グラウンド・ゼロ湖を越えて、北米大陸の真ん中の中部エリアにやっと突入した DEATH STRANDING のプレイ日記です。位置的には真ん中でも難易度的にはやっと初心者エリアを脱出できたところなので、まだまだ始まったばかりという感じさえあります。前回は湖のほとりにあるレイク・ノットシティのプライベート・ルームでゆっくり休んでいたところにフラジャイル嬢が突撃してきて、一緒にヒッグス率いるテロリスト集団と戦うことを誓わされてしまったところで終わりました。グラウンド・ゼロを越える前後でムービーがたくさん流れましたが、それも一段落したので、今回からまた地道に配達をしていきます。

クリプトビオシス

中部エリアに到着した時点で、本格的にフラジャイルと手を結ぶことになったので、サムのプライベート・ルームには彼女のお気に入りのクリプトビオシスが入ったビンが置かれるようになりました。なんかオシャレなペットショップに並んでいる小型のエビとか、ベタとかの売り物みたいですね。デザインがポップでかわいいんですけど、実態はおやつ入れです。食べちゃうよ~! ということで、プライベート・ルームでこのクリプトビオシスを食べると、あらかじめ増血した状態で仕事を始められるので、ちょっとだけお得です。

実際にクリプトビオシスを食べるシーンはけっこうグロいと思います。そもそも私、虫が苦手なので、自分だったら目をつぶって鼻をつまんで口に放り込むと思うんですが、サムは一口かんで、断面をまじまじ見ながら咀嚼して、さらに残りを口に放り込んでますよね。これ、最初に見たときに、「お前がナンバー1だ」って思いました、カカロット。かんだ断面を凝視できる神経もそうですけど、それを見てさらに食べられる神経も私にはないと思います。しかも躍り食いでしょ?意外と中身グロくないのかな……? てか、なんでわざわざ断面見るの……?

グラウンド・ゼロ湖

そう言えば、前回はフラジャイル嬢の相手でいっぱいいっぱいでしたが、レイク・ノットシティをカイラル通信につないだことで、また過去の文書が読めるようになっていました。ひとつ目はポート・ノットシティで配送担当者をしていたヴィクトール兄さんが、2年前に書いたグラウンド・ゼロについての覚書です。デス・ストランディング現象が起きた当初、北米大陸のど真ん中で、とてつもない規模の大爆発が起こり、当たり前ですが、当時はなにが起こっているのかを正確に把握できる者はいなかったそうです。政府でさえも、敵国の攻撃か、自然災害か判断がつかず、右往左往するばかりでした。

以前に書きましたが、小説ではその混乱期にヴィクトール兄さんとイゴール先輩の両親が精神を病んで自殺しています。まだ子供だったヴィクトール兄さんはその後、幼いイゴール先輩の手を引いて世紀末と化した北米大陸をさまよい、現地で救助活動にあたっていた配達人たちに保護されています。やっと小学生になろうかという年齢で親に先立たれ、東海岸の被害が少ないらしいというウワサを耳にすると、まだ幼児だった弟を連れて避難する決断力を見せ、さらに安全なルートを確保して移動するヴィクトール兄さんの有能さは、本当に子供かと疑いたくなるほどです。第一次遠征隊に選ばれたのも納得ですね。そして、そんな彼を保護したその配達人たちも、一部はミュールになってしまったんでしょうね。爆心地のクレーターはのちに海のような巨大な湖、つまり前回サムが渡ったグラウンド・ゼロ湖になったと書かれています。

過去を振り返っていたヴィクトール兄さんは文書の最後に、2年前の当時の日記のようなものも書き加えています。今は亡きイゴール先輩が死体処理班の隊長として活躍しており、その実績が認められて第二次遠征隊になったそうです。兄弟が誉れある任務で再会できるのは3年後の予定でしたが、サムが見てきたとおり、イゴール先輩は第二次遠征隊の任務に就く直前に転がり込んだ緊急の死体処理の仕事で BT と接触してしまい、対消滅で亡くなってしまいました。サムは彼のあとを継いで第二次遠征隊になっています。なんか切なくなるお兄ちゃんの文章ですね。

