ブリッジズ第二次遠征隊として、K2西配送センターで配達依頼を着々とこなしている運び屋のサム。前回は配達というより、ミュールに奪われた荷物を奪い返すために殴り込みに行く任務をこなしていました。今回は荷物を現地調達するお仕事をしていきます。社畜なので、なんでもやります。

今回やっていくのは、前回の配達依頼と一緒に追加されていた新しいサム指名配達依頼の No. 8「座礁地帯から『カイラル結晶』を回収せよ」です。この K2西配送センターに来る途中で通ってきた北東の座礁地帯に戻って、そこで地面から顔を出しているカイラル結晶を回収してこいという依頼内容になっています。

サム指名配達依頼の No. 8「座礁地帯から『カイラル結晶』を回収せよ」

カイラル結晶を1cg 以上回収、K2西配送センターの配送端末からリサイクルする。カイラル結晶は貴重な物質で、時雨が降りやすい場所などに出現する可能性が高い。

サム指名配達依頼 No. 8「座礁地帯から『カイラル結晶』を回収せよ」の依頼詳細

「1cg」の単位ってなんだろうなと思って調べてみたら、たぶん「センチグラム」じゃないかなってことでした。つまり0.01g であり、10mg でもあるという感じです。わざわざこっちの表記にしたのは、単位にカイラルの頭文字の“c”が入っているからかな? それとも、本当に新しい単位の “Chiral Gram”だったりするのかな?

カイラリウム回収容器

この配達依頼を受注することでやっとカイラル結晶を回収できる容器が手に入りました。いつぞやは回収できないのが変な感じだと言っていましたが、やっぱり道中の地面から生えていると、ついでに取っておきたくなっちゃうんですよね。

依頼を受けて K2西配送センターを飛び出すと、意外とすぐ目の前の地面から生えているカイラル結晶を発見できます。このタイミングで、いつでも監視して口出ししてくるダイハードマンが、カイラル結晶の見つけかたを細かく教えてくれますし、ここで回収したカイラル物質は、配達依頼の達成条件としてちゃんとカウントされるんですが、正式な配達依頼内容では、指定の回収エリアはもう少し先の川の下流の中州なんですよね。

ハートマンの言葉を借りると、カイラル結晶は金色で、まるで人の手のひらのような形をしています。時雨(タイム・フォール)が降る場所によく見られ、この結晶の影響で周囲の小石が浮いています。

カイラリウムは、あの世の入り口であるビーチから流れてくる異次元の物質です。普段は黒色で、結晶化すると金色になります。カイラリウムを含む物質は、北米大陸の人々にアレルギー反応などのさまざまな影響を及ぼします。サムがまだ第二次遠征隊になる前、ハートマンは能力者(DOOMS)もその症状のひとつだと語っています。

カイラル物質はホルモン分泌や神経系に影響を与え、その結果、「カイラル汚染」と呼ばれる症状をひき起こす。さまざまな恐怖症(フォビア)の原因にもなり、自殺衝動や破壊衝動に及ぶこともある。君も知っているように、能力者もカイラル汚染の症例のひとつなんだ。

ハートマン

デス・ストランディング現象は、絶滅体の発情期なんじゃないかという説を前回ちょっと脱線して書いたんですが、カイラリウムはその絶滅体やビーチを構成する成分みたいなものだと私は考えています。ビーチは普通の物質的な空間と違って、もっとスピリチュアルな場になっています。ビーチに行くには、その主との結びつきが必要ですし、絶滅体のアメリも愛着があるものをストランドで結びつけてビーチに呼び寄せているようです。カイラル物質には、そんなアメリの愛を求める性質が出ていて、だからこそ結晶が手のひらを開いてなにかをつかみ取ろうとしているんじゃないのかなと考えています。

