新型コロナウイルスが広まって、コロナ禍で有無を言わさず家にいないといけなくなったかたは多いと思うんですが、私は家から出たり入ったりを繰り返していました。労働ヒエラルキーの底辺で働いているので、上の人間がコロナ禍で自宅に避難すると代わりに職場に出ないといけないし、業務縮小だ~となると、上や中央に仕事が行くので、あぶれた私は家に戻らざるをえなくなるし、人手が足りない~となると、なじみのないちょっと遠方の職場にまわされるというような流れを経験しました。たぶん、年内いっぱいは似たようなことをずっとしているような気がします。

慣れないところに慣れないタイミングで呼び出されると、出先で適当に時間を潰すネタが必要になってきます。とくにコロナ禍だと、周りの人に話しかけようと思っても、なんやかや感染させちゃうんじゃないかなんて考えて、惰性でしゃべれる相手も少ないぶん、余計にしゃべりにくい環境になっちゃってるんですよね。せっかく余った時間だから、有効活用しないともったいないということで、こんなときこそ新しい知識を頭に入れてみようと、普段は読まない本に触れる期間にすることにしました。

Kindle Paperwhite

そこでタイトルどおり、思い切って Kindle Paperwhite を買ってみました。ちなみに、今使っている第二世代の iPhone SE にも無料の kindle アプリを入れられるので、わざわざ専用端末を買う必要はありません。ただ、慣れない土地で地図を確認したり、業務連絡を読み返したり、調べ物をしたりしていると、スマートフォンの電池がどんどん減って心許なくなってくるので、焦らずに本が読める別の端末があるのはいいかなと思ったんですよね。じつは、この前に安い音楽プレーヤーも購入して、なるべく必要なときにスマートフォンの体力を温存できるようにと考えていたんでした。まあ、とにかくこの時期の仕事難民はつらいってことに尽きます。早くもとの生活に戻りたいです――と、まあ、私が kindle を買った言い訳はここまでにして、kindle を実際に使ってみた私の感想をちょこちょこ以下に書いていきます。

デジタル書籍は場所をとらない

今回は本を読む時間があるからとりあえず kindle を買ってみたわけではなくて、じつはこの前に kindle を買おうか一度真剣に悩んでいたことがありました。それが、親が他界して実家を片付けたときです。うちの親は寝る前に本を読まないと眠くならないたちで、けっこうなボリュームの本が寝室にありました。しかも、実家という場所には、自分や兄弟の荷物も大量に眠っているわけです。その冊数たるや、膨大です。

もともと私、本の形態にはそれほどこだわりがなくて、買うときはけっこう、デジタルでもいいかなと思えるタイプです。いや、紙媒体にしかないよさがあるのも、ものすご~くわかるんですけど、大量にため込んだ本を処分する苦行を一度味わうと、「紙はもういい!」という気分になるものです。もうね、本も一定数以上になると、こだわりがない本が大半なんだから、デジタルで読みゃあいいじゃんって思うんですよね。

終活にはちょっと早いけど、自分が買った本が自分の死後に同じように身近なだれかの負担になることを考えると、本棚の整理に kindle 端末のひとつぐらい買ってもいいんじゃないかなと思えるようになりました。

私のなかで、デジタル書籍を読むとなると、ここ数年はずっと Amazon の kindle アプリでした。デスクトップ向けのアプリもあるし、上述のとおりスマートフォンでも読めるので、それほど不便に感じたことがありません。しかも Amazon ぐらい帝国を築いた大手だと、私が若いころに電子書籍を売りにして消えていったサービスと違って、よほどのことがない限り、今後もしばらくは利用できる安心感があります。実際の本棚を再現するうえで、昔に買った本をほじくり返して読めるのって、けっこう大事だったりします。

