パンデミック待ったなしのコロナウイルスのおかげで人と人とのつながりが薄れつつある現実に生きるみなさん、お元気ですか? 私はまだ風邪もひいていませんが、暖かくなっていろいろなものが空気中を漂い始めたので鼻だけは立派に詰まっています。どうやらサムには北米大陸だけでなく、日本列島もつなぎ直してもらわないといけないようです。さぁ~て、今日のサムさんは――?

今にも爆発しそうな死体とおっさん三人を乗せて、北にある死体焼却所へ向かったトラックが、BT の座礁地帯を突っ切ろうとして見事に横転事故を起こしたのが前回までのあらすじです。今回は足止めをくらったおっさんズに BT が襲いかかり、一番運が悪かったイゴール先輩がサムの目の前で大爆発を起こします。

トラックが盛大に横転したので、荷台にいたイゴール先輩とサム、それからポップアウト寸前の死体袋は車から投げ出され、運転手はトラックの下敷きになってしまいました。サムが目を覚ますと、そこには浜に打ち上げられたかのような無数のカニがひっくり返っていました。潮の匂いがするどころの話ではありません。

赤ラメの血を流す男

このムービーを初めて観たとき「なんでサム、ブーツに赤いラメつけてるん?」と思ってしまいましたが、これは単純に流血の表現なんですね。CERO とかの規制対策かな?サムはどうやら今回の事故で足を故障してしまったようです。大事な商売道具なのに……。

時雨を受けるサム

足を痛めて意識が落ちているらしいサムにけっこう激しい時雨が降り注ぎます。この角度、明らかにあごが雨にさらされています。サムもよく見るとイゴール先輩みたいに口髭に白髪が交じって色素が薄くなっているんですけど、これだけ時雨にさらされるとヒゲに白髪が交じるどころではなく、皮膚組織ごとやられると思うんですよね……。

個人的には左肩の機材もすぐにやられそうで心配になるんですが、こういう装備品ってカイラル物質のコーティングがしてあったりして時雨対策万全なのかな? このムービーの運転手の老化スピードや、のちのフラジャイルの状況を考えると、数分時雨を浴びるだけでお爺ちゃんお婆ちゃん並みの外見になるようです。60年ぐらい時間が進んでると仮定して考えたら、装備も60年経つとけっこうな経年劣化を引き起こしますよね。なにか対策がしてあると考えるのが自然かも。

ドリームキャッチャー

なんでこんなことを書くのかというと、こうやって装備品まで心配していくと、背中の背負子にくくりつけてあるドリーム・キャッチャーが気になったからなんですよね。ブリッジズの装備品は時雨対策がしてあっても自然なのでまだ納得できるんですが、ホイと家族から過去に渡されたお守りがデス・ストランディングの外の世界に長年さらされて原形を維持できるのは異常です。それはこのドリーム・キャッチャーを渡した人物がアメリという絶滅体だからできる特別なことなんだと思います。そもそも渡された場所があのビーチだったので、ここに持って来れているあたりですでに特別なアイテムではあるんですけどね。

時雨と写真

サムはフラジャイル嬢と雨宿りしていたときに、懐から家族との思い出の写真を落としています。その写真のちょうど妻の顔のところに時雨の粒が落ちて、妻の顔はぼやけてしまっています。でも、アメリとのつながりを象徴するドリーム・キャッチャーは、どれだけ時雨を浴びても朽ちる様子を見せません。アメリはのちにサムの育ての親であるストランド大統領と同じ存在であったことが判明します。妻のつながりは色あせていくのに、母のつながりは消えずに主張することをやめないところに、絶滅体というか母の執念を感じます。怖い!

年をとる運転手

サムが目を覚まして近くの死体袋に駆け寄るのとほぼ同じタイミングで、意識を取り戻したイゴール先輩も、トラックの下敷きになったドライバーを助けようと駆け寄っています。先輩の上半身である程度の雨は遮れても、運転手の老化はどんどん進んでいきます。なにげに歯の老化が一番リアルで怖いです。この運転手は死ぬまで雨を浴び続けて、BT のハンターにタール溜まりに引きずり込まれるころには頭もハゲ上がって頭皮のシミが見えていました。怖い!

息もするな!

サムが「息もするな!」と言ったとき、初回プレイ時は「そんな無茶な!」と思わず声を出してツッコんでしまいました。

周囲が BT だらけなのは、能力者でもないイゴール先輩でも気配がわかるぐらい明白なようです。小説版 DEATH STRANDING のイゴール先輩はこのシーンで必死に過去に読んだマニュアルの内容を思い出しているんですが、運転手を助けに行ったときは目の前の惨状に冷静さを失ったようです。サムに言われて「そうだった」と我に返っています。私みたいに「そんな無茶な!」と言い返して BT にバレるうっかりさんではないようです。

BT が視覚情報に頼らず、音で生者を探しているという設定は、おそらく座礁鯨つながりからきているものだと思われます。集団座礁の原因はまだはっきり解明されていませんが、なんらかの理由でエコロケーションの機能が狂うからという説が今のところ一番有力です。サムたちが肩に積んでいるオドラデクのセンサーも BB がエコロケーションの技術を応用して機能させているらしいことがゲーム内のドキュメントで示唆されています。