カイラル結晶

前回も書いたんですけど、両の手を開いた状態で結晶化するカイラル結晶は、金色をしています。北米大陸をつなぐデバイス、Qpid の名前の由来になっているローマ神話のキューピッドは、金色の矢で激しい恋情を、鉛色の矢で恋心が芽生えない心を相手に植え付けていました。金色は激しい恋情の色です。たぶん、絶滅体のアメリが北米大陸の人々、それも肉体を持つ人間に手を伸ばし、爆発を起こすことで、そのエネルギーから新しいものを生み出す繁殖行為を試みようとしているんじゃないかというのが私の推測です。

前回、ミュールから荷物を奪い返す任務をこなしたことで、過去のメールがいくつか読めるようになりました。そのうちのひとつが、古代エジプトの死生観とネクローシスのことをハートマンが語る内容になっています。

エジプトの生死観とネクローシスについて

古代エジプトでは、人間は、肉体(ハー)や魂(カー)と呼ばれる要素(エレメント)でできていると考えられていた。
エレメントの定義は様々だが、簡略化すると次のように考えられる。魂が母親の胎内に入ると妊娠し、肉体から離れた魂は、結び目からビーチを経て、あの世へ行く。それが死だ。魂が肉体に戻れば、蘇生する。これが臨死体験を呼ばれていたものの正体だ。
死は瞬間ではなく、魂が移動するプロセスだと言える。
DS によってこのプロセスが変化した。帰還者のような特殊な能力の持ち主か、よほど運が良くなければ、死者は蘇らなくなってしまった。
肉体はおよそ48時間でネクローシスを起こして、ビーチに行った魂が戻ってくることを拒否する。個体差もあるし、周囲のカイラル濃度の値によっては、12時間程度で起きることもある。
ネクローシスする前に遺体を焼却すれば、魂は還る場所がなくなったことを悟り、あの世に行く。
しかし、遺体がネクローシスしてしまうと、魂は、いつまでも自分の肉体を探しまわるようになる。
そう、それが BT の正体なんだ。

ハートマン

この世界における肉体(ハー)と魂(カー)の概念が、もう一度説明されています。肉体(ハー)と魂(カー)については、以前に詳しく掘り下げた記事があるので、この記事では割愛します。今回の文書で気になるのは、「魂が母親の胎内に入ると妊娠」という部分ですね。

古代エジプトでは、クヌムという神が人間を創造し、胎児もこの神が粘土をこねて作り、生命を吹き込んでから母胎に移すと考えられていたようです。それから誕生の瞬間にメスケネトという女神が、誕生の瞬間にカーを吹き込みます。カーが霊魂の五大要素のひとつでしかない古代エジプトと違って、『デス・ストランディング』の世界はカーがそのまま魂を意味するような解釈をされています。ということは、この世界の魂(カー)は古代エジプトと違って母胎にいるときからそろっているものなのかな?

インキュベーターに置かれた BB-28

ということは、BB-28をはじめとするブリッジ・ベイビーにもすでに魂(カー)があると解釈すべきみたいですね。

ハートマンのメール文書と一緒に解放されたほかの過去の文書もついでに見ていきたいと思います。まずはここ、K2西配送センターの担当者であるベンジャミン・ハンコックさんが2年前に送ったメールです。

ベンジャミンさん待望の第二次遠征隊

彼のメールには、アメリが率いていた第一次遠征隊が先発隊と後発隊で編成されていたことと、後発隊の彼らにはもう、アメリがいた先発隊の様子がわからないことが記されています。後発隊のほとんどは道中でブリッジズの拠点を築くために隊から離れていること、さらに先発隊はのちほどアメリを残してエッジ・ノットシティで全滅していることが判明します。

K2西配送センターに残った彼らは、K2西中継ステーションのスタッフらと同じように、この場に残ってブリッジズの拠点を守らなければという責任を感じています。しかし、実際には孤立によるストレスや、近くに集荷基地を築いているミュールの脅威で、広場恐怖症を発症したりと、苦労が絶えないようです。この説明は、第二次遠征隊のサム自ら、わざわざミュールから盗まれた荷物を取り返しに行かないといけなかった事情の説明になっているんだと思います。ブリッジズは拠点を死守するので精一杯っていうことですね。