プレッパーズ

お次は同じく2年前にフラジャイルが書いたプレッパーズについての説明です。フラジャイルは父親と仲が良かったので、戦前のことを父親からよく聞いていたようです。プレッパーズはサムがこれから荷物を配達する中部エリアの住民たちのことですね。アメリは前回「孤立主義者」と呼んでいましたが、なんだかんだこんな世の中でも生き延びるためには人との縁を切りたくても切れないんじゃないかと書いていました。「ネットが世界を覆っていて、世界の端から端までモノを送り届けることができたけど、人は孤立していた」とフラジャイルが書いているので、どちらかと言えば孤立したがる精神面でのお話だったのかもしれません。そうなるとサムも立派な孤立主義者ですね。

シェルターは避難場所ではなく、そこで生き、死んでいく家になった。
逃げる場所ではなく、帰る場所。そこが彼らのシェルターなの。
彼らは、災難に備えていたけれど、そこで生き抜くためには準備が足りなかった。だから、私たちのような配送組織が必要とされた。束縛ではなく、お互いを繋いで、補完しあって生きていく。
それは昔の国とは少し違う。そんな『アメリカ』を、父や私たちは実現しようとしているの。

フラジャイル

フラジャイルの父親はゲーム内の描写だとあんまり存在感がないんですが、小説だとこれからサムが荷物を届けるプレッパーズの一人であるエルダーに「実は、父親になるんだ」とフラジャイルが産まれる話を親しげに打ち明けている短い回想シーンが挿入されています。フラジャイルの父親も配送会社であるフラジャイル・エクスプレスを立ち上げた配達人でしたが、プレッパーズであるエルダーと懇意にしていたということは、配達依存症を引き起こしていないことはもちろん、彼らの理念を侵害するような思想ももっていなかったと考えられます。それはフラジャイルが最後に書いた「束縛ではなく、お互いを繋いで、補完しあって生きていく。それは昔の国とは少し違う。そんな『アメリカ』を、父や私たちは実現しようとしているの」あたりの文章にも表れています。

フラジャイルももともとは、創設者である父の理念を継承した経営者でしたが、前回書いたとおり、ヒッグスとの衝突が大きな転機になったと考えられます。フラジャイルは父の代から築いてきたプレッパーズとの信頼関係をなげうって、見返りとしてヒッグスへの復讐劇にサムを巻き込もうとしています。どのみち一人で生きられないプレッパーズのことなので、配送もしてくれるブリッジズがセットになってついてくるアメリカ都市連合(UCA)への参入はそれほど害のある選択肢ではなさそうに見えますが、この後カイラル通信を通じて個のビーチが上位の絶滅体、アメリのビーチとつながり、大規模なデス・ストランディング現象による世の終末が訪れることを考えると、UCA という国家を築くことは、そのまんまアメリが世を滅ぼす下準備だったわけで、フラジャイルがなげうったものがいかに大きかったかという話になってきます。プレッパーズ連中はサム視点だと意固地な偏屈に見えますが、この点で彼らの理念もまた正しかったということが証明されています。

さて、よそ様のお手紙を読んで、クリプトビオシスも食べたことですし、地上に出てお仕事を始めようと思います。上りのエレベーターでは、また BB-28との接続時にナゾの男の映像が流れます。

今回の映像は短いもので、男が「BB、聞こえるか?」とブリッジ・ベイビーの愛称を呼びながらポッドを固体台から外して持ち出そうとしているシーンです。エレベーターで見るクリフォード・アンガーの映像は、そのときのサムがなにをどう感じているか、胸につけた BB-28に対してどう思っているかといった感情が反映されているんじゃないかと推測してきたんですが、もし本当に連動しているなら、BB-28を安全な場所に連れ出すために危険地帯を抜けようとしているみたいな感じでしょうか? ちょっとピンときませんが、サムとしてはこの中部エリアで活動を開始するにあたって、けっこう覚悟を決めてエレベーターから上がってきたのかもしれません。

エンジニア(シェルター23-06)へ、エボデボ・ユニットを配送し、カイラル通信の接続を依頼する。エボデボ・ユニットは、カイラル通信とカイラル・プリンターの特性を活かし、断片から構造物全体を復元する装置。試作品の段階である。

サム指名依頼 No. 19「エンジニアへ精密機械(エボデボ・ユニット)を配送」の依頼の詳細より

レイク・ノットシティの配送端末にアクセスすると、サム指名の新しい配達依頼が3件入っています。いずれもこのエリアに住んでいる住民のシェルターがお届け先です。前回アメリやダイハードマン、フラジャイルと話したとおり、ここのブリッジズの拠点はテロの攻撃を受けて一部が壊滅しており、残された拠点をつなぐだけではカイラルネットワークを完成させることができません。サムはブリッジズ第二次遠征隊として、この周辺の人々に荷物を届けて恩を売りつつ、各個人宅もカイラル通信につないでもらえるように説得しないといけません。そして願わくば、ブリッジズが推し進める UCA にも加入してもらえるようにジワジワ圧力をかけていく必要があります。