エコロケーション

北米大陸の生者側からも BT は基本的に視認できません。ハートマンはこのことについて、これまでの物理現象の常識が通用しなくなったと語っています。おそらく向こう側も視覚はまともに機能せず、音に頼るほうがいい環境なのでしょう。陸でもコウモリみたいに超音波で位置情報を把握している生物はいますが、こういう世界観だと、やっぱりもう北米大陸は半分死の海のなかみたいな環境になってしまっているからかなという考えがよぎります。

手形

先輩と運転手のそばに BT がやってきますが、サムにツッコまずに素直に手で口を覆って息を止めていたため素通りしていきます。サムの助言で命拾いした形です。初見だとここもけっこうなホラーポイントですよね。なにげにこのシーンでは BB がきちんと BT をスポットしています。スクリーンショットをよく見ると BT の手形は地面だけでなくトラックにもめり込んでいるので、BT にはけっこうな力があるようです。怖い!

黄金の仮面

一難去ってまた一難で、今度はサムのそばの死体がネクローシスを起こします。死体はタール溜まりのなかに沈んで消え、その代わりにその場に新しい BT が出現します。サムはたまらずその場に尻もちをついて、ぼんやりとわずかに浮かび上がる BT の影を見上げます。ほぼほぼ無意識に気配を感じ取ってそこに目をやっているだけでしょうけどね。これをもってサムたちの任務失敗確定です。でも、どうせここは最初から座礁地帯なので、もう1体追加で迷える魂を放流したところで影響は少ない気がします。あとの問題はサムたちが生きて帰れるかどうかです。

初見のときはこのネクローシスの様子を見ても「こんなふうになるんだ~」程度のチュートリアル感しかなかったんですが、一通りプレイして、フィールドにいる人間の敵にお手製のネクローシスをやってもらうと、2周目のこのムービーでちょっと違和感が生じるようになりました。

ゲーム本編のプレイ時に通りすがりのミュールさんにネクローシスしてもらっても、黄金の仮面は浮かび上がってこないんですよね。お腹に黒いシミが浮き出てきて、そのうちタール溜まりになって沈んで消えてしまう流れは一緒なんですが、死体全体から湧き立つ金粉みたいな光以外は、顔にとくに金色の粒子が集まる様子も見せていません。

小説版でもイゴール先輩が死体袋の変化に言及して、一生懸命マニュアルの内容と比較しているんですが、金色に光る顔が異常だとまでは指摘していませんでした。自身の経験でもない、記憶のなかのマニュアルと比較しているので正確に指摘できるわけないし、そんな細かい一部分の特徴だけ取り上げている状況ではなかったって言うとそれまでなんですけどね。

顔全体を覆うドクロのような仮面は、サムのお義母さんのストランド大統領が昔愛用してダイハードマンに引き継がれているもののほかに、このあとすぐに登場するヒッグスも目に丸いグラスが入ったものを着けています。仮面の意味についてはマスクの話にも書いたんですが、嘘つきの仮面や真実を捻じ曲げる者の仮面のような解釈が一番しっくりくるんじゃないかと私は考えています。この死体、じつはただの自殺者の死体ではなく、特別な BT を呼び起こすように細工された死体だったんじゃないでしょうか? というのも、あの場にはヒッグスがいました。ヒッグスがいるということは、おそらく親玉のアメリも関与しているはずです。絶滅体なら、なんとでも細工できるんじゃないでしょうか? 通りすがりのミュールの死体はとくに大きな痙攣も見せずにタールに沈んでいきますが、イゴール大爆発のときの死体は、顔の仮面を外そうと顔をことさら大きく振っているようにも見えます。誰にも発見されずに放置された死体が対消滅を起こすのは、サムの奥さんとも共通していて、なにか因果を感じさせます。

サムの血液で止まる BT

死体がネクローシスしてからの展開は、ゲームと小説で少し違います。ゲームだとおそらく尻もちをついたサムに迫っているのは死体から出たばかりの BT です。小説だと死体から出た BT の姿はまだ見えておらず、「ネクローシスした」と思わず口走ってしまったサムのもとに、イゴール先輩の近くにいた BT が向かっていく流れになっています。いずれにせよ、サムに迫った BT は、サムの足から流れ出た血に触れて戸惑い、しばらく動きをとめます。その代わり、隙を見たイゴール先輩がトラックの下敷きになった運転手を救い出そうとして、痛みに耐えきれずに悲鳴を上げた運転手にターゲットが切り替わります。

イゴール、うしろ~!

運転手の叫びで BT のターゲットが定まると、恐ろしい死者の気配を感じたイゴール先輩が思わず立ち上がってうろたえ始めます。このシーンをよく見ると、画面向かって右側、ちょうどオドラデクの隣あたりに、ふわふわと浮く BT の影が見えます。

志村うしろ!