最後が、カイラル通信について説明するママーのメール文書です。

カイラル通信とは #1

やっと、Qpid の基本設計が終わった!
この後は、セントラル・ノットシティとキャピタル・ノットシティを実際に繋いで、カイラル通信の実用化のための実証実験をする予定。
私は、第一次遠征隊の後発隊として出発するから、あとはここで実験に携わるメンバーに託すことになる。でも彼らは、必ず目標の3年以内に完成させてくれるでしょう。
それが達成されるまでに、先発隊と後発隊に分かれて、都市との交渉や調査をして、カイラル通信のためのインフラを設置していく。最後は、第二次遠征隊が完成した Qpid で繋いでいく。
昔、アメリカ合衆国のアポロ計画では、月に行くために多段式ロケットを使ったって知ってるかしら?
この計画も、三つの部隊が順番に大陸を繋いでいくの。

ママー

ママーも第一次遠征隊の後発隊でした。出発直前に Qpid の基本設計を終わらせて、残った研究メンバーが実用化し、セントラル・ノットシティとキャピタル・ノットシティを実験的にカイラル通信でつないでいたそうです。Qpid は実際にこうしてサムが首からぶら下げて大陸横断しているので、彼らは目標どおり3年を目処にママーの基本設計から実用化できるまで完成させたということになります。ママーはそれを、月面旅行のアポロ計画に例えています。今の北米大陸は月に行くみたいなものなのかな。こうしてサムが第二次遠征隊になるまでの背景とみんなの努力を想像すると、夢が広がりますね。

ママーはその後まもなく第一次遠征隊の後発部隊としてセントラル・ノットシティを出発し、第一次遠征隊の仕事が落ち着いたときに妹のロックネの子を代理出産することにして、作中登場するサウス・ノットシティ前に建てられたママーの研究施設に行き着くんだと思います。

ゲーム内で物語の設定が語られている文書を一通り見終わったので、引き続き座礁地帯でカイラル結晶をかき集めていきます。この依頼を受けたときに、簡易観測塔を建てるための建設装置が支給されたので、荷物になるのもあれですし、ここの中州で使ってカイラル結晶の場所に目印が出るようにしようと思います。

そう言えば、前回ミュールの集荷基地に乗り込んだときも簡易観測塔を建てたんですが、動画にするのを忘れていました。代わりに今回のぶんを撮ってみました。高さがあるからどうしても見切れてしまいますね。建設装置の建築風景、けっこうかっこよくてどれも好きなんですよね。

建てたばかりの簡易観測塔を使うと、視点が切り替わったあとに BT と遭遇した演出が入りました。なかなかないタイミングだと思います。そんなに動いてないと思うんだけど、簡易観測塔を使ってるとき、サムの位置情報がちょっとズレるのかな?

回収自体は、適当に地面のカイラル結晶を探すだけなので、とくに難しくもなく、オプションの100cg 以上集められました。

カイラリウムは納品メニューではなくて、リサイクルという形で施設に納品します。基本的に施設に渡すものじゃなくて、物資としてサムが使うことが多いからだと思います。この配達依頼もチュートリアルみたいなもんですね。

今回の配達依頼が完了すると、ケースリペア・スプレーがカイラル・プリンターで作れるようになり、実際に現物がいくつかサムに支給されます。ケースリペア・スプレーを配達荷物に吹きかけると、時雨で劣化して衝撃耐性が落ちた荷物のケースを元通りに戻すことができます。

サムが普段持ち歩いている荷物には、大切なお届け物のほかに、自分の装備や道具の計2種類があって、前者はきちんとしたブリッジズ規格の配達ケースに入っているので、時雨にさらすと、まず外側のケースの衝撃耐性が落ちていきます。耐久性が落ちたケースを落としたりすると、中身が大きく傷つく恐れがあります。リペア・スプレーは、このケースの劣化をもとに戻してくれます。傷ついた中身の品質はもう変えられません。