小説『デス・ストランディング』のサムはすべての荷物を担いでいっきに配達しているんですが、私は小分けにして、まずエンジニアさんのところへ向かうと決めました。彼はここらへんのプレッパーズのなかではかなり話がわかる友好的な人で、初回の配達を終えると「パワースケルトン」という新しい装備品をサムにくれます。パワースケルトンはサムの下半身に沿うように装着するデザインになっていて、身に着けるとサムが背負える荷物の重量が増します。現実では運送業もそうですけど、介護の現場とかでも、力仕事をする人たち用に実装されているパワーアシストとかマッスルスーツとか呼ばれている装置に似ていますね。今回、2周目をやるにあたって、配達人グレードが低い初期のサムはすぐに転んだり、荷物が持てなくなったりするだろうと予想していました。転びやすさに関しては案外、差を感じていなくて、むしろプレイヤースキルの差のほうが大きかったと思ったんですが、持てる荷物の総重量はやっぱり足りないんですよね。道中でちょっと目的地が同じ落とし物を拾うと、すぐに足が上がらなくなってしまいます。2周目プレイだと、雪山を踏破するようになった伝説の配達人サムの筋力がいかに常人離れしているかが実感できます。

パワースケルトン

この記事を書き終わったら、東部エリアの指名なし配達依頼を黙々と片付けていく配信を始めようと考えているんですが、効率的に片付けていくなら、パワースケルトンは必須の装備品になるかなと思いました。欲を言えばフローターもほしいんですけど、手に入るのはもうちょっと先なので、先にパワースケルトンが手に入った段階から少しずつ始めていくことにします。

エンジニアさんのところに届ける「エボデボ・ユニット」ってなんだろうと最初思っていたんですけど、物語の後半に専門家が出てきましたね。「進化発生生物学(Evolutionary developmental biology、通称“evo-devo”)」らしいです。なんか、急にかっこよく見えてきました。ただ、「断片から構造物全体を復元する装置」という説明が全然、生物学っぽくないんですよね。むしろ考古学みたいな、地中から掘り出した生物の化石とかを対象にしているってことでしょうか? 小説でも「ある任意の過去にある情報の断片から、その履歴を結びつけて全体を再生することも研究されているって聞いた。それが、きみが届けてくれた試作品のユニットだ」ってサムに話しているんですけど、よくわかりませんね。生物学だけど、人文学方面の進化も研究対象に含んでいるのかな?

追記 追記
のちのちエンジニアさんと親密度を上げると、このことを詳しく説明した以下のようなメールが送られてきました。

エンジニアのメール

「しかし、進化発生生物学の考えを物体に応用するとは天才的な発想だ」と書かれているので、やはりエボデボ・ユニットの対象は生物ではないようです。「人間の脳内にある過去の風景を、記憶を頼りに一枚の絵として再現することに似ている」という文章は、なんとなく FINAL FANTASY VII REMAKE のジェノバ細胞の所業を連想しますね。人間の「思い返す」という能力がビーチを解明するヒントかもしれないと教えてくれているんですが、これだけだとまだなんのこっちゃって感じです。サムが目的地の手前でよく後ろを振り返るのとなにか関係があるのかな?

岩

そんなよくわからないことを考えつつ、荷物を担いでレイク・ノットシティから一歩ずつそとへ踏み出していきます。目の前にまた変な形の黒い岩があったので写真を撮ってみました。上部がねじれているので、ちょうど腕相撲をするときみたいに、二人の人間の手ががっしり握りしめられた形に見えなくもありません。真ん中に空いた穴は、以前から私が書いている説だと産道による生まれ変わりの示唆なんですけど、エリアの切り替えで気持ちも切り替えていけってことかな?

小説には、デス・ストランディングが起こったあとに、ビーチからクリプトビオシスなどと一緒に、「大地の珊瑚」と呼ばれる物体が現れて大地に転がるようになったと書かれています。たぶん、クリプトビオシスが群がっているサンゴ礁のことだと思います。サムはどんどんビーチから来た見慣れない物体に置き換えられていく北米大陸の姿を見て、自分たちはやがて死にゆく存在で、能力者も最後にささやかな抵抗として咲くあだ花に過ぎないと考えています。儚い!