タール溜まりのなかでハンターにつかまれて、本格的にパニックを起こした運転手は助けを求めることをやめません。やむを得ずイゴール先輩が銃を構えます。このときもオドラデクの向かって右側に同じ BT の姿が見えるんですが、銃口左上ぐらいの岩のところにももう一体チラリと姿が見えます。画面右の個体は腕を下ろしていますが、左の個体は腕を組んでいるようです。これって、腕を組んでいるんじゃなくて、エンディングのビーチに浮かび上がる5体の影と同じで、赤ちゃんを抱いているポーズなんじゃないでしょうか? 腕を組んでいる、あるいは赤ちゃんを抱いているこの BT の影は、運転手がハンターに引きずられていく先にも映り込んでいます。

BT のホログラム

物語を進めると建造物のそばに表示されるホログラムに BT を指定することもできるようになるんですが、そのホログラムで表示される姿はこんな感じです。ちょうどイゴール先輩の背後に浮いている個体に似ている気がします。上の通りすがりのミュールにネクローシスしてもらった動画でもそうですが、フィールドに漂う雑魚 BT のゲイザーはここまであんまり直立していないんですね。だから、尻もちをついたサムが見上げた BT や、イゴール先輩の背後に見えた BT はちょっと特別な個体だったとしても驚きません。

ヒッグス

爆発を起こしかねない運転手をイゴール先輩が処刑したことで、銃声があたりに響き渡ります。するとヒッグスが「シー!静かに!」とでも言いたそうなジェスチャーをして天から舞い降りてきて、イゴール先輩の背後を指さします。今まで映り込んでいた BT がいる方向です。

ヒッグス

2周目プレイになると、あれだけデリバリーピザを食べていたヒッグスがピザ体型じゃないことにリアリティのなさを感じます。私は幻滅しました! なんでお前はピザじゃないんだ……。お前はピザじゃないとダメだろ。

背後を振り返る BB

オドラデクはイゴール先輩の体が向いている正面に反応していますが、胸のポッドの BB は先輩の背後を見ています。この差がよくわかりません。

小説版の語りだと、このとき肉が腐ったような、よどんだ水のような不快な臭いが立ち込めて、分厚いカイラル雲を突き破って咆哮が聞こえてきたと書かれています。鳴き声でも叫び声でも威嚇する声でもなく、ただそこで立っている者の意志をくじく不安な声と表現されています。BB は痙攣して動かなくなり、オドラデクは空中の一点を指して十字型になったそうです。ここもゲームと小説でちょっと違いますね。さらに小説のイゴール先輩はヒッグスがいた方向に向かって銃を乱発していません。ヒッグスの姿はすでになかったし、あれは誰を撃ちたかったのかな?

Hideo the BT

まもなく周辺がタールの海と化して、イゴール先輩が BT のハンターに引っ張られ始めます。ゲームだと銃声を轟かせていたので自業自得ではあります。よく見ると右側のハンターは眼鏡をかけているようなので、これがウワサの小島監督ですかね?

BB を放り投げるイゴール先輩

ここで諦めがついたのか、イゴール先輩は「逃げろ!」と言って、胸の BB ポッドをサムに投げ渡します。小説では対消滅に関するマニュアルの内容を思い返しながら、誰が書いたマニュアルだよというツッコミを入れる妙な冷静さが出てきています。

最初にプレイしたときは、欠陥品の疑いがある BB をわざわざサムに渡そうとする先輩の心理がよくわからなかったんですが、ムービーをあらためて見返すとこの一連のシーンだと BB もそれなりに機能しているようなので、サムの生存率を少しでも上げるために託した可能性がありそうです。もうひとつ考えられるのは、小説版ではサムを逃がそうと必死になっていて「逃げろ。そいつと一緒に逃げてくれ」とサムと一緒に無事を願っていたことがわかりますので、イゴール先輩にとっても、BB は装備品以上、人間未満みたいな、装備品として支給されたものであっても最悪の事態からは救ってあげたい命のひとつだったのかもしれません。

中吊りのイゴール先輩

ハンドガンを失い、宙吊りにされ、それでもナイフで自殺を試みるイゴール先輩の背後をみると、無数の黒いへその緒が天に伸びていることがわかります。黒い粒子の帯はそこに BT がいる証しであり、のちほどサムを実際に操作してフィールドを探索する際の目印になります。文字通り、あらためて、ここは BT に囲まれていたことがわかります。

BT キャッチャー

イゴール先輩は吊るされたまま巨大な BT のキャッチャーに飲み込まれてしまいました。キャッチャーの内部には反物質が蓄えられているという設定で、イゴール先輩がなかに入って反応を起こすことで大爆発が起こるという理屈らしいです。

頭部がカイラル結晶のように手首を合わせた両の手のひら型になっていて、指がへその緒になっている人型のキャッチャーは、アメリを助けに EPISODE 9でエッジ・ノットシティへ行った際に戦うことになるボスと同じです。このボス戦ではアメリがキャッチャーに捕らえられていて、同じく寄生するようにキャッチャーから生えたヒッグスを狙いながら戦います。ヒッグスはけっきょくアメリの腰巾着でしたから、このキャッチャーを操っていたのは実質アメリです。このイゴール大爆発も、アメリが仕組んだことだったんじゃないでしょうか?

指さし ビーチと結び目に続く
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