐらいは余裕でありそう。
こういう連携技を見ていると、すごくリア充の爆発力みたいな演出に見えてくるんですよね。
連携ジャンプで渡った先に、シックスが飛んできた場所があるんですが、配信時は右のほうになんかありそうと思って先に進んでしまって、左の部屋を調べ損ねてしまいました。どうやらあとで別データで行ってみたら、ファントムが一人いたようです。あとで気づいてここまで戻ろうとしたんですけど、もう戻れなくなっていたんですよね……。残念!
右の進行方向にあるのは途中で途切れた一本橋です。前回の森でも言っていたんですけど、落ちそうでヒヤヒヤする橋は、モノとシックスの道中至るところにあります。これもなんか意味がありそうなんですよね。
橋を渡った先で、今度こそ首つりを連想させる痕跡を発見しました。これもフォーマルな服装なんですよね。スーツは仕事着なので、モノとは違って成人した男性の存在を匂わせる演出だと思います。この部屋って、ドアが3方向にあるんですけど、廊下ですかね? だとしたら見つけてくださいと言わんばかりの死に場所ですね。
首つり現場を抜けると、大きな部屋の中央にポツンとテレビが置かれた場所に出ます。ここのテレビはめずらしくこうこうと光を放っています。テレビのノイズ音を聞いて、その光を浴びたモノはその場で頭を抱えて苦しみだします。しばらくテレビの前をウロチョロすると、モノの体から黒い粒子が出ていて、テレビに吸い取られていることがわかります。そしてヨロヨロとテレビ画面の前まで来ると、左手を画面に押し当ててチューニングし始めました。
電波のチューニング中に画面に映し出されるのは、オープニングで少し流れた長い廊下です。歪んで映った廊下を、コントローラーの L スティックでうまいこと調整するんですが、これが難しい! どうすれば正解なのか、いまいちよくわからないまま、スティックをコチョコチョと動かしていたらなんとかうまくいきました。
放送局の電波をうまいこと合わせると、周囲に衝撃が走って、モノが例のちょっと歪んだ廊下を走り出します。そしてオープニングの映像どおり、突き当たりには一つ目のレリーフ付きのドアが待ち構えています。ここはモノの動きもゆっくりしているし、さらに音の響きかたもちょっと違うし、空気中を漂う粒子も浮いて見えるので、すごく水中っぽいんですよね。
ドアの前まで来ると、また衝撃が走って、モノがテレビのなかから戻ってきました。そばでシックスがモノの体をつかんでいたので、彼女が現実に引き戻してくれたようです。テレビは白いノイズ画面をしばらく映し出したあと、電源が切れてなにも映らなくなってしまいました。
モノがテレビに引き寄せられて、シックスが引き寄せられない理由はよくわかりませんよね。モノはほかの住民と同じように、この都市に来たことで怪電波に毒され始めていたのかもしれませんし、ここで見られる現象は、モノとノッポ男のネタバレの関係を考慮すると、モノにしか見られない独自の症状である可能性もあると思います。ある意味、もうそうなることが宿命みたいな。
街の多くの人がテレビに魅了されているところを見ると、テレビの光を見てケロッとしていて、さらにテレビに引き込まれたモノを引き留めるほどの健常さを残しているシックスは、逆に異常であると考えられます。これの理由を説明する根拠は、モノの推測以上に判断材料がないので、前作のエンディングを見た人間としては、もはや「こういう女だから」という理由付けが一番しっくりきます。恐ろしい女だよ、シックス。
テレビに魅了されないというシックスの特徴は、ある意味、ショットガンで迷わずテレビを撃ち抜いていたハンターと共通と考えられるでしょうか。二人に遺伝的なつながりがある説もおもしろいかもしれません。
テレビが置かれていた部屋はなにもないので、窓からゴミをクッション代わりに着地して外へ出ます。ここのゴミの回収ボックスには、だれかのもとに届けられるはずだった小包と、画面が割れたテレビ、リビングチェアが積まれています。作品のテーマを掘り下げていくと気になるモチーフがそろっているので、逆に捨てていいのか不安になりますわ。
奥のゴミ箱にはテレビのみならず、ノッポ男がかぶっているものに似た中折れ帽も被せられています。テレビの怪電波のなかにいるノッポ男が、シックスに見捨てられたモノであることを示しているのかな?
ゴミ箱のそばを通り過ぎて、ずっと奥へ行こうとすると、ここも地面が割れて崖になっていることに気づきます。もちろん、しっかり落ちて死ねます。どうやらここの街は大規模な地割れで分断されているようです。どっかの北米大陸と違って、もはやだれも気にしていないようですけどね。
崖から落ちて死んだので、素直にゴミ箱を押しのけて、進行方向の右へ進みます。すると見えてくるのが、次のステージである学校です。『リトルナイトメア』シリーズは、日本の怪談の影響が感じられる要素がいくつかあるんですが、ここの学校の風景も、めちゃくちゃなじみ深い光景を見ているような感じがします。左のバス停のサインみたいなのとか、めっちゃ日本っぽいじゃないですか。
校庭の遊具のなかに、パンダごっこができそうなタイヤがあるんですけど、これだけはなんかめずらしい気がします。全国的に見るとこういう遊具は一般的なのかな?
奥のベンチにはおなじみの目の落書きがあります。でもこっちはまつ毛がないシンプル・バージョンです。逆にめずらしいかも。ベンチには本が積まれていて、通学カバンのようなものも置かれているので、勤勉なだれかがここで勉強でもしていたんでしょうかね。
校庭の隅に三輪車が置いてあって、そのそばまで行くと、子供のファントムが座り込んでいる姿が見えてきます。ファントムって近づかないとちゃんと見えないんですね!
しかし、三輪車って、小学生が遊ぶにはちょっと子供向けすぎますよね。これももしかしたらコミックスの伏線かなぁ?
入り口横のゴミ箱の上に新しい帽子が置いてあったんですが、場所が悪かったのか、何度かコントローラーのボタンを押しても反応しなかったように感じたので、配信では拾わずに先に進んでしまいました。あとで調べて拾えることを知って、別データで取りに行って、しつこくボタンを押し続けたらうまく拾えました。画面では小さくてよくわからなかったんですけど、茶色いボールのようなものの首が入る部分と目の部分をくり抜いて、かぶれるようにしたものだったみたいです。「サッカーやろうぜ! お前ボールな!」
学校は正面玄関から入ることはできないんですが、3階部分から白い布をつなぎ合わせたロープが垂れ下がっていて、これを登ってなかに侵入することができます。このロープ、前作の DLC でランナウェイ・キッドが最初にいた監獄から脱走するときに、先行する女の子が垂らしたものに似ています。下から上へ登る経路は、ランナウェイ・キッドの進行方向とは逆で、そのあとシックスが監獄に侵入したときの方向と同じです。あそこには学校と同じように、子供たちがいっぱいいました。
登りきって3階の窓から侵入しました。なかは想像どおり、荒れています。床に物が散らばり、なにかが缶のなかで燃やされて黒煙が立ち上っています。
ここに飾ってある肖像画は、最初に飲食店で見たものと同じだと思います。こうやって正面からまじまじと見ると、顔つき、とくにぎょろっとした大きな目が先生に似ているので、先生の若かりしころとかじゃないかなと思うんですけどね。学校とは関係ない飲食店にまで飾られているとなると、この地域でそうとう有名なマドンナだったか、権力者の娘とかだったんじゃないかな?
廊下にはこれ以外にも肖像画がたくさん飾ってあります。上の画像の左上のモノクロ写真は、ハンターの森にあった沼みたいなところで、桟橋から下をのぞき込んでいる子供じゃないかと思っていたんですけど、あとからよく調べたら学校のロッカーの上に乗っているただのいじめっ子だったらしいです。な~んだ。
その向かいの壁に飾られているのも、このあと出てくるいじめっ子が仲よく二人並んだ写真です。正体を知るとあまり飾りたくなくなる写真ですね。
壁から落ちている肖像画は、前作の DLC でランナウェイ・キッドが迷い込んだレディのアトリエで、ナゾ解きに使われていた肖像画のひとつです。
この人もだれなのかわかりませんね。学校の関係者かな? 学校に飾られているほうの絵は、もともと掛かっていたと思われる場所に穴があいているので、絵に小さな穴をあけた覗き穴みたいに使われていた可能性もあると思います。
壁に盛大に穴があけられた部屋に入ると、ものすごい重ね具合の二段ならぬ四段ベッドが並べられています。もしかしたら寮みたいな部屋だったのかな? モウの監獄が豪華に見えてくるお部屋ですね。
窓際のチェストに人形が置かれています。隣のガラス瓶はのちほど先生の実験室で見られるものですね。なぜここにあるのか考えると不穏です。
人形について、配信では前作のレディが DLC で大事に抱えていた赤ちゃんの人形を思い出すと言っていたんですが、このサイズに飾りがないシンプルさは、むしろ管理人が隠れ家で作って並べていた人形のほうが近いかもしれません。いずれにせよ、不気味です。
廊下の突き当たりには目の部分がくり抜かれた先生の大きな肖像画が飾られています。左右にあるのは、さきほど床に落ちていた肖像画と同じく、レディのアトリエでナゾ解きに使われていたものです。とくに奥にある肖像画は、前回の配信で話したとおり、頭髪のシルエットからモノの素顔じゃないかと疑っていました。逆に手前にある歪んだ顔がだれなのか、皆目見当がつかないんですよね。
壁のレバーを引くと、廊下の明かりが落ちて、先生の目から光が落ちるようになります。目にあけられた穴が大きな黒い目に見えて不気味でしたが、これでその目から怪光線を放っているように見えて、もっと不気味になります。
絵画の向こうに光源があることがわかったので、ベッドがあった部屋からボールを持ってきて、絵画にぶつけて落とします。けっこう大きな穴が出てきました。穴をくぐり抜けるのって、『不思議の国のアリス』でウサギの穴に落ちるみたいに、異世界へ迷い込むことを示唆するような表現でもあったりするんですよね。ここから先の学校は、ある意味、不思議の国なのかもしれません。
穴をくぐり抜けた先は、小さな密室でした。脚の長いイスが1脚だけ置かれていて、ロープがくくりつけられています。そばにはハンマーやノコギリなどが入った箱が置かれているので、なんか拷問の匂いがプンプンします。光が真上からまっすぐ注ぐ1脚だけのイスは、エンディングのモノの姿をどことなく彷彿とさせます。
手前には持ち主がいなくなったことを匂わす、前作からおなじみの靴も脱ぎ捨てられています。壁にはシックスの監禁部屋と同じ、なにかを数えていたらしき痕跡も残されていますね。40日ぐらい、ここで監禁されていたのかな? ここは出口がない密室なので、壁にあいた穴が出入口だったのかもしれません。なんとか脱出したい一心で、床に落ちているスプーンで壁を削ったとか……? そもそもこの壁の穴、だれかを閉じ込めたあとになかをのぞくために設けたのか、閉じ込められた人の脱出経路だったのか、どちらなのかも気になります。
最初は気づかなかったんですけど、ここのイスの足下は黄色く汚れていて、イスのそばに落ちている白い布は男性用下着のブリーフらしいです。のちのち出てくる犬の落書きなどと合わせると、どうも失禁の表現らしいと推測できます。ただ、子供のお漏らしにしても、なんの意図があるのか、ほかとうまく結びつけられないんですよね。40日にしろ、40時間にしろ、ずっとこんなところに閉じ込められていたら、そりゃ小だけじゃなくて、大もモリモリ漏らしますよね。
ここは出口がないんですが、歩きまわっていると中央の床板が浮いて緩くなっているのがわかるので、その上で二人仲よく跳びはねていると床板が抜けます。床下はゴミだらけなんですが、二人の背後に割れた丸い鏡があるのが気になります。床下はモウの冒険でも何度か通った場所ですし、割れた鏡と言えばモウの主のレディですからね。
配信が終わったあとに、取り逃した収集要素を回収するために別データでもう一度プレイしていたら、同じ床板の上で跳びはねる場面で、シックスが画面外に飛び出るほど高く跳びはねる現象に遭遇しました。その跳躍力、おそろしい子!
床下を進むと通気口に出て、そのまま学校の別の部屋にたどり着きました。ここからが本格的な学校ステージ、つまり問題のいじめっ子たちがひしめいて授業をしていたり、していなかったりする場所です。さっそく目の前でロッカーが倒れていて、不吉です。
ロッカーを乗り越えた辺りで、廊下の角を曲がった先にある部屋から光が漏れていることに気づきます。その光で浮かび上がるのが、首を長~く伸ばした先生のシルエットです。異常な存在がこの先待ち構えていることを知らせるいい恐怖演出だと思います。
先生のシルエットを浮かび上がらせる光はほのかに明滅しているので、おそらくテレビの光じゃないかなと思うんですよね。先生もテレビ中毒になりかけていたのか、それともシックスと同じように中毒症状を示さないタイプで、たんなる娯楽として見ていただけなのか、どちらなのか気になります。
首が伸びると言えば、日本で有名なろくろ首だと思います。先生の元ネタは日本の怪談じゃないかな? ろくろ首について元ネタを調べてみたら、西洋でそれらしい記述があるのは1865年に発行された『不思議の国のアリス』で、キノコの片側を食べると周囲を見下ろせるほど首が伸び、卵を狙いにきたヘビと間違われて鳥に襲われてしまったので、キノコのもう片方を食べたらもとに戻ったというくだりがあります。
長く伸びた首はヘビに間違われることが多く、強いて言うなら、世界の神話でヘビに水の意味合いが込められていることが多いのと同じく、水を意識したなんらかの象徴である可能性もありそうです。前作のモウは海を漂っていたし、DLC のグラニーがいた深淵は水没していたし、モノとシックスもここに来るまでに海を渡ってきたから、もしかしたらなんか関係あるかな?
ただ、ろくろ首には首が伸びるだけでなく、首がすっぽ抜けて頭部だけ浮遊して飛び回る「抜け首」と呼ばれるパターンもあるので、その起源には、戦争や刑罰の際に打ち首にする慣習が深く関わっている可能性もありそうです。逆に首がないっていうと、壊れたいじめっ子たちのほうですけどね。あと、女の魂が体から抜け出して、首から上の頭を超自然的な力で形作って男を追いかけるという怪談が多かったりもするので、夢遊病と関連づけられているんじゃないかという分析もあるそうです。そう言えば、この作品のタイトルは悪夢ですからね。先生って、けっこう作品の根本的なテーマに絡んでいるキャラクターなのかもしれませんね。
ろくろ首について歴史をさかのぼると、中国の六朝時代の説話などを集めた『捜神記』という書物に、呉の将軍に仕える下女の首が伸びたという話が書かれているそうです。六朝はおおよそ3~6世紀のこと指すらしいので、ろくろ首の起源としては中国で、その話が日本に伝来して、国内で独自に作られていったという感じでしょうか。一部では「飛頭蛮」という中国の南にある国の異人はみんなろくろ首だったという話が残っており、夜に耳を翼のように使って頭部を飛ばし、虫を食べて、朝に首から下の体のもとに帰ってくるという習慣があると語られていたことがあったそうです。もしかしたら先生みたいな首をした人種は、ここら辺ではめずらしくなかった可能性もありそうです。
日本で有名なのは、江戸時代の怪談『曾呂利物語』で、後世の怪談に大きな影響を与えました。こちらは女が寝ているあいだに無意識に首を飛ばす夢遊病パターンです。ろくろ首は大半が女性で、若くて魅力的な下女、あるいは商人の娘などの資産家の血筋である設定も少なくありません。落語にもなっていますが、夢遊病以外によく知られているパターンは、首の問題を了承のうえで婿をとったものの、夜に首が伸びているのを実際に見られて、夫に逃げられてしまう話です。落語は逃げ出した夫に対して「奥さんが首を長くして待ってるよ」とダジャレの助言をしてオチをつけます。先生も、町外れの飲食店に肖像画が飾ってあるところを見ると、美人で有名な資産家の令嬢だったけど、この首が災いして男に逃げられたのかもしれません。
「ろくろ」の名前の由来はよくわかっていません。そのまんまだと土器や陶器を作るときに使う回転装置の名前で、井戸の桶を引き上げる滑車も同じ名前なので、クルクル回すことがなにか心理的に絡んでいる可能性があります。滑車は前作から引き続き登場している定番のギミックですしね。一説には理容院の看板みたいな螺旋模様をクルクル回すと目の錯覚で伸びているように見えることが、ろくろ首の名前の由来に関連していると言われています。そう言えば、テレビのなかの廊下もちょっとねじれているし、道中落ちている落書きには、おなじみの目に混ざってグルグル渦を書いただけの絵もありましたね。頑張ってここまで解釈をつなげれば、先生の首も、たんなる落書きも、なにか永遠に続くものを象徴していると見ることもできるかもしれません。
先生がいた部屋は扉が閉められてしまったので、あとを追うことはできません。仕方がないので光が漏れている右の部屋へ進みます。天井からぶら下げられているのは、鳥のおもちゃが入ったバケツです。なぜこんなものがぶら下がっているのかは、のちほど痛いほどわかるようになります。
ところで、これ系の鳥のおもちゃ、今作の要所要所でめちゃくちゃ見るんですけど、なにか意味があるのかな?
となりの部屋に入っていくと、1枚だけ床板がちょっと浮いていて、その前にボールが置かれています。無邪気にそれをつかもうとすると、床板を踏んだことで前方の天井から勢いよく重たいバケツが落ちてきます。頭にクリーンヒットしたモノは吹き飛んで死んでしまいます。
配信中に何度かここで死んで気づいたんですが、バケツを食らったとき、モノの頭部からなにかが割れた破片が飛び散っているんですよね。これって、このあといやが応でも会うことになるいじめっ子たちと同じ、頭部を構成する陶器みたいなものですかね? ということは、モノも人形なのかな?
以前からシリーズ作品通して、登場人物がみんな人形っぽいという話は書いてきました。呪術などのなんらかの方法で人形の体に魂が宿って、生物のように動き出している物語と考えると、ノッポ男が魂で、その魂の欠片から生まれ出たのがモノで、モノが生まれた森には獲物の剥製や人形を作るハンターがいるという流れや、前作でレディが自分の子供のように慈しんでいた赤ちゃんの人形たちに加え、管理人がせっせと作っていた人形がモウにはあって、その管理人が拠点にする隠れ家の近くでランナウェイ・キッドを含む子供たちが育てられていた点なども、いろいろ線でつなげやすくなってきます。レディのアトリエにいた影のこどもたちは陶器の仮面以外実体がなさそうだったので魂、今作でモノが集めているファントムも魂っぽいですよね。レディは似た姿の陶器の人形があるし、当人にも人形っぽさがちょっとあったけど、シックスはどうなんだろ? 人形なのかな? シックスだけ人間だと、それはそれで人間の残虐さの表われっぽくて、物語の深みが増す気がします。
先を進むとさらに大きな照明がぶら下がっていて、そのそばに、この照明の一撃を食らって昇天したと思われるいじめっ子の死体が転がっています。この先の荒れ具合をほのめかしているようです。頭部が粉々に割れていて、この破片をモノが踏むと、ちゃんと陶器のような無機質な音がします。さっきのモノの死亡時の演出と見比べると、モノもいじめっ子とたいして変わらない存在っていうメッセージにも見えてくるんですよね。今までいろんな不気味さをした登場人物が出てきましたけど、いじめっ子たちほどわかりやすく人外の人形のデザインをしたキャラクターも初めてだと思います。
いじめっ子たちが身を隠しながら逃げる気配を感じつつ、罠をかわして廊下の奥に進みます。ここの廊下の突き当たりにあるサルのおもちゃは、モウにたくさん配置されていたオブジェクトのひとつです。さっき書いた鳥の木のおもちゃもモウにあったんですけど、なんだかんだこの学校とモウとの共通点は多いんですよね。
もっと先に進むと、色違いの鳥の木のおもちゃがおとりになっている罠も見つかります。ここはさっきいじめっ子がやられていたものと同じ照明が降ってくる場所ですね。目の前の木の板の凹み具合から、何度もここで罠が発動していること、そしてその罠の衝撃が致命的であることがわかります。
ここの照明の罠をかわすと、シックスがズイズイ先行してテーブルの上に登ります。モノがもたもたしていると手招きするほどです。学校に入ってから今まで、シックスが先行する場面があまりなかったので、ここになにか意味があるのか考えていたんですけど、よくわかりませんでした。もしかして、罠に怒っているのかな?