海で生まれた生命は、進化して陸へと進出した。それが定説だが、果たしてそうだろうか。海の生物にとって、陸はストレスがかかる厳しい環境だったはずだ。なのに、なぜ、彼らは陸へと出て行ったのか。
陸生へと進化した魚類の化石の発見場所と、潮の満ち引きの差異が大きかった場所が、かなりの確率で一致するデータが提示されたことがある。
これが意味するのは、潮が引いたあとに陸地に残された生物が、水に戻るためにやむをえず四肢を発達させた可能性があるということだ。つまり、座礁が進化の契機になったということだ。座礁した生物は陸地に適応し、海と陸を行き来できるようになった。
これと同じことが、クリプトビオシスと、結び目に生息するサンゴのような生命体にも起きたのではないだろうか。死の世界から座礁してきた生物は、生と死、時間と無時間の間で生息できる仕組みを手に入れたんだ。信じられないかもしれないが、これらはこの世界で最も進化した生物と言えるかもしれないんだ。

ハートマン

あれの正式名称って「大地の珊瑚」なんですね。生存競争で言うと、彼らが勝ち組で、サムたち人間は負け組ということになります。サムはそのサンゴ礁を見て「鯨の脳髄のような物体が転がっている」と述べています。正直「サム、鯨の脳みそ見たことあるの……?」という疑問しか湧いてこなかったんですが、鯨の脳ってどんな見た目なんでしょう……? サム、なにげに捕鯨船で働いたことでもあるのかな? 北米大陸の和歌山県太地町育ちとか?

クラゲ型 BT

脳と言えば、エッジ・ノットシティ周辺で多数見られるこのクラゲ型 BT だと思うんですよね。ブリッジ・ベイビーは脳死した母親の胎内から取り出されて製造されますし、BT の概念と密接に関わっている古代エジプトの死生観では、心臓のほうが重要で、脳の重要性は皆無と言っていいほどの扱いでした。どちらも脳の存在が不気味なほどありません。ただ知力を司る臓器という点で見ると、アク相当、つまりカーの成れの果てと見られる通常の BT の上位の存在だったりするのかなと考えていました。これにクリプトビオシスは群生しているんですよね。どういう関係なんでしょう?

国道

レイク・ノットシティから出てトボトボ歩いていると、見慣れない装置が視界に入ってきます。デザインからして明らかにブリッジズの装置です。装置を調べると、かつてここにあった国道を復旧させるための装置だとダイハードマンが教えてくれます。

そこには都市を繋ぐ『国道』が通っていた。第一次遠征隊が舗装用の装置を設置したが、復旧させるにはさらに素材が必要だ。

ダイハードマン

国道は険しい山間のシェルターを除いて、中部エリアと西部エリアの主要都市を結ぶ舗装道路で、厄介な地形やミュール、テロリスト連中を避けてのんびりバイクやトラックで安全に移動できます。実際のアメリカ合衆国の国道や州間高速道路と関連があるかもと思って地図とにらめっこしてみましたが、とくに関連性は見つかりませんでした。国道はあると便利なんですが、ダイハードマンが言うとおり、完成させるにはあちこちから金属やセラミックなどの必要な素材をかき集めてこないといけないので骨が折れます。なくてもクリアには関係ないので、ある意味やりこみ要素です。今回は2周目ということで効率を優先して、国道造りは後回しにします。先に都市をカイラル通信でつないで国道復旧装置を通信圏内に入れておくと、ブリッジリンクでほかのプレイヤーがどれくらい素材を投入したかという進捗もある程度反映されて、必要な素材数を抑えられます。前回で国道は全部つないだので、今回はインターネットの向こうのサムワンに仕事を放り投げて手抜きするつもりです。その代わり、国道がないと配達が困難になるのも事実なので、どこで国道造りに切り替えるかはこの難易度のバランスを様子見してから決めることにします。

国道はしばらくいいと言いつつ、頻繁に往来するレイク・ノットシティを出てすぐのところにも脅威があって、サムを襲ってくるミュールの集荷基地が設営されています。うちのサムとつながっているどこかのサムワンが設置してくれた簡易観測塔でのぞくとすぐ目の前に見えます。

レイク・ノットシティのそばのミュールの集荷基地

小説のサムはレイク・ノットシティを出てからすぐテロ攻撃の痕跡を目にしています。貝殻が描かれた看板の朽ちたガス・ステーションがあったと書かれているので、もしかしたら開発初期の乗り物は電気駆動ではなく、石油事業を手がける企業とコラボレーションでもして、ガソリンか天然ガスか、未来の燃料で駆動する仕様になっていたかもしれません。

ゲーム内でもレイク・ノットシティからしばらく南下すると、もともと舗装道路だったらしき場所が大きく陥没して、自動車ごと穴に崩れ落ちて朽ちている場所が見つかります。中部エリアは東部エリアに比べて道中の危険が増すという前触れです。ミュールについては、レイク・ノットシティの配送センターを出てすぐのところで、ダイハードマンが通信で丁寧に警告してくれます。

その一帯はミュールの活動地域だ。ときにはミュールを避けて進むべきだろうな。彼らに捕まらないように。彼らはもともとこの世界を復興させるために、身を呈して物資を届けた人たちだった。荷物を届けてもらった人々が感謝をしてくれたら、それで満足だった。だが、彼らの崇高な理念は次の世代になるといつのまにか忘れ去られた。復興も感謝も、彼らには関係なくなってしまったんだ。

ダイハードマン

人々を救おうと活躍した配達人たちが配達依存症を発症して集団人(ホモ・ゲシュタルト)に落ちぶれてしまったのはとても残念なんですが、ここのダイハードマンの言葉も、社会に出て一度働いたことがある人ならなんとなく違和感を覚えると思います。「荷物を届けてもらった人々が感謝をしてくれたら、それで満足だった」は、配達した当人が言うことで美化される言葉で、第三者、それも配達人を統括する立場にある組織の司令塔が言うとブラック企業にありがちな搾取になってしまいますよね。

たとえ英雄と呼ばれるような人でも、生きていくには荷物を届けてもらった人々と同じように生活費や物資が必要なわけで、むしろ活躍している分だけ上乗せされる正当な分け前が求められていたはずです。現代社会でもボランティアとキレイな名称で呼びつつ、タダで人を酷使するひどい労働形態がたびたび問題視されることがありますが、世紀末ではおそらく正当な分け前なんてもっと期待できないでしょう。ダイハードマンは「崇高な理念は次の世代になるといつのまにか忘れ去られた」と、まるで次の世代を悪者扱いするように言っていますが、忘れ去られた非は、真っ当な報酬システムを用意せずに配達人を酷使するだけした周りの人間にもあったはずです。根性論で人を酷使するブラック企業でしばらく社畜をしたら、仕事に理想を求めようとしない人間になるのも当然の進化です。以前からブリッジズにはブラック企業の象徴なのではないかと思われる描写があったので、ここって、ミュールに落ちぶれる者にも落ちぶれる理由があったという事情を表しているんじゃないかなと私は感じます。

小説版のサムが、配達中にこの中部エリアの地形を眺めながら、ここらへん一帯の情勢をあらためて説明してくれています。

この地域は本来、乾燥地帯で時雨の影響がなかった。だから、デス・ストランディング初期の破壊と、数か月前に起きた破壊の跡が共存している。バイクやトラックを破壊したのは分離過激派たちだが、旧世界の破壊をおこなったデス・ストランディングの正体はいまだにわからない。

プレッパーズたちが多く居住しているのも、時雨が降らなかったからだ。BT が出現することもなく、物資の配送さえ保障されていれば、生存はそれほど困難なことではなかった。ところが、頻発するテロ行為のせいで、安息はできなくなった。破壊活動のせいで死者が増え、死者は BT となり、時雨を降らせるようになった。分離過激派の行為は、この一帯の生存環境を一変させてしまったのだ。

小説『デス・ストランディング』

中部エリアは、今までいた東部エリアと違って、岩肌がむき出しになった乾燥地帯が目前に広がります。実際の北米大陸も西のほうに乾燥地帯が広がっているので、原初の形に戻りつつあるある北米大陸でも、地質や気候の変化は自然な話なんでしょう。実際はまだミネソタ州かサウスダコタ州あたりだと思うので、ゲームのような乾燥地帯に出るのはもうちょっとあとですが、デス・ストランディング現象に見舞われた北米大陸では、これくらい誤差の範囲なのかもしれません。

過去にサムは小説で、時雨の雲はデス・ストランディング前のように風で運ばれることがなく、まったく別の法則と力学で形成されていると述べています。小説の記述によると、時雨にはおそらく2パターンあって、通常の雨がデス・ストランディング現象で時雨化したものと、もうひとつが BT の座礁によって超自然的な仕組みで降る時雨なんでしょう。サムがまったく別の法則と力学で形成されると言っていたのは、後者のほうだと思われます。デス・ストランディング現象が起き始めた当初は、時雨と言えばもっぱら普通の雲から落ちる雨と同じ仕組みのものだったと考えられます。だから、もともと降雨量が少ない乾燥地帯のほうが被害が少なかったという話になるんですね。時雨の脅威がこの中部エリアで現実的になったのは、テロ活動が活発化して BT が急増した最近のことです。ということは、もともとサムが第二次遠征隊になるちょっと前まで、西側のエリアのほうが平和だったということになります。プレッパーズが意地を張れていたわけです。絶滅体を擁するブリッジズのお庭のほうが被害が大きいなんて皮肉ですよね。西側の大陸が最近になって危険になったのも、アメリの絶滅計画の下準備でしょうしね。

ここの配達仕事でお届け先になっているプレッパーズは、みんな本名ではなくエンジニアやエルダーなど、わかりやすいあだ名のような名前で呼ばれています。お届け先が住人の特徴を表す記号のような名前になった経緯を、時雨で街などの人工物が溶け、原野にシェルターがポツポツと点在するだけの世界になって、従来使われていた住所のようなシステムが機能しなくなったからだと小説のサムは述べています。これを旧世代のインターネット文化の名残と言う人もいるそうです。ハンドルネームみたいなものということでしょうか? となると、北米大陸自体がインターネットであるという解釈をもとにしているのかな? 以前からインターネット網を表す“web(クモの巣)”は、ブリッジズのロゴにも見られるので、女郎蜘蛛の絶滅体とカイラルネットワークを掛け合わせた意味があるんじゃないかと書いていました。ハンドルネームは本来インターネット上で素性を隠すために使われていたところがありますが、人口が極端に減ったこの北米大陸では、逆に個人をわかりやすく特定する名前になってしまっています。というか、この記号的なあだ名って、女郎蜘蛛の手足になって働いているブリッジズのメンバーのコードネームと実質一緒ですよね。もはやプレッパーズも最初から絶滅体の手のひらの上で転がされていた感じがして、薄ら気味悪いところがあります。

ダミー荷物[スモーク]
配送伝票が貼られたダミーの荷物。
ダミーの ID タグが付けられているため、荷物センサーに検知され、ミュール達を陽動すること等に使える。
破壊されるとその瞬間、スモークを放出、周囲にいる者をかく乱したり、視界を塞いだりできる。

2周目の今回はハードモードなので、ミュールがちょっと強くなっています。まだ対抗する武器がない今の段階では、むやみに突っ込まずに、安全に逃げることに集中しようと思います。そこでちょっと試してみたのが、前回から作れるようになった「ダミー荷物」です。これをヤツらが来そうな場所に置いておいたり、投げ入れたりしておくと、人より荷物を目的としているミュールが食いついて、そのあいだにサムが逃げる時間稼ぎができます。初見プレイの時は一回も使わず、ゴリ押しでサムを突進させてみんな倒していましたが、おもしろそうなので今回は使ってみます。

荷物 ID タグが付いてはいるけど、中は空っぽの荷物ケースね。他人の荷物を欲しがるような相手を欺くのに使えるかもしれない。

ママー

どういうふうに機能するのか気になったので上の動画を撮影してみたんですが、けっこう長いあいだ煙たがっていますね。むしろえずいていますが、どんな成分なんでしょう? 時間稼ぎは十分できそうです。ダミー荷物を破壊したあとに背中を向けて棒立ちするのも仕様かな?

エンジニア邸

まあ、実際はエンジニアさんのところぐらいなら全力ダッシュで走り抜けることもできるので、すぐにシェルターにたどり着けました。遠くにミュールのテントが見えています。いくら透明な防御壁でセキュリティ措置を講じているとは言え、こんな距離でシェルターのそとに太陽光発電パネルや貯水塔を置いておくのはちょっと不安ですよね。シェルターのなかはめちゃくちゃ狭そうだし、精神的にやられる人が出てきても、たしかにおかしくなさそうです。

フラジャイル・エクスプレスのロゴをくぐり抜けてエンジニアさんにエボデボ・ユニットをお届けします。エンジニアさんは「フラジャイル・エクスプレスが機能しなくなって困っていたんだ」と言っているので、この地域でブリッジズが配達業務を委託されるようになったのは、テロ攻撃でフラジャイル・エクスプレスが事業を続けられなくなっていたからだとわかります。これもアメリがヒッグスを使って整えていた下準備でしょうね。かわいそうなフラジャイル……。

小説ではフラジャイルが気を利かせて、先にプレッパーズに代理人が配達にくると知らせてまわってくれています。みんな見慣れないサムのことを怪しみながらも、フラジャイル・エクスプレスの代理で配達しているブリッジズの配達人ときちんと認識してくれているので、シェルターに迎え入れて配送端末に黙って触らせてくれるし、受付の相手もしてくれます。エンジニアは先にも書いたとおり、比較的サムに友好的な人で、当人の弁によるとシェルター生まれの第二世代で、プレッパーズとしての性質がそれほど強くないからだそうです。小説の記述を読む限りだと、好奇心あふれるオタク気質があるからだと思います。ブリッジズで開発中の装置、つまり今回運んだエボデボ・ユニットを使えるならブリッジズに協力すると申し出ていたそうです。彼の場合、オタクって言っても、英語で言うならガリ勉、研究家気質の“nerd”系の人だと思います。シェルターの奥に引きこもる生活に、さらに超高速インターネットがつながるって、オタクの夢じゃないですか? こう考えると彼が「楽しみだ!」とサムにカイラル通信接続を促す気持ちがわかります。彼のモデルは小島監督と親交がある漫画家の伊藤潤二さんだそうです。なんか納得!

彼は、テロリストの片棒を担いでいたというウワサがまことしやかに流れているフラジャイルに対しても友好的で、「彼女たちはいつも身体を張って荷物を届けてくれた。彼女こそが英雄だよ」と根も葉もないウワサを一蹴してくれます。気持ちいいですね。サムもこの点についてはエンジニアの意見と同じことを考えているようです。

プレッパーズ第二世代の彼は、次に荷物をお届けする予定の現役第一世代のエルダーと対比できる存在なんですが、第二世代と言うと、上で述べた集団人(ホモ・ゲシュタルト)に落ちぶれてしまったミュールとも比較できる存在だと思います。世代を経ると、それまで個として蓄積されてきた知識や処世術にいったんリセットが入って、より柔軟に環境に適応できる個体が現れるようになります。だからミュールもある意味、この世界に適応した進化形のひとつだと思ったんですよね。エンジニアの場合は、親と同じ理念を継承せず、国家に迎合することを選びました。こう書くとフラジャイルも同じ道をたどったことになりますね。それが彼ら個人の生きやすい環境を用意することにも役立ったからですが、ここらへんの細かい判断にも絶滅を避けられるかどうかの結末が関わっていておもしろいですよね。なにがよくて、なにが悪いか、なにが正解かではなく、いかに厳しい環境のなかで個が生き延びて進化し続けられるかの話なんだと思います。今回の場合、結果的に彼らは絶滅体に主導権を明け渡して絶滅の可能性を高めています。なんか諸行無常ですね。

とは言え、エンジニアさんがサムに協力的なのは、サムを操作するプレイヤーの私としてはおいしい話でもあります。さっそくパワースケルトンが手に入りましたし、彼はこの後も便利アイテムを開発してくれます。

エンジニアからのメール

配達が無事に終わったので、次の配達依頼を受けるためにレイク・ノットシティまで戻ってきました。ついでにミュールの基地からメモリーチップだけ回収してきました。プライベート・ルームでいったん休憩すると、さっそくエンジニアさんからハートマーク付きのメールが届いていました。この世界のオッサンは相変わらず文面を華やかにしてくれるゼ!

実際、この中部エリアはみんなブリッジズのやっていることに懐疑的なので、エンジニアさんみたいに前向きに喜んで協力してくれる人は貴重です。サムのメンタルのバランスをとるためにも必要な存在なのかもしれません。

彼はそれだけでなく、ブリッジ・ベイビーと接続してサムが使っているオドラデクについて、「以前は対人や対物センサーとして、様々な工夫や改造がなされていたらしい」という情報を教えてくれます。こうしたかつての機能は、ブリッジ・ベイビーとの接続を優先するなかで削ぎ落とされてしまったようですが、ブリッジズのオモチャを手に入れた彼がオタク頭脳パワーを発揮してくれることで、その機能がこのあと少し復活します。ハードモードの今回は、もしかしたらダミー荷物のように使う機会があるかもしれません。サムの配達仕事だけを見ても、彼はものすごく献身的な人です。

エンジニアの文書

あとでエンジニアさんが2年前に書いた「プレッパーズ/エンジニアの過去」という文書も読むことができます。この文章を読んでも、エンジニアさんがアメリカという国家やフラジャイル・エクスプレスにいかに好意的かわかります。「自分はアメリカの子供」だとか、「この家(シェルター)もアメリカの一部」だというふうに、エンジニアさんが確立した愛国者としてのアイデンティティも、この北米大陸に残された人々の考えかたのひとつで、人口が減ったこの世界でも十人十色であることは変わらないことが表されています。こういうの、リアルでいいですね。

エンジニアさんの父親もエンジニアだったらしいですね。シェルターに引きこもる生活だと、親の影響がダイレクトに子供の将来に出るんでしょうね。それはそれで恐ろしい……。

あと、レイク・ノットシティのプライベート・ルームで休んだときに、BB-28の様子を見たら、2周目プレイで初めて悪夢を見ることができました。体感的に、物語が進むほど見る頻度が上がることはわかっていたんですが、東部エリアでは一切見なかったのが逆に不思議だったんですよね。こんなもんだったかな? 具体的なトリガーがなんなのかはわかりませんが、初見プレイ時にイヤほど見たデッドマンの顔はまだ入っていないので、物語の進行に合わせて複数バージョンあったみたいです。こんな細かい違い、意識して見たことありませんでした。

BB-28がポッドを頭突きで叩き割って出てくる演出に恐怖を感じるのは当然だと思うんですけど、逆にサムが恐れているものとして意識して見ると、ブリッジ・ベイビーがポッドから出てくることはなにか意味でもあるのかな? もしかしたら自分がポッドのそとへ出る、つまり母のような存在の絶滅体の保護下から離れることに恐怖を感じているんでしょうか?

上の映像は後味が悪いので、ご機嫌でポッドのなかをクルクル回る BB-28の映像を編集で最後にくっつけておきました。サムの奥さんはお腹の子供がサムと同じ能力者だったことで妊娠後期に絶滅夢を頻繁に見るようになっていたそうですが、妊婦や産後すぐのお母さんって、それでなくても気分が落ち込みやすいので、こんな悪夢を頻繁に見たなら、そりゃ神経もやられるわと思いました。

追記 追記
この後すぐにデッドマン・バージョンの悪夢も見ました。体感的には今のところ東部エリアでは悪夢を見ない気がします。

ポッドへ近寄るところからしてカメラワークが違うので、すぐ悪夢だなと気づけますね。BB-28がデッドマンになる悪夢はなにを暗示しているんでしょうね? 生者でも死者でもない両者が似通った存在であることはもちろんですけど、これだと BB-28がデッドマンみたいになることをサムが恐れている印象になってしまいます。たんなるビックリ要員としてデッドマンに白羽の矢が立っただけかな?

プライベート・ルームから出るときのクリフは、白ワインをご機嫌で飲んでいる映像でした。このワイン、インターネット上のウワサによると、演者のマッツ・ミケルセンさんの代表作『ハンニバル』で、主役のハンニバル・レクターが大好きな白ワインだそうです。博士お気に入りのワインのひとつとして「シャトー・ペトリュス」という名前が出てきたんですけど、こっちは赤ワインですよね。シャトー・ペトリュスは今や五大シャトーをも凌いで、世界でもっとも高値で取引されることがあるワインと言われているので、この白ワインもクリフ・パパがかなり奮発して買ったものかな?

LOW ROAR

最後に、ここのミュールの基地で拾ったものじゃないんですけど、これまで見つけたメモリーチップのなかに、今作でたびたび楽曲が流れている LOW ROAR と小島監督がいかにして出会ったかという小話が書かれていました。「自分が好きになった人と一緒に物を創る、というのが小島監督のスタイル」だそうです。私は METAL GEAR SOLID とかの代表作のシリーズ作品をあんまりやっていないので、小島監督の作風には詳しくないんですが、自分が好きなものにはネコ並みにまっしぐらなのはなんとなくわかります。

先日、うちでほかにプレイ日記を書いているスクウェア・エニックスの作品が完全版商法じゃないかと疑われる作品の売りかたをしていて、私もあまりいい気がしなかったので、今後は同社の作品について更新するのはやめようと考えているんですけど、小島監督の場合は、DEATH STRANDING の PC 版が出たときも、きちんと既存の PlayStation 4版もアップデートしてくれて、写真撮影機能とかがあとあと搭載されたりしたんですよね。だから、仕事に関しては常識的な感覚を持たれていると信じています。

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