本当の本を読んでいる感覚に近い

例えば、似たサイズのスマートフォンやタブレットの kindle アプリと、今回買った kindle paperwhite を比べたらどうなのかって言ったら、専用端末という以外に、予想以上に本当の本を読んでるみたいに感じる特徴があります。kindle アプリだと気付かなかったんですが、専用端末で読んでいると、本当に文庫本の活字を目で追っているような錯覚に陥ります。たぶん、ページ全体がのっぺりしたデジタルの白黒フォント表示じゃなくて、本当の本のページを読み込んだ画像のようになっているからだと思います。文字に焦点を合わせると、あるいは各章の冒頭の空いたスペースに目をやると、その裏に裏面の文字がうっすら透けて見えるように感じるんですよね。kindle paperwhite の画面はモノクロ表示なんですけど、文字を実際のページのイメージに近い形で表示しているなら、白と黒の対比も、デジタル画面のようにコントラストがキレイに調整された文字ではなく、紙媒体に近いものになっていると思います。それが妙なアナログ感を覚える要因なのかもしれません。

読書灯がいらない

夜寝る前とか、暗がりで横になって本を読む習慣がある人にしかこのよさはわかってもらえないと思うんですけど、通常は本を読むとき用につけておける照明がベッドサイドに必要なんですね。でも、フロントライト搭載の kindle paperwhite は、端末ひとつで普通に画面が見えるので、別途照明が必要ありません。同じ寝室にいるパートナーから文句を言われたり、光が当たるほうをずっと見ていたりする必要もありません。好きに寝返りが打てますし、なんなら端末持ったまま布団を被って明かりを遮断することもできます。地味に便利だと思いました。

自分の眼に光量計やブルーライトのセンサーがついているわけでもないので、スマートフォンに比べて目に優しいかと言われると具体的に示せる数字がないんですが、体感では目が疲れにくいと感じます。デフォルトで控えめな光量になっているし、モノクロなので目の負担は減っていると感じます。たぶん、スマートフォン多用の弊害でよく話題に出てくる睡眠を阻害するリスクとかも抑えられているんじゃないかと思います。

安心の防水設計

kindle paperwhite のわかりやすい売りは、お風呂にも持ち込める防水設計だと思います。ほかの記事で何度か書いているんですが、私、光線過敏症、俗に言う日光アレルギー持ちでして、症状がひどくなると普通の石鹸が使えなくなるんですね。そういうときに使うのがガッスールみたいなクレイ系の洗顔料やボディソープなんですけど、クレイ系は肌に乗せてから時間を置かないとしっかり汚れが吸着できないものも多く、総じて長風呂になりがちです。じつは水没リスク承知で無理やりスマートフォンを使っていた時期もあるんですが、kindle paperwhite を買ってからは水没に怯える必要がなくなりました。

あと、地味に料理中に触れる端末なのも嬉しいです。料理中って、断続的な待ち時間があるので、意外と読書や調べ物がはかどるんですよね。スマートフォンでレシピ表示しているときあるあるなんですけど、料理中はけっこう濡れた手で端末に触ることが多くなります。雑誌のレシピとかを表示しておいても、防水設計なら濡れた手で平気で触れるし、汚れた手で触ってしまっても水でサッと流したりとか、遠慮なくできるので便利です。

読みたいところを見つけるのが簡単

普通の本は、それほど読み返すタイプじゃないんですが、今プレイ日記を書いているゲームの考察に絡む書籍となれば、話は別です。具体的に挙げると、FINAL FANTASY シリーズは攻略本のアルティマニアや小説、Death Stranding も小説のチェックが欠かせません。いろんなこと考えながら、こういう作品に何度も目を通していると、「あ~、たしかあのキャラも似たような言い回ししてたな~」とか、ものすごくボンヤリとしたことを思い付くことがあります。電子書籍だと、それっぽい単語で検索をかけて、すぐにあぶり出すことができるんです。紙だとこうはいきません。「あのキャラが出てきたのは終盤だったから、下巻のこれくらいかな~?」と、直接本を手に取って、ペラペラとほかの情報に目を通しながら当たりをつけて読むのも嫌いじゃないんですけどね、効率で言えば、デジタルの調べ物のほうがはるかにはかどります。

あと、ハイライトを入れる機能を使って、紙と同じように気になるところに印を残しておくこともできます。これものちの調べ物がはかどります。

持ち運びやすい

商品ページによると私が持っている kindle paperwhite の仕様は、横116mm、縦167mm、厚さ8.18mm で、重さは182g らしいです。

小説『デス・ストランディング』と kindle paperwhite の比較

たまたまブログ更新用に目の前に置いてあった小説『デス・ストランディング』の文庫本と並べるとこれくらいのサイズ感です。重さも似たようなもので、平均的な文庫本や漫画本をちょっと上回るぐらいだと思います。スマートフォンともたいして変わらないんですが、画面が大きいぶん、逆に kindle paperwhite のほうが軽く感じます。無論、通勤カバンに追加してもそれほど苦になりません。

文庫本との比較ならこれくらいの話で終わるんですけど、大型本やハードカバーの本だと、持ち運びの重さはけっこうシビアな問題だと思います。あと、夜寝る前に読む本も、重いとけっこう腕が疲れてきて大変だったりします。kindle にまとめると、もうあの重さを気にしなくていいんですよね。

辞書機能つき

kindle paperwhite には、デフォルトで辞書機能がついています。英日辞書だけじゃなくて、私の端末にはさまざまな言語のものが最初から入っていました。ざっと見た感じ、最低限の国語辞典(『大辞泉』)、英日・英和辞典(『プログレッシブ』)、英英辞典( Oxford )はそろってます。電子辞書の変わりにも使えますし、本を読んでいる最中に知らない単語が出てきたら、ページ遷移せずにその場で意味を参照できます。洋書を読んでいるときも、単語を選択すればそのまま簡単に辞書を参照することができるので、別途辞書をひく必要がありません。インターネット接続があれば、Wikipedia も参照できるみたいです。読書がはかどります。

kindle unlimited は便利

kindle paperwhite を買ったときに、お試しで kindle unlimited に加入したんですが、思っていたよりも便利です。モノクロ端末だとちょっと物足りませんが、最近は美容院に行ったときぐらいにしか読まない雑誌が読み放題になっているのが驚きでした。ああいう雑誌って、衝動買いさせてナンボの情報という名の広告本だと思っているので、わざわざお金を出すのもなんだかなぁ~と考えてしまいがちです。定額で読み放題ぐらいのほうが、たしかにニーズに合っていそうです。

あと、ちょっと前に流行った書籍が案外読めたりするんですよね。雑誌のほかにもあんまりお金を出したくない本が個人的にあって、それがハウツー本の類なんですけど、こうやって定額で好きに読めると話のネタにもなるし、もしかしたら読んだうちになにかがいい感じに身に付いていい収穫になるかもしれないという気にもなれます。

読書で知識は身につかない

じつは本を読む習慣については持論があって、それが「本を読んだからといって、その知識が身に付くとは限らない」というものです。もちろん、全員とは言いませんよ。頭がいい人は効率よく知識を得られるんでしょう。でも、私はやっぱり人間、実際に体験して、身にしみて感じないと、何事もなかなか身に付かない生き物だと思うんですよね。

本を読む習慣がある人はそう少なくないと思うんですけど、そのわりに知能が高い人が増えている印象は受けないんですよね。医者や弁護士といった難しい職業に就いたり、もっと基本の国語として正しい日本語を書いたりするスキルとかも、案外受け身で読んでいるだけだとそれほど伸びないもんだと思います。例えば、寝る前にかならず本を読んでいたうちの母親なんか、読んだそばからその内容を忘れていくので、気に入った作家さんの同じミステリーをなんども読んでいました。おそらく、うちの母親と同じで、読んだけど忘れちゃう人、読んだときに感心したっきり知識が活かせないまま終わっちゃう人、少なくないんじゃないでしょうか。むしろ日常的に本を読んで、いろんな本に目を通す人ほど、忘れる量も多そうです。

仕事柄、本を読む人と一緒に働く機会も多いんですけど、それこそ文芸からハウツー本まで、作業場にズラッと本を並べている人で、悲しいぐらいに仕事ができなくて、部下からずっとバカにされていたおじさんがいました。「それだけいろんな本を読んでたら、もっと仕事できるべきなんじゃないの?」って人、身近にもけっこういると思います。ハイ、私もその一人です。だから私は、あえて読書をするぐらいならほかの能動的な作業をしたほうがいいと考えていて、本はそれほど熱心に読むタイプではありません。本を読む習慣があって、それがそのまんまイコール知識の吸収量なら、みんな恐ろしい天才になっていても、本来はおかしくないはずなんですよね。ハウツー本を読んでも、身に付くかどうかはまた別だから、知識目的で読書に時間を削る意味はあんまりないっていうのが私の持論です。

じゃあ、なんで本を読むのかって言ったら、無心で活字を追いかけている時間こそが大事なんだと思います。いわば、写経とか塗り絵のようなものじゃないですかね。心を無にしてひとつの作業に取り組むというか、そういう時間を持てること自体が至福であり、醍醐味なんだと思います。専用端末の kindle paperwhite と kindle unlimited の組み合わせは、このセラピーのような時間の使いかたを簡単にしてくれます。

挙動はわりともっさり

実際に kindle paperwhite を手に取って操作し始めたときの印象は「動作がもっさり」というものでした。一昔前の端末を使ったときの感触によく似ています。まさに電子書籍を読むための最低限のスペックって感じです。実際に本を読み始めると、ページをめくるタップぐらいしかしないので、それほど気にならないんですが、ページをいくつも遷移して設定を変えたり、ライブラリの書籍を操作したりしていると、ワンテンポ遅れる挙動に少し不安を覚えます。だから電子辞書の代わりとして使うのは、ちょっと非効率かもしれません。あくまであれは、本を読みながら同じ画面ですぐ意味を調べられることにメリットがあるんだと思います。

電池の減りは意外と早い

これは一度の充電で数週間使えるという前評判だったので、私のハードルが高くなっていたのかもしれません。一度フル充電して、たいした時間、読書したつもりじゃなかったのに、ふと次に電池の残量を見たら、7割ぐらいまで減っていたんですよね。本当はインターネット接続をオフにしたり、こまめに画面をオフにしたりすべきなんでしょうけど、家にいるとつなぎっぱなしが便利だし、寝る前の読書だと眠たすぎてスリープにしたまま意識が落ちていることが多々あります。

スマートフォンみたいに、毎日充電すべきっていうほどじゃないのは確かですが、数週間使えるかっていうと、けっこう微妙なラインです。早ければ1週間もしないうちに、残量が気になって先に充電したくなるぐらいまで減ってしまいそうです。そもそもこの電池がもつ数週間は一日30分読書が前提なので、仕事の休憩時間に使って、夜寝る前に使っていたら、そりゃ減りが早いのも当然ですけどね。

高い

これまで何度かリニューアルしてきた kindle ですが、新モデルが登場するごとにどんどん便利になって、それにつれて値段もつり上がってきました。私が買った新しいものは1万円超えの13,980円でした。そこそこいいママチャリが買えますね。あ、いや、唐突な自転車の話は、ちょうど同時期に購入を検討していたからです。まあ、これくらいの値段だと、そこそこいい生活用品が買えちゃうって話なんですよ。つまり、そこで kindle っていう選択肢はありかっていう話になります。

この端末の価値は、最低でも1年以上使い続けないとわからないと思います。今後もずっと本を読む習慣が残るなら、この買い物も悪くなかったかなって思えそうです。まあ、私が使わなくなっても、家族が私から奪い取るチャンスを虎視眈々と狙っているので、ムダになる予定はないんですけどね。本を読む習慣を残さないと、この買い物の価値がなくなるし、本を読む習慣がついたら、惰性で字を追うんじゃなくて、本の知識が身につくように努力しないといけないし、そういうところまで突き詰めていくと、自分への投資に近い買い物だった気がします。

教育とは、学校で学んだことを一切忘れてしまったあとに、なお残っているものである。

アルベルト・アインシュタイン