登ったテーブルの上には、赤いクレヨンで殴り描きされた絵があります。これもよくわからないグルグルの渦の落書きかな? モウの落書きは白や黒の彩度が低い色が多くて、たとえ鮮血の色でも、こう明るい色のクレヨンが並んだ健康的なお絵描きの風景は逆に新鮮ですね。モウではノームたちが黒い石炭らしきもので落書きしていましたし、ここ学校では白いチョークで落書きしているいじめっ子が多いようです。白黒の対比もなにか意味があるのかな?
先に進んでいくとロッカーが倒れてきて、モノがなかに閉じ込められてしまいました。一人残ったシックスがいじめっ子に取り囲まれて、頭が割れた女の子にとらえられてしまいます。そしてそのままどこかに連れていかれてしまいました。
どうでもいいけど、頭が陶器みたいに割れた人形がそのまま動いて襲ってくるって、めちゃくちゃ怖くないですか? もっとリアルな一人称視点のゲームだったら、泣いて発狂しながら実況することになっていたと思います。
なんとか暴れてロッカーから飛び出したモノは、ロッカーのそばに落ちていた金づちを拾い上げて、背中を見せてこちらに気づいていないいじめっ子の頭に振り落とします。いじめっ子の頭は粉々に割れて、倒れて動かなくなってしまいました。普通に考えたら死ぬと思います。ただ、さっき頭が割れた女の子たちがシックスを羽交い締めにしていたから、この子ももしかしたら時間経過で起き上がって普通に授業を受けだしたりするのかな……?
モノはこれまで、罠にかかったり、うまくかわしたりしながら廊下を進んできたんですが、シックスを連れ去られたことで金づちという凶器を振り回して反撃に出るようになります。相方を奪われた男が、その報復、あるいは奪われたものを奪い返すために暴力を振るい始めたと解釈できそうです。
金づちを引きずって、道中の罠に相変わらずかかったりしながら、廊下をばく進するモノ。途中でいじめっ子たちも罠に引っかかって自爆していたりするので、もう敵味方関係ないどんちゃん騒ぎになっています。彼らにとっては、生死の重みなど関係ない、ただの遊びに過ぎないのかもしれません。
金づちを持って進んだ先の部屋に机とイスが積み上げられていました。ここら辺の光景も、日本の学校っぽいインスピレーションがあるように感じられるんですよね。部屋の奥から走ってきた子どもは、モノが来るまでカエルの内臓をいじくり回していたようです。子どもが生物の臓物をいじくり回している不気味さや狂気の演出なんですが、カエルの解剖なんて昭和の義務教育でやってたことなので、日本の学校との妙な親和性の高さを感じます。
金づちを捨てて、ドアののぞき窓から出た廊下は、ちょっと静かな雰囲気でした。配信では見逃していたんですが、ここの廊下のロッカーはひとつだけ扉がちゃんと閉められていなくて、開けるとなかにファントムがうずくまっています。ここで気づいたんですけど、ファントムに近づくとモノもテレビの映像みたいに乱れるんですね。共鳴していると考えると、モノもファントムもやっぱり怪電波由来の魂みたいな存在なのかな?
このファントムがうずくまっているロッカーにはネズミがぶら下げられていて、電波塔らしき塔の落書きも飾られています。ネズミは前回、ハンターの森で狩られていたほか、前作のシックスがモウで飢えに苦しんで踊り食いした獲物でもあります。あと、向かって右のロッカーは、扉が半開きになっていてなかがのぞけるんですが、ここにオシッコをしている犬の絵が飾られているんですよね。小学校の低学年ならお漏らしする子がいてもまだおかしくないけど、この物語ではなにを意味しているんだろ?
ロッカーが並べられた一角を過ぎると、エレベーターがあるんですが、南京錠みたいなものでロックされているので、使うことができません。カギを探してこないといけないようです。
少し進むと先生がいじめっ子たち相手に授業をしている部屋まで来ました。いじめっ子たちの半数は頭が割れていますが、さっきまでのやんちゃぶりがウソのようにおとなしく授業を受けています。おそらく先生を恐れていて、その恐れによる抑圧の反動で普段やんちゃしているみたいな話なのかな?
しばらく物陰に隠れて授業の様子を見ていたんですが、しゃがんでいなかったのが悪かったらしく、先生が振り返ったときに存在がバレてしまいました。透視ができるだと……!? 先生が声を上げると、後列の座席に座っていたいじめっ子たちがいっせいに走り寄って来て、モノを捕まえようとします。完ぺきな先生の子分です。
ビックリして隣の控え室のような小部屋まで逃げ込んで、チェストの上に登ったら、いじめっ子が追ってこられなくなりました。しかしそこからどこかへ逃げられるわけでもなく、けっきょくはこのままおとなしく捕まる以外、道は残されていないようです。いじめっ子たちはモノより足が速いので、見つかった時点で終わりなんですね。
前回の失敗から勉強して、身をかがめてこっそり教室を通り抜けることにしました。先生の号令がないと生徒たちも動けないのか、すぐ後ろをモノが通ってもお構いなしです。
奥にある小部屋に出ました。こっちも教室の控え室みたいな、書類置き場になっているようですね。棚の上にお目当てのカギが置かれています。
棚の影に小さな絵が飾られています。脚の長いイスに子どもが座っている写真のようです。角度は違いますが、子どもがイスに座っているように見えると言っていた写真がハンターの家、それもシックスの監禁部屋に降りる階段の横にもありました。
足がまだ床につかないイスに座ると言えば、エンディングのモノを連想しますし、先に見た監禁部屋もちょっと怪しく見えてきますね。落ちているブリーフからすると、あそこに閉じ込められていたのは男の子なんじゃないかという気がします。あるいは、シックスみたいな女の子が捕えられていて、そこに男の子か男性が一緒にいて、下着だけ脱ぎ捨てていったか、もともとブリーフしか着用していなくて、テレビの怪電波のどうこうで、街の住民と一緒に肉体が消えてしまったかのどちらかですね。
棚の上のカギを取ろうとよじ登ると、棚のバランスが崩れて前に倒れてきます。今までありそうでなかった暗黙の了解が崩れて、見事に圧死してしまったモノ。やり直してうまく棚を避けると、今度は音を聞きつけた先生が首をのばして部屋を調べに来ます。先生の首は体から離れることがないので、夢遊病パターンのろくろ首とはまたちょっと勝手が違うかもしれませんね。じゃあ、新婚で旦那に逃げられた令嬢パターンのほうかな?
部屋を一通り調べて、箱に隠れたモノに気づかなかった先生は、あっさり諦めて教室に戻っていきました。扉が勢いよく閉まった衝撃で、部屋の隅にあった通気口のフタが開きます。
通気口は教室の棚につながっていました。先生との距離がめちゃくちゃ近いので、そこで頭を出せるモノの度胸に感心します。先生は長い定規のような教鞭を持って、机を叩いたり、いじめっ子の顔をのぞき込んだりして圧をかけています。そう言えば、さっきの部屋の壁に教鞭らしき棒が掛かっていましたし、似たようなフックが最初の監禁部屋にもありましたね。
先生が片っ端からいじめっ子をいじめているあいだに、モノは忍び足で教室からの脱走を図ります。教卓の上に、教科書に混じってかじられたリンゴが置かれています。リンゴってキリスト教では失楽園の禁断の果実として描かれることが多いんですが、なにか関係あるかな? ろくろ首がヘビに例えられるなら、イヴをそそのかした悪魔みたいな解釈もできますし、アダムの最初の妻リリスもヘビとのつながりが強いので、アダムと別れたリリスは、夫に逃げられるろくろ首の女とも関連して考えることができると思います。捨てたのか、捨てられたのかわからないけど、先生には過去に重要な男がいたのかな?
どういう経路で逃げるべきか、最初わからなかったので、何度か先生に見つかったんですが、伸びた首が迫ってくる前に最初の棚に逃げ込めば、先生はすぐにモノのことを忘れてくれました。意外とサッパリした性格の先生ですね。いじめっ子たちよりよっぽど付き合いやすいです。しかし、そんな脳みそで教員とは大丈夫か……?
うまいこと教室の入り口まで忍び足で来ましたが、最後の最後にバレてしまいました。先生の奇声が聞こえたので、いじめっ子に追いつかれる前にエレベーターまで走ります。エレベーターはすぐに閉まって、上階へと移動を始めました。
エレベーターで上に行っただけなんですが、先生たちは追いかけてくる気配がありません。やっぱりサッパリしていますね。先生にとっては授業がなによりも大事で、モノが襲われたのは教室を走り回ってその授業を邪魔したせいかもしれません。
上の階はエレベーターホールに下駄箱が設置されています。靴は今まで山盛りでてきましたけど、ここの靴は色とりどりでなんか普通の光景に見えます。健康的って言うと表現が変かもしれないけど、病んでないっていうか……。手前に1足だけあるのは、教師のものでしょうか? ここで靴を脱ぐっていうのも、日本っぽい習慣ですよね。この奥は、下の教室とはまた扱いが違う部屋みたいです。
エレベーターホールから隣の部屋に進むと、大きな黒板がある部屋に出ました。しかしそこは教室ではなく、三角帽をかぶった男の子が、一人必死にチョークで落書きをしていました。
男の子に近づくと、モノに気づいてこちらに飛びかかってきます。しかし首にロープがかけられているので、一定以上距離をとればつかみかかられる心配がありません。男の子は何度も何度もモノのほうへ飽きもせずに走ってきて、ロープの反動で転ける挙動を繰り返します。転けているあいだにモノは近くにあった鉄パイプを拾い、男の子の頭をかち割ります。二度目のプレイで試してみたんですが、ここの男の子は勢いをつけさせて、盛大に転ばせれば隙が多くなるので、殺さなくてもそのあいだに鉄パイプを拾うことができます。
ここはなかなかナゾが多い描写だと思います。男の子が一心不乱に描き殴っている目は、シリーズ通しておなじみのモチーフですし、シックスが監禁部屋で描いていたのと同じ、電波塔のようなものも中央に描かれています。モノの足下に描かれている人物は、モウの管理人に近い気がします。あるいはノッポ男の上半身かなという気もするんですが、管理人との接点という点では、男の子がかぶっている三角帽も気になります。これは前作のノームのオマージュでしょうね。重要なのは、物語上の接点はあるのかというところです。
男の子が置かれている状況もちょっと気になります。一人だけ首を縄でつながれて、黒板下の留め具につながれています。まるで犬扱いなので、普通に学校の体罰と考えると酷なほうだと思います。前作のノームは、DLC のランナウェイ・キッドの物語から見ると、監獄から逃げ出した子供たちが、モウの主のレディに捕まって魔法を掛けられたことで変身する成れの果てみたいな存在でした。あれも懲罰と考えると、ノームの三角帽はお仕置きされている者の目印だったりするのかな……?
まるで犬みたいって書いたんですけど、失禁の表現がときおり見られると書いたなかでも触れたとおり、犬がオシッコしている落書きがところどころにあるんですよね。この子、その犬なのかな? 一人だけ隔離されて、拘束されている状況って考えると、最初の監禁部屋の状況にもちょっと似ていますし、こんな状況で長時間放置されていたら、そのうちどんな人でも尿意も切羽詰まってくるでしょうから、お漏らしぐらいしそうな気がします。でも、男の子だったら下着が汚れないように立ちションもできるかな? 下着を汚させるっていう、心理的な虐待というか、辱めがあったような描写だと思うんですけどね。
鉄パイプを拾って、また『シャイニング』方式でこの部屋を抜けます。男の子が倒れている足下に描かれているのはテレビかな? 手前に落ちている紙の落書きは、管理人っぽさがあります。下からのアングルで書かれているので、たぶん子どもが書いた大人の絵だと思うんですよね。ただ、そのアングルをちゃんと絵にして描き出すのは、子どもの脳にはまだ難しい気がするので、じゃあだれが描いたんだろっていうところを考えていくと、どこか不気味さが漂ってきます。
ドアを破った先は物置になっていて、壁の棚に三角帽が並べられています。こう予備があるってことは、壊れても安心だし、複数人送り込むことになっても大丈夫な品ぞろえってことですよね。ちなみにこれ、モノの新しい帽子コレクションに加えられるかと思ったんですが、当たり判定がありませんでした。
三角帽がきっちりそろえられているところと、首のロープをくくりつける金具がきちんと壁に設置されているところ、そもそもこの階に通じるエレベーターにカギがかけられていたところを見ると、子ども同士が遊んで残酷な犬ごっこになったという流れは、ちょっと考えにくいかなという気がしています。ここは最初からこれをする用途で用意されている環境なので、おそらく学校のなかである程度権限を持っている大人じゃないと、この犬ごっこは実現しないと思うんですよね。やっぱりこれは先生から与えられている懲罰でいいんじゃないかな。
三角帽が並べられた物置から、通気口を通って奥の部屋へ行くと、そこは屋根裏でした。穴から飛び降りたことで周りに置かれていたビンを倒してしまったモノは、大きな音を立ててしまいます。それを聞きつけて、下にいた先生が首を伸ばして様子を見に来ました。こういうとき、首が長いと便利ですね。しかししばらく隠れてやり過ごすと、あっさり諦めてくれます。やっぱりサッパリしてますね。
先生がすぐに諦めてくれるのは、下でなにか作業に没頭しているからのようです。具体的になにをしているのかは、下をのぞいても動く影しか見えないので、よくわかりませんが、なにか教鞭でペシペシ叩いている音が定期的に響きわたっています。たまにか細い悲鳴が混ざっているので、どうやらいじめっ子に制裁を加えているようです。昭和の日本から連想すると、典型的なのはおしりペンペンですかね? 上で放置系のお仕置き、下で体罰系のお仕置きと、フルコースをご堪能の先生です。
下の部屋はちょっとだけしかのぞけないんですが、書類棚が並んでいるので、先ほど下の階でカギを取った教室横の控え室で間違いないようです。あそこは壁に教鞭をかけるフックがふたつあったので、どうやらここは授業以外でその教鞭を振るう部屋になっているみたいです。最初の監禁部屋も小部屋だったし、なんかここの学校の隙間に設けられた小さな部屋はみんな怪しく見えてきますね。
なにかをリズミカルに叩き続ける先生の影を背景に、梁を伝って、だれかが垂らした白い布をよじ登って上へ進んでいきます。この白い布って、学校の入り口もそうだし、モウでは監獄から子どもが逃げるときに使われた手段なので、ここも脱出経路確保のためにだれかが垂らしたんだと思います。残念ながら、一番下の部屋には届かないので、あそこに連れ込まれてもこれを使って逃げることはできませんけどね。
さらに上の屋根裏へ移動します。ここでめずらしい灰皿を発見しました。吸い殻がたくさん入った灰皿はモウでたびたび見られたオブジェクトですが、今作はあんまり喫煙者の気配がありませんよね。白い布を垂らして、ここに身を潜めていた人は喫煙者だったのかな?
奥にはおなじみの目の落書きと、人形が置かれています。見えにくいんですが、2体ペアで角に座り込んでいます。手前の頭部は、ここでよく見ると書いた鳥の木製のおもちゃに似ています。奥にいるのはモウでよくみた頭が細長いモデルだと思います。ペアの人形って、前作の DLC でよく見たんですよね。これも二人組のだれかが、仲よく地獄みたいな場所から逃げだそうとした物語を匂わせているのかな?
先に進むと本がたくさん並んだ図書室のような場所に出ました。このスライド式のハシゴとか、床に敷かれた明るい暖色系のカーペットとか、めちゃくちゃランナウェイ・キッドを操作して訪れたレディのアトリエっぽいですね。本は先生とレディを結ぶ共通のオブジェクトです。
棚の一角に新しい帽子がありました。コレクションが増えるのはめちゃくちゃ久しぶりな気がします。ブリキ缶に覗き穴を空けたみたいなシンプルなデザインです。しばらくモノの顔が見える帽子をかぶり続けていましたが、ここからまた顔を覆うマスクみたいなタイプを着用することにします。
図書室は首を伸ばした先生がよく襲いかかってくるエリアです。追いつかれないように走ったり、飛び移ったり、隠れたりしながら進んでいきます。ここでモノが飛び移る本の塔は、本好きの所業とは思えない積みかたですね。なんでこんなことになったんだろう?
ある程度進むと先生は満足したのか、モノより先に奥の部屋へと消えていきました。この部屋へは調べ物をしにきたのかな? そして手ぶらだったけど、ほしかった情報が書かれた本を見つけて満足して出て行ったのか、あるいは、ただたんに右の部屋へ移動していた最中に、モノが立てる物音に気づいて邪魔者を排除しようとしていただけなのかな? いずれにしても、あんまり真剣にモノを追いかけようとしていないんですよね。気づいたからある程度追いかける、でも深追いはしないみたいな程度で終わるサッパリ先生です。
ここの部屋の端に、紙みたいな白い端切れが転がっているんですが、これって最初にこの都市の裏道で、空から降ってきているのが見えた布か紙みたいなものの正体かな? けっきょくあれがなんなのかわからないんですよね。もしこれが正体だったら、本から抜け落ちたページの切れ端ってことになります。この都市の物語自体が、本からこぼれ落ちてテレビの映像に映るものみたいな、メタ的な示唆かな?
奥は開けた階段の間になっていました。この階段の構造、床に敷かれた絨毯、積み上げられた本、やっぱりどことなく、レディの部屋やアトリエを連想するんですよね。先生って、レディの原形なのかな?
壁に掛けられた絵を見ていきます。壁に残っているのはどちらもいじめっ子の写真ですが、1枚壁から落ちて見えなくなっています。そしてその絵に放尿するようなワンコの絵がまた描かれています。あるいは塗りつぶされているのは大だからかな?
階段の正面に掛けられていたらしき時計も床に落ちています。学校の校庭から見えた時計とは時間がずれているようです。まあ、こんな街じゃあだれも時間なんて気にしないでしょうしね。
左手にかかっている壁の絵は、奥がシックスに似た女の子で、手前が白いシーツのオバケみたいと言っていた肖像画です。最初の飲食店の壁に、若かりしころの先生みたいと言っていた肖像画と並べて飾られていたものですね。今度は先生とはちょっと違う女の子と並べられているのは三角関係の示唆だったりして……? 頭からなにかをかぶっているみたいっていう特徴から考えると、一番近いのはハンターかな?
2階の左側の手すりに、ファントムがいました。隣には首つりに使えそうなロープ、そして勢いづけのお酒の痕跡と見られるビンが並べられています。手すりが壊れているのも、なにかあったような不穏さを強調しています。ここでもワンコごっこのイジメがあったのかな?
2階右側の部屋は遊び場のような場所になっています。大学のフラタニティとかソロリティみたいな、クラブのメンバーが集まる部屋っぽい雰囲気がありますね。位置的にも教室から静かな図書室を抜けた先にあるし、あんまり子どもが集まってドンチャンする部屋っぽくないんですよね。むしろある程度成長した連中がひっそり隠れてお酒あおりながら遊ぶ社交場みたいな印象を受けました。
まあ、そんなことはどうでもよくて、入ってすぐ奥に大きなチェス盤があって、床にカードが転がっていて、壁にはダーツもあり、棚には木製の剣が置かれていたりもします。楽しそうな雰囲気ですが、チェスの駒にいじめっ子の死体と思われるものがロープでくくりつけられているのがちょっと気になります。頭に王冠が載せられているので、キングってことでしょうね。えらく無残な王様です。このロープでグルグル巻きにされるのって、最初の拷問部屋のイスみたいですよね。
扉の後ろに隠れて見えませんでしたが、チェス盤のそばまで行くと先生の似顔絵を的に貼ってダーツで遊んだ形跡が見られます。やはりここは先生があまり出入りしない子供の遊び場なのかな? 大学ぐらいになるとこういう部屋も敷地内にありそうですけど、小学校ではめずらしい気がします。
チェス盤を通り過ぎると、壁際に世界地図のようなものがつられています。その上にはシリーズ作品おなじみの目の落書きが赤色で描かれています。これってやっぱりこの街がある島か大陸の地図でしょうか? 現実だとヨーロッパあたりが一番近いかなという感じがしますが、やっぱりピッタリ一致する土地は現実にはないようですね。強いて言うなら目の瞳の部分がある真ん中の土地は、川かなにかで隔てられた形がざっくり三角形で、瞳の位置からしても、地図全体の中央にある点からしても、重要な場所なんじゃないかなと推測できます。瞳のレリーフは人を石化させる強烈な光を放つ演出もあったので、まつ毛は光の表現かなとも前作のプレイ日記で話していました。今回みたいに赤色で落書きされていると、余計に日の丸の太陽光みたいな印象を受けますね。
地図はロールスクリーンで、モノが下のフックにぶら下がって引っ張ると、クルクルと上に巻き取られていきました。その代わりに出てきたのが壁に描かれたチェスの駒の配置です。チェスの知識がないので、配信中は適当なことしか言ってなかったんですが、黒の中央がキング、その正面、黒のキングに巻きつけられているいじめっ子の死体と向かい合っているのが白のキング、右側にあるのが白のルーク、左側にあるのが白のクイーンでしたね。
キングは自分のまわり8方向に1マスだけ移動できます。両キングのあいだに空いた1マスだけの空間がいい感じの緊張感を生んでいます。ルークは遮る駒がない限り、縦と横の十字方向に移動できます。ということは次のターンで黒のキングを取れますね。クイーンはルークと同じく、遮る駒がない限り、縦横の十字に加えて斜めにも移動することができます。ということはこれ、チェックメイト状態なのかな?
……と思って実際の盤上を見に行くと、ここに描かれていない黒のナイトとポーンも端に配置されているんでした。黒のナイトはクイーンを取れる位置にあるので……と考えていっても、どっちにしろ白のルークで黒のキングが取れるんですね。じゃ、どっちにしろ黒が詰んでることに変わりはないのかな。
とりあえず、ここのナゾ解きは黒を追い詰めればいいみたいですね。
チェス盤の模範解答を通り過ぎてさらに奥へ進むと行き止まりでした。窓際のテーブルには白のクイーンが置かれていて、窓の外に煙突が見えます。煙突はモウの頭頂部にもあり、その頭頂部のシルエットはここの電波塔にも少し似ていました。
このテーブルのクイーンは外からの光が当たってことさら白く輝いているので、陶器肌のレディとかと関連づけて考えられるかな? そう言えばキングにくくりつけられていたいじめっ子は男の子でしたね……って、キングだから当然か。追い詰められている黒は男なのかな? 黒の負けが避けられない盤面ですが、黒がもがけば詰む前にナイトで白のクイーンを取ることもできそうなんですよね。そうすると今度はルークはだれなんだって考えになってきますけどね。ルークは砦みたいな塔とか城とか戦車とか、ああいうイメージらしいんですけど、そんなキャラクターなんていたっけ……? 強いて言うならモウそのものが一番ルークに近そうですよね。あとは、白のキングはだれだろ?
ここのチェスの駒は土台が全て同じで、上の頭だけすげ替えて役職を変えていきます。これって、どの役職ももとはみんな同じで、後付けの与えられた肩書きを演じているだけの遊びであることのメタ的な示唆だったりもするのかなぁ?
クイーンの駒以外では、チェスの模範解答の横に見知らぬ男性と女の子のいじめっ子の肖像画が飾られています。この男性、本当にだれなのかわかんないんですよね。肖像画はどちらも赤い液体を投げつけられたような汚れが付いているんですが、こちらの男性の顔には口ひげも描き加えられています。こんなヒゲの人、いたかなぁ? 蝶ネクタイをしているし、このお手入れした口ひげは、身分がそれなりにいい人だと思うんですよね。
この部屋のいじめっ子の肖像は、どちらもノームに似た三角帽をかぶっています。さっきのワンコみたいにロープで縛られていた男の子の推論から言うと、自分が属している社会のトップに立つ女性に刃向かってしまったから、その罰を受けるときにかぶらされていると解釈できるんですが、だとしたらこの肖像画も、罰を受けているときの惨めな姿をあえて形に残す戒めですかね? あるいは、ここはノームたちが隠れ住んでいた動力室みたいな部屋で、落ちこぼれの落第生たちが集まって遊ぶための部屋なのかな?
壁に描かれているとおりに白の駒を配置すると、右の壁に設置されている照明がつきます。そのライトにぶら下がると、部屋の奥に仲よく並んでいた棚が開いて、奥の隠し部屋に入れるようになります。この仲よく肩を並べる棚、ちょっと双子のシェフを思い出しますね。あと、この壁の照明が扉のスイッチを兼ねている機構は、前作 DLC のランナウェイ・キッドで侵入したレディのアトリエのピアノ部屋と同じです。
ここの部屋も、入り口がモウの出口のような絵画になっていたり、部屋への入り口を開ける前に影のこどもたちがやたらと襲撃してきたり、モウの絵が飾ってあったり、絵の後ろの隠し収納にメッセージボトルがあったり、モウをかたどった入れ物のなかに先へ進むためのレディ型人形が置かれていたりして、妙に示唆に富んだ不思議な空間になっていました。
レディのアトリエの隠しスペースはミニバーのような収納棚でしたが、学校の娯楽室の隠しスペースは最初に見た監禁部屋を連想させるイスが、中央に1脚だけ置かれているシンプルな部屋です。向かって右手の隅には、先になにかありそうだと書いていた木製の鳥のおもちゃが置かれています。イスの上には先へ進むためのカギ、そしてなにより、イスに座っていた人物の頭上にくるくらいの位置に、放尿している犬の絵がまた描かれています。
だれかが監禁されていたと思しき小さな監禁部屋、そしてそこにはイスだけが置かれていて、失禁あるいは放尿を暗示するモチーフが繰り返し繰り返し配置されています。この組み合わせが繰り返されているってことは重要なんでしょうけど、ほかにうまく結びつけられないので、なにがどう重要なのか、さっぱりわからないんですよね。
イスの上のカギを取って、階段下の右の部屋へと進みます。先に図書室から出て行った先生は、どこへ消えたんでしょうね? 2階の左上の扉はけっきょく開かなかったんですけど、あっちへ抜けて行ったのかな? モノと同じ方面へ進んだとなると、この南京錠をどうやって閉めたのかという疑問が生まれてくるので、それくらいしか選択肢が残ってませんよね。もといた棟に戻ることになるけど、いいのかな?
階段がある広間から抜けた先は、なんだか見覚えがある厨房っぽいエリアでした。やっぱり双子のシェフを思い出しますね。あんまり食欲をそそらないソーセージまで転がっているので、古巣に帰ってきたような気分になります。偽りの食欲がこの先のエリアでしこたま満たせそうな気がしてきました。
カートが入り口を塞いでいた左の部屋に入ると、そこは冷凍室でした。真っ先に目に入るのは女性の死体と思しき巨体です。ステーキ状に切られた肉の入れ物のなかに頭を突っ込んでいます。着ているものがメイド服っぽいんで、給食のおばちゃんかなと言っていました。右手の指の並びをよく見ると、右手ではなくて左手だったとわかるので、胸あたりから上は激しく損傷して断裂している可能性もありそうです。閉じ込められて凍死というより、痛めつけられて死体を食用肉のなかに放り込まれた感じかな? 相変わらず、やることがエグいなぁ。
そして死体に目を奪われていると、容器の上に座り込んで震えているファントムにやっと気づきます。この女性となんか関連性のある子なのかな?
寄り道してファントムの子供も回収できたので、右の通気口から厨房へ侵入します。
厨房ではいじめっ子たちがイタズラをしており、モノは床に転がっているお玉を手に取って応戦します。次々に襲いかかってくる生徒たちの頭をかち割っていったら、最後の子だけカポッと首から上の頭部がキレイに取れました。
右目の周辺は損傷していますし、頭の大きさがうまく合わなくて、両手で支え続ける必要があるようですが、この頭部をかぶるとモノがうまくいじめっ子に擬態できます。殺した相手の皮を剥いで被るような狂気を感じますが、深いことを考えてはいけない場面なのかもしれません。
いじめっ子の一人に擬態したモノがこのあと通り抜けるのが大荒れの食堂です。おとなしく座っていられない子供、食べ物で遊ぶ子供、ほかの子を押しのける子供、ほかの子の顔に食べ物を押しつけて無理やり食べさせる子供、他の子に食べ物を投げつける子供、床でうずくまって動けなくなっている子供というふうに、絵に描いたような学級崩壊が始まっています。仕舞いには給食のおばちゃんも隣の冷凍室で食用肉に頭を突っ込んで殺されているんですから、悪夢以外のなにものでもないですね。
机に手をついて立っている子など、一部の子はモノが近づくと突き飛ばしてきます。ただ、それ以上はとくに追撃もしてきません。これまでのようにモノの姿を一目見ただけで、全員で襲いかかってくるというようなことは起こらないので、いちおうこのなかの仲間としてちゃんと溶け込めているようです。ということは、この人たち、自分とは違う他者を区別して、他人を容赦なく襲っているってことですよね。彼らの暴力は、サイコパスのような共感性や良心の欠如からくるものではなく、強烈な仲間意識ゆえの異物の排除、そして仲間内の裏切り者のあぶり出しを目的におこなわれているんですね。……って、そりゃそうか、この子たち「いじめっ子」ですもんね。イジメって基本そういうもんですよね。
さっき双子のシェフがいたモウの厨房を思い出すと書いたので、ここは前作で言うならゲストをもてなすエリアだよなと考えていたんですが、ゲストはシックスのことを食べ物とみなして襲いかかってきていたので、あっちはサイコパス感がある狂気というふうに考えていました。こっちの学校の食堂のほうが、社会のなかでみんな大なり小なり一度は体験したことがある身近な連帯感ゆえの狂気を表していると思います。
そういうふうに考えていくと、ここはろくろ首の先生を頂点にして築かれている一様な社会なんでしょうね。今流行りの多様性の真逆を行く閉鎖的な社会です。でもこれはこれで、なんだかんだ依存関係みたいにバランスがとれているのでは……? いじめっ子は先生に従順だし、先生にいびられるストレスはたまに迷い込むモノとシックスのような他者相手に発散できているようです。これは、モノが授業中の教室に迷い込んだときに、先生の号令でいじめっ子たちが一斉に襲いかかってきた点からもわかるように、閉鎖的なコミュニティーの治安維持にも役立っています。先生はいじめっ子が問題児として存在することで、こんな生徒たちでも教育できる自分というふうに、教師として自負できる環境ができあがっているんじゃないですかね? もしかしてこの学校、先生が自分の心の隙間を埋めるために作り上げた偽りの空間だったりしませんかね? だって、ここのいじめっ子たち、ほかの登場人物より、明らかに人形ですもんね。なんかだれかの都合で存在していることを象徴しているような印象を受けるんですよね。頭部だけ陶器なら、ある意味、レディのアトリエの仮面をつけていた影のこどもたちと似た存在だと言えます。
食堂をズンドコ進んでいくと、いろんな悪さをしている子供のなかに紛れて、ひときわ目立つイタズラをされている男の子に目が行きます。塔のように高く積み上げられたお皿の上に、いまどきエロマンガの SM プレイぐらいでしか見ないんじゃないかというぐらい見事な海老反り状態で拘束された男の子が乗せられています。口にパンみたいなものをくわえているんですけど、これって本人の意思に反して口に固定されている猿ぐつわなのかなぁ? もがけばお皿のバランスが崩れて陶器の破片の上に落ちることになるし、自分も陶器みたいに割れる可能性があるし、でももがかないと解けないしっていうすごい状態ですよね。
高い塔って、さっきも書いたんですけど、モウの煙突もそうだし、今回の電波塔もそうなんですよね。ロープで拘束されているっていう点では最初の監禁部屋もそうだし、ワンコごっこでつながれていた男の子ともつなげて考えられます。高い場所で身動きが取れないという点では、この後エンディングで怪電波のなかに取り残されて、イスに座ったままノッポ男に成長するモノ自身とも重なる部分があります。なんか象徴的な子に見えるんですよね。
食堂を抜けた先の廊下でも、子供たちが好き勝手に遊んでいました。ジッと座っている子もいれば、取っ組み合いのケンカをしている子たちもいますし、廊下の奥には屋内にもかかわらず、大縄飛びに興じている子供たちもいます。彼らが歌っているのは、シリーズ前作でテレビから流れてきていた童歌です。
こんなところにもモウと街の接点が見つかります。前作のオマージュでただのファンサービスととることもできますが、いろいろ考えていくと、やっぱりモウのテレビもこの街の影響の名残りだったんじゃないかなぁ~?
右へどんどん進んでいくと、さらに照明でイタズラする子や取っ組み合いのケンカをしている子供たちが見えてきます。ベンチに座っている子はおとなしそうに見えますが、背後の壁に黒い手形の汚れがめちゃくちゃ付いていますし、足下に白いチョークの落書きがグルグル書かれているので、異様な存在感があります。黒い水って、前作ではシックスがかじったネズミの死体から流れていたりして、血の表現かもしれないって前に書いてたんですよね。この子は頭も割れているし、不穏な気配がします。グルグルの落書きと言えば、手前にめずらしい緑色の落書きもありますね。あと、歪んだ扉の前に転がっているゴミ箱かドラム缶のなかから、いじめっ子の脚のようなものが飛び出しています。しっかり被害者も出ているようです。
歪んだ扉の隙間を通り抜けると、ちょっと静かな部屋に出ました。扉をくぐり抜けるときにどこかが引っかかったのか、モノが転けて頭にかぶっていたいじめっ子の顔が割れてしまいます。モノは懐から、厨房で取りはずしておいた自分の帽子を取り出してまたかぶり直します。どうやらいじめっ子の顔はモノの帽子コレクションには加えられないもののようです。ま、よく考えると不気味なもんだったしね。
ところで、頭が割れた子たちって、割れても当たり前のようにほかの子たちと一緒に活動している子もいるみたいだけど、最終的にどうなるんだろう? 勝手に再生するのかな? それとも先生にそのうち修理されるか、間引かれるのかな?「いい子にしてれば直してあげる」パターンかなぁ?
ここの部屋は理系の教室みたいです。ホルマリン漬けにされた生物の標本みたいなものが棚に所狭しと並べられています。さっきまではうるさすぎたけど、静かなこっちの部屋も、これはこれで静かすぎて不気味です。
よく見ると、扉にこちらから板が打たれて、出入りできなくなっているんですね。どうやらこの部屋は本格的に生徒には入ってきてほしくない空間のようです。ここがこんなふうに塞がれているってことは、モノは隙間から入り込めたけど、いちおうほかにちゃんとした出入口があるってことなんでしょう。
別の経路があるはずなんですけど、モノが転がり込んだ小部屋は奥の部屋へ入る扉がスイッチ式で開くので、なにか投げる物を見つけないと行き止まりになってしまいます。試しに床に転がっていた空のビンをつかんで投げてみますが、割れるだけでスイッチは押せません。ちなみにここのビン、学校に侵入した直後に、寮の一室っぽい部屋で見かけたものとそっくりです。ホルマリン漬けの標本を見たあとに、同じビンを学生の寮っぽい寝室で目にするっていうのはなんとも不気味です。
棚の上へ登れる段差があったので、上へと移動していきます。ナゾの板が照明器具に渡されていたり、おなじみの首つりロープがあったりして、登りきった先に大量の書類と瓶詰めの脳みその標本がありました。モノはそれを高所から投げて、これまた前作からおなじみの肉つりフックにぶら下がって下まで降りてきます。
床まで降りてくると先ほど投げたビンが割れて脳みそが飛び出していました。これをプルンプルンさせながらスイッチに向かって放り投げます。無事にスイッチが押せたので、モノはだれかさんの脳を使って先に進むことができるようになりました。
脳って、そう言えばいじめっ子には見られない機関ですよね。あの人たちの内臓、どうなってんだろ?
先に進むと、なんと先生がいました。どうやって先に回り込んだの……? モノは机の下に隠れて彼女の様子をうかがいます。先生はなにやらカエルをつかんで調べている様子です。どうやらここは解剖室みたいですね。壁の時計は学校に入るときに見た時刻より戻っているので、ここの時計はすべて狂っているようです。そのほうが逆に自然に思えるから不思議。
先ほど生徒が内臓に手を突っ込んでいじくり回していたカエルの出どころはどうやらここだったみたいです。いじめっ子たちがカエルの内臓をいじろうとするのは、先生の行動の模倣かな?
先生に見つからないように、実験室の奥へ進んでいきます。先生はカエルの解剖をしていたようでしたが、こちらの部屋では人体模型のようなものに肺や心臓を突っ込んでなにやら標本のようなものを組み立てています。上の画像でトレーに載っているのは心臓ですね。まわりにホルマリン漬けの標本があるので、手に取っているのは本物の内臓から加工されたものである可能性もあるかもしれません。そういや、2~3年ぐらい前に、日本の学校に置いてある人体標本を調べてみたら、本当の人骨とか内臓とか胎児だったみたいなニュースを読んだことがあります。都市伝説みたいな本当の話が、今まさにここで物語として語られているわけですね。
先生がここでリアルな人体模型を作ろうとしている点は興味深いと思います。先生が普段相手にしているのは明らかに人形の子供たちで、先生はそんな子供たちが絶対に入れないように隔離した部屋で、一人静かに有機的な生物を再生しようと研究を続けています。案外、登場人物がみんな人形と言われてもあり得そうな世界のなかで、一人命を再生しようとしているんですよね。このあと訪れることになる病院の患者は、体のパーツを義足などの人工物にどんどん置き換えられているので、この世界では純粋な有機物の生物がどんどん減っているんじゃないかと推察できます。先生はそれに抗おうとしているんじゃないでしょうか。そう言えば、レディも赤ちゃんを産みたがっていたように見えましたね。ある意味、ドクターよりもすごいことをやろうとしているのかもしれません。
先生の実験室を抜けて、また通気口に潜り込んで、長い廊下に出てきました。ここは通気口から出ていきなり金づちが落ちているような場所です。目の前ではいじめっ子たちが落書きをしていたり、ロッカーに細工をしていたりします。金づちを構えて目の前の女の子を背後から殴ろうと思ったら、頭上からまた重たいバケツがスイングしてきてモノごと一掃されました。容赦ねえな!
ここの廊下は折れ曲がってズンズン続いていく長いステージです。道中ずっといじめっ子たちがあちこちから姿を現して襲いかかってくるので、金づちを振り回して戦い抜かないといけません。何回も何回もやり直して、やっと終着の男子トイレにたどり着きました。長かった!
男子トイレでは宙づりにされたシックスと、二人のいじめっ子の姿がありました。このつりかたはヤバいでしょ。
高い位置で拘束されるっていうのは、さっきの食堂で書いた男の子のイジメと共通点があるんですよね。ということは拷問部屋で拘束されていたのはシックスみたいな女の子だったのかな? ここは男子トイレなので、失禁あるいは放尿したのは、たまたまその場に居合わせた男の子で、ワンコのオシッコの絵は、その男の子の尿が女の子にかかった、あるいはわざとかける行為があったってことかな? なんかフェチズムにしても変態すぎて、いろいろツッコミが追いつかないや!
モノは廊下から引き続き、金づちを引っ張ってきて、二人の男の子を先に片付けます。そして、シックスのロープを固定している木の板もたたき壊して、シックスを落とします。というか、この高さからなんのクッションもなしに頭から落とされると、陶器じゃなくてもシックスの頭が割れそうなんですが……。逆に割れないってことは、シックスが人形じゃないことを示しているのかな?
倒れこんだシックスにモノが駆け寄って手を差し伸べます。シックスは今度こそその手をつかんで握り返してくれました。かなり悲惨な状況ですが、感動の再会です。
転がった男の子の死体も怖いんですけど、個人的には小便器から漏れ出している黄色い汚れも気になります。とにかく汚い! そんな床に倒れるとか、絶対ヤダ!
便器とトイレットペーパーは前作のモウから異様なほど登場していましたが、ここの小便器は意外とめずらしいんじゃないですか? なんかこれも大より小を強調して示しているメッセージっぽく見えるんですよね。
なんとか再会できたモノとシックス。ぶっちゃけ、いじめっ子との戦闘で何回も死にすぎて、トイレに入る直前までシックスのことなんてすっかり忘れていたのは内緒です。いや、もう必死なんですよ。
トイレの窓から外に出て、窓枠に渡された木の板に乗って隣の棟へ移動します。ここの板、真ん中にヒビが入っていて、進むとなにか起こりそうに見えますよね。てっきり落ちるだろうと構えていたら、これがなにもなかったんですよね。
危ない橋を二人で渡る状況は、これまで何度もありました。今作は橋が多いって上にも書いたんですけど、これってなんか二人の仲を示すために、意図して繰り返し描写されていると思うんですよね。いかんせんシックスばっかりつらい目にあっているような気もしますが、モノはちゃんと彼女を助けていますし、ここだけ見ればモノはシックスのヒーローでしょう。今の二人ならどんな困難でもへっちゃらで、一緒に乗り越えられるっていうような雰囲気を感じます。
渡った先にはピアノがデデーンと配置されていました。でもピアノにはフックがつけられていて、ロープがくくりつけられています。よく見ると背後に滑車があり、つり上げられる仕組みになっているようです。ピアノとかの楽器って、音を振動させて響かせてナンボだから、こんなフックを取り付けた時点で楽器としての精度が落ちて死ぬと思うんですけど、どうなんでしょうね?
この部屋、よく見ると真ん中の高い位置に窓があったりして、シックスと共同作業したてホヤホヤのときに上ったハンターの家の屋根裏部屋をちょっと思い出します。
あそこは死体袋らしきものがつり下げられていたし、ピアノの代わりに外へ出るためのカギがフックにぶら下げられてましたけどね。
ピアノをいったん高いところまで引き上げて、そこから一気に落とします。床にめり込んだピアノの上に上って、さらに二人で勢いよくジャンプすると、ピアノが床を抜けて下の階に落ちました。ピアノの価値を考えると恐ろしいな。
宙づりのピアノなら前作のモウにもあって、あれは実質シックスの足場だったので、今回のピアノもどちらかと言えばこっちに近い用途なのかもしれません。こっちのほうがかなり荒々しい印象ですが。
1階へ降りてきましたが、扉にカギがかかっていて奥へ進めません。モノはシックスにまた手で足場を作ってもらい、高くジャンプして通気口を通り、いったん外へ出ます。ここはさっきのトイレの窓から出て、傷んだ板から落ちそうと言っていた場所の下ですね。どうやらゴミ置き場になっているようですが、そのなかで女の子が一人、またカエルの死体をいじくり回しています。そのために手に持っているのが、今モノが必要としているカギのようです。
モノが外へ出ると、シックスが鍵盤の上に乗って遊び始めます。女の子はその音に引き寄せられて屋内をのぞき込もうとします。モノは近くの鉄パイプをつかんで、女の子の背後から後頭部をかち割ります。カギを拾うと、シックスが一緒に固い金属の格子戸を少しだけ開けてくれるので、部屋のなかに戻れます。そう言えばこの扉も似たようなものがモウにありましたね。
女の子がどうして一人だけここで遊んでいるのか、少し気になります。一匹狼だったのか、それとも彼女もなんらかの懲罰で一人外に締め出されていたのか……。
もうひとつ気になる点は、何度も登場するカエルです。いじめっ子からは男女問わず内臓をこねくり回されていますし、先生には解剖されていました。カエルってなんの象徴なんだろ?
エジプト神話のカエルは、多産と復活の象徴として考えられていて、その姿はヘケトなどの女神にもなっています。卵をたくさん産む点や、水棲の幼少期から陸棲へと成長する生態も人の心を惹き付けるようです。風水の三脚蟾蜍が有名ですが、南米や中国では財運をよくするシンボルとして好まれました。中世ヨーロッパのキリスト教では不浄のシンボルとみなされることもありましたが、英語ではカエルを表す単語が山ほどあり、一般的なカエルのイメージで使われる単語と、忌み嫌われた生物として表す単語は別に用意されるなど、依然として人々に親しまれていたことがうかがえます。同じヨーロッパでもドイツでは、冬眠や水から陸に上がる生態が魂の輪廻を連想させるとして、人の魂を表していると考えられる傾向があるようです。この考えかたからすれば、人形だらけになってしまった世界で人の生命を取り戻そうとしているのかもしれないと書いた先生の実験になにか関わっているのかもしれません。
心理的にはグリム童話の『かえるの王子さま』となにか引っかけて考えられるかもしれません。とある国の王子が、母国から離れた先で魔法をかけられ、カエルにされてしまいます。カエルから人間に戻る条件は、王女のキスであるとも、壁に投げつけられることだったとも言われていますが、いずれにせよ、王子の呪いは住み処にしていた泉にたまたま立ち寄った王女の手によって解かれます。王女はカエルの相手を最初ものすごく嫌がるんですが、呪いが解けて王子だとわかると途端に仲よくなって結婚します。その後は王女を連れ立って母国に帰るパターンと、王女の国に婿入りするパターンがあります。
この寓話をもとに、王子様とカエルは表裏一体だという点から名付けられた心理現象が「カエル化症候群」です。女性が片思いをしているときは、相手の男性が王子様のように見えるのに、いざ両思いになると相手のイヤな部分も見えてきてカエルのように思えてしまう現象です。名付けのもとになっている寓話とは順序が反対ですが、カエルと王子様はじつは一緒だという点から言うと、今のシックスにとって、モノは自分を救い出してくれたヒーローだと上に書いたように、カエルがモノのような、女性視点から見た男性像である可能性があります。
最初にカエルの内臓をいじくり回しているのは男の子なので、モノと同性ということになります。最初は男同士の戦いで、その次が男をじっくり研究する大人の女性としての先生で、最後に同世代の女の子に変わります。この遷移は、シックスが目の前のモノに期待を寄せて、王子様ではなくただのカエルだったと気づくことを表しているのかもしれません。
あと、また全然違う考えかたから掘り下げていくと、以前にシックスは七つの大罪のうち6番目の暴食を司っているんじゃないかと書いたんですが、その罪を司る悪魔のベルゼブブはバアルという嵐神と結びつけることができ、さらにバアルはバエルというカエルの姿をとることもある悪魔とも結びつけることができるんですよね。バエルは王冠をかぶっているという特徴もあるので、先ほどのチェスのキングも絡めて考えることができます。ベルゼブブだとしたらカエルは巡り巡ってシックスと解釈すべきですが、キングならどうも性別が一致しませんね。こうやって考えていくと際限なくなっていくので、ここらへんで切り上げたほうがよさそうですね。
ピアノを落とした部屋の扉を開けて、また学校の教室を進んでいきます。せっせと目や電波塔の落書きをしているいじめっ子がいるので、ひっそり忍び寄って、近くに落ちている金づちを拾おうとするんですが、モノが武器を拾おうとしているあいだに、シックスは率先していじめっ子に忍び寄り、背後から羽交い締めにして、頭部を破壊してしまいました。
さっき自分を助けてくれた王子様云々って書いたんですけど、シックスは別に白馬に乗った王子様を必要としていないかもしれませんね。なんかこれを見ると一人でも元気にやっていけそうな気がしてきました。あと、この教室、金づち落ちすぎでしょ。
ちなみに、配信中にも言っていたんですが、いちおうモノが先にいじめっ子にトドメを刺すことで、シックスに殺人の罪を着せずに済むルートもあります。これはこれでなんか物足りない感じがしてしまうのはなぜだろう……。
モノが最初に金づちを拾っていじめっ子を攻撃し始めるのは、シックスが目の前でさらわれたからだというふうに書いたんですが、シックスも自分がさらわれてトイレにつり下げられる被害を受けたことで、先制攻撃を仕掛けて自分の身を守る行動に出るようになったと考えられます。これもたくましい成長と言っていいのかな? そう言えば、自分を監禁していたハンターもこの前に射殺しているんですが、あの引き金を引いたのはモノでしたね。その前に重心を支えて、いかにも撃てよというふうな雰囲気を作っていたので教唆ぐらいの罪にはなりそうですが、今回は思いっきり実行犯になったので、やはり戦う女シックスの成長が垣間見える出来事になっている気がします。助けてくれるモノを必要としていませんもんね。この背後からシックスが飛びかかるとき、男の子にまたがっているシックスの生脚がよく見えるのもいい演出だと思うんですよね。なまめかしさみたいなものが出て、さらに異様さが引き立つように感じられます。あと武器を必要とするモノに比べて、素手で仕留めているのも化け物感が引き立てられていいと思います。
シックスのたくましい成長を見届けたあと、ピアノの音が聞こえる階段にやってきました。ここに置かれている家具には布が被せられていて、絵画まで隠されているようです。
こういうところ、めちゃくちゃレディの部屋っぽいですね。レディが隠していたのは、どうやら女の子の肖像みたいでしたけどね。
階段を上ってきました。片方の窓も布で隠されています。カーテンと言うべきか悩みましたが、この中途半端な布のかけかたは、やはりレディの部屋の絵画と同じ布の覆いが意識されていると思います。窓も絵画なのかという考えがよぎって、外の景色を見たら、また煙突が見えました。煙突はやっぱりモウの頭かなぁ? 先生が隠したかったのはモウかな? それとも電波塔かな?
階下でゲストたちがおおいに満たされている間、レディは自室に引き下がる。
https://ln.bn-ent.net/places/
この場所を知る者はほとんどいない。
誰もここへ近づこうともしない。
モウの飢えは彼女の飢え。
モウの渇きは彼女の渇き。
すべてを司るのは、このレディなのだ。
こじつけですが、モウはつまりレディなのだという考えかたも、公式の文章を読んでいるとできなくもない気がしてきます。まあ、こじつけたところでレディと先生の接点が見えてくるわけじゃないんですけどね。こじつけると先ほどのチェスの駒は、クイーンもルークも一心同体のレディとモウだという解釈になります。これもだからどうだって話なんですが……。
ここから先は、棚の上の通気口を使って隣の部屋に侵入するんですが、そのために登るチェストに白い汚れがついています。これ、チョークの汚れだと思うんですけど、先生の手から付いたのか、いじめっ子たちがここまで侵入してきているのか、ちょっと気になります。
扉の向かいのベンチには本の山と一緒に通学カバンが置かれているんですが、校庭のベンチといい、通学カバンもそこに特別な人物がいたことを表すために配置されているような気がして、ちょっと気になっています。
隣の部屋では先生がピアノの練習をしていました。途中手を休めて楽譜にメモを書き込んだりもします。このピアノの音がやんだときに大きな音を立てるとすぐに見つかってしまいます。反対にピアノを弾いているときの先生の耳はガバガバなので、すぐ後ろでキーキー音が出るキャスターを動かしても、はたまた視界の端に入り込みそうな位置で天板を昇降させても、まったく気づかれません。
天板を下ろして奥へつながる通気口へ逃げ込むと、先生が気づいて追ってきました。
狭い通気口に逃げ込んでしまえばこちらのものと思ったら、通気口をガンガン広げて頭を突っ込んでくる先生。ここの先生、怖すぎでしょ。普通の子供がこんな悪夢見たら、これこそ失禁しそうなレベルです。
先生は、これまでのサッパリ感はどこへ置いてきたのかと聞きたくなるぐらい執念深く通気口のなかを首を伸ばして追いかけてきます。こう首を伸ばされると、前作の管理人の末路が脳裏にチラついてしまいます。逃げながら、この後なかなかエグいことになるのではないかとハラハラしたのは私だけではないはずです。
通気口の最後は断崖絶壁なので、お隣の建物の通気口に向かって、お決まりの手つなぎジャンプで渡ります。ここも二人の仲が強調される展開になっています。諸々から愛しの旦那様がいるようには見えない先生に見せつける嫌がらせなのかもしれません。
二人はそのまま反対側の壁の外へ出て、屋根を滑って地面のゴミ箱へ転がり落ちます。二人を見失った先生は、あたりを見回したあと、あっさり諦めて帰っていきました。やっぱりサッパリしとんのかい。
しかしあの通気口をもう一度反対から戻るのは大変そうですね。途中で詰まったりしないのかな? 心配していた首チョンパがなかったのはよかったかもしれません。先生は自分の住み処を2匹のネズミに荒らされただけで済んだので、シリーズ全体を通して考えると、けっこう穏便に済んだほうだと思います。
歴代の敵対キャラクターを思い浮かべると、レディとグラニーは死亡、管理人は両腕を失って、今作でもハンターがすでに死んでいますし、このあとドクターとノッポ男もあとを追う予定です。主人公を追いかけ回して無事なのは双子のシェフと先生ぐらいですかね? 共通点はなんだろう……?
先生が諦めて首を戻したのを見届けてから、ゴミ箱を出て先を急ぎます。ここはギリギリまだ学校の敷地内らしく、建物の壁沿いにタイヤの遊具がまた設けられていました。このタイヤってそんなに一般的かな? なんかパンダを妙に連想してしまうんですよね。
学校の裏には大きな地割れができていて、ここも土地が分断されています。建物は歪んで傾き、電線は切れずに済んでいるようですが、電柱が引っ張られて斜めに倒れかけています。
モノとシックスは向こう側へ渡るために、だれかが突貫工事でこしらえたらしい薄い板の一本橋を渡ります。だれが作ったんだろ? この橋、すごい絶妙なバランスで成り立ってると思うんですよね。自分だったら足がすくんで動けないと思います。
向こう岸の支柱にまた服がぶら下がっていますね。洋服も今作は何度も出てくるので重要な気がするんですよね。ただ、どう重要なのかさっぱりわからない悲しみ。
道なりに進むと、またベンチに腰かけていた人の体だけ消えてしまったような形で洋服が残されていました。このスーツに中折れ帽のセットは、ちょっとノッポ男を連想しますね。こういうスーツのフォーマルな洋服って、働くお父さんの姿なんですよね。そういう点では、学校の子供たちに比べて成人して社会人になった男性というべきか。
ベンチの背後の壁には、チラシのようなものがたくさん貼られています。怪電波を出している電波塔のようなものもあれば、シックスの隠しエンディングで見られるモウのチラシのようなものもあります。
ここで進む街並みは、ヨーロッパっていうよりアジアの雰囲気が感じられるような気がしています。日本よりは中国とかの大陸寄りなイメージが近いかな。こちゃこちゃと増改築されて、配管も入り組んでいる感じが余計にそれっぽいんですよね。
そう言えばここの道、学校に入る前は降っていなかった雨が降るようになっているんですよね。服が濡れて体が冷えているのか、後ろをついてくるシックスがときおり凍えているようなジェスチャーを見せます。紳士らしくそのコートを羽織らせておあげよ、モノ。
雨は物語の転機となるタイミングに演出として使われることが多くて、そとの音を雨音でシャットアウトして没入感を醸し出したり、あるいは見る者の意識を背景となる世界に向けることで視点の転換を図ったり、雨が降って今までのよくない流れが洗い流される心理描写などにも利用されます。この場合の雨はなんでしょうね? 少なくとも学校での経験を経て、モノとシックスにはこれまでと違う転機が訪れていると考えられます。学校で世の暴力に触れてたくましく成長したことを示しているのか、はたまた二人の仲が深まってほかのことが見えていないことを示しているのか。
しばらく進むと路地に入ったところにファントムがいました。水たまりに浮かぶ白い折り紙のようなものに水をかけています。この白い折り紙、一見するとカブトか王冠のようなんですが、別にモノの帽子コレクションに加えられるわけではないようです。王冠だと先ほどの学校で見たチェスのキングの王冠絡みですかね? 白のキングってことなら、王冠だけ残して姿を消しているのがこれまた不穏ですね。しかもファントムに水没させられそうになっていたし、水を経由すればカエルの王子様ともつなげて考えられそうです。モノのコレクションに入らないってことは、モノが白のキングではないことを示しているのかもしれませんね。
ずんずん進んでいくと朽ちた建物にたどり着きます。天井も崩れているので、真ん中から雨粒が落ちてきています。屋内は荷物が山積みなので、集配所かなにかだったようです。ここも床に服が散らばっているし、荷物の上に山折れ帽が載せられていて、ノッポ男の気配がします。
最初の飲食店の裏通りでも書いたことなんですけど、こういう小包もなんども繰り返し出てくるので、物語上お荷物を配達することが大事なんだろうなっていう気がするんですけど、いまいちどう大切なのかはよくわからないんですよね。だれかがだれかになにかを届けたかったんだろうなっていう、ボンヤリとしたことしか依然わかりません。
部屋の真ん中まで進むと、凍えているシックスが床に落ちているレインコートを拾って羽織りました。これでシリーズ前作と同じシックス像の完成です。最初に見たときはめちゃくちゃ声が出ましたね。お前だったのか!
もしかしたらここの道中、雨が降っていたのは、このシックスのシーンを引き立てるための演出だったのかもしれませんね。実績のトロフィー名にもなってますけど、このレインコートはもはやシックスのアイデンティティーですからね。ある意味、学校のトラウマを乗り越えて化け物の原型が完成したみたいな意味が込められていそうです。
集配所の奥はカウンターがあるお店っぽい部屋につながっていました。ここが荷物を預かる窓口なのかと思ったんですが、よくよく見るとハンガーラックに服がいくつもかけられているし、マネキンも置かれているので、むしろ洋服店のように見えます。もしかして裏に積まれている荷物って、中身は洋服なのかな?
洋服もなんか意味がありそうなんですけど、ここでシックスがレインコートを羽織るようになる流れから考えると、洋服もチェスの駒みたいに、各人に与えられた役割みたいなものの象徴だったりしますかね? スーツなんてまさに、個人の好みではなく、性別や年齢によって社会的に求められているから着る対外的な服ですし、そう考えれば、シックスのレインコートも襲名の儀みたいなもんと解釈できるかもしれません。
そう言えば、ここの床はちょっと学校のチェス盤っぽい格子柄になっていますね。似たような色違いのタイル床が、モウの目の形をした監視室前の事務室にもあったんですよね。あそこは隠し部屋のような形で監視装置がある部屋につながっていて、モウの各ボスの様子がこっそりうかがえるようになっていたので、なんか重要な部屋だったのかもしれません。隠し扉がハンガーラックタイプのチェストのなかにあったのも、このお店と洋服つながりで一緒に考えられるかもしれません。
お店を出て通りをどんどん進んでいくと、やがて大きな建物が見えてきます。次のステージの病院です。病院前はただっ広い空間になっていますね。ベッドが横たわって、ゴミが山積みになっているとは言え、いろんな物が設置されていた学校よりはさびしい空間になっているように感じます。
病院をやり出すとまた長くなるので、今回はなかに入ってしばらく進んだここらで切り上げようと思います。次回はドクターと追いかけっこですな。
シンマンのシンは真打ちの真だと、そんなふうに考えていた時期がワイにもありましたに続く