反対に、サムが持ち運んでいる自身の装備や道具は、こうした保護ケースに入れられていません。時雨を浴びるとダイレクトに中身が劣化していき、やがて壊れて使えなくなってしまいます。こうした装備や道具には、リペア・スプレーを吹きかけても品質が戻ることはありません。あくまで効果は配達ケースそのものに対して有効です。

リペア・スプレーがなぜ有効なのかと言えば、ブリッジズの規格に沿った配達ケースは、カイラルグラムのデッドマンが開閉の遠隔操作をできていたりするので、最初から特別仕様になっているように見受けられます。特殊なスプレーで修復できるのも、その設計による恩恵のひとつだと思います。おそらくこれも、時間の流れがないビーチのカイラル物質を利用することで、ある意味、時間を巻き戻すような作用を実現しているんじゃないのかなと推測しています。

さて、現地調達のお仕事も無事に完了したので、カイラル物質に関係するメール文書がまた2通読めるようになりました。物語の設定にも絡んでいるかもしれないので、また書き出しておきます。

カイラル対称性

カイラルという言葉の由来を知っているだろうか?
それは、ギリシャ語の“手”のことだ。
自分の右手と左手を見比べてみよう。形も大きさもよく似ている。では、両手の掌を前に向けて、両手を重ねてみるとどうなるか? それは重ならない。
だが、掌を向かいあわせれば、ぴったりと重なる。これは、鏡に映した手の関係と同じだ。鏡に映った自分の右手は、実は左手だ。自分の右手と、鏡の中の左手を重ね合わせることはできない。ある物体が、その鏡像と重ねられない性質をカイラル、もしくはカイラリティーという。
BT という存在は、ある意味で私たちの鏡像のようなものだ。本来なら重なり合わないものが重なると、対消滅を起こす。研究開発されている新しい通信は、この世とあの世の鏡面とも言える“ビーチ”を経路に使うという方法だ。だからカイラル通信という名で呼ばれている、というわけなんだ。

ハートマン

カイラル結晶は手の形をしていますが、「カイラル」という名前自体が「手」を意味していると明記されています。形も大きさもよく似たものが、鏡像とは重ねられない性質が「カイラル」と呼ばれます。こうした対になる類似関係にありながら根本的に異なる性質を持つのは、以前から私が書いてきた帰還者の圧倒的生者の特質を持つサムと、絶滅体の圧倒的魂の性質を持つアメリの関係に似ています。

ハートマンは BT も生者の鏡像だと指摘しています。本来なら重なり合わないはずが、重なり合うことで対消滅を起こします。また、ビーチはこの世とあの世の鏡面だとも指摘しています。ビーチは死者の世界の入り口と何度も書いてきましたが、北米大陸と死者の国の両性質を映し出す場所であると言えます。絶滅体は、死者の国に属することもできれば、生者の国に属することもできるわけで、アメリはその狭間で苦しんでいました。

今のところ、BT は絶滅体のアメリが繁殖行為の爆発を起こすために使役する人の魂だという仮説を私は出しているので、こうした主従の関係で、BT はアメリ側に立つ生者の鏡像なんだと思います。また、似たような関係でブリッジ・ベイビーも鏡像になり得ると考えています。

ビーチで泣く BB

イゴール先輩の大爆発でサムがアメリのビーチに行ったとき、そこには黒い臍帯を持つブリッジ・ベイビーの姿もありました。この黒い臍帯はビーチからアメリが愛着のあるものをつなぎ止め、ビーチに呼び寄せるストランドなんだと思います。

BT はタール溜まりに死体が没シュートされることで肉体の死を自覚できずに座礁先で生者を探し求めるようになります。その現象は、外的要因で意図せず細胞が死を迎える壊死と同じ、ネクローシスと呼ばれています。その肉体の死には外部からの干渉が絡んでいます。なにが干渉しているのかと言えば、絶滅体ぐらいしかいないでしょう。BT は絶滅体とつながる黒い臍帯によって北米大陸に座礁させられ、生者に手を伸ばして触れあおうとします。それは、おそらく絶滅体がそうしたいからです。その気持ちは、カイラル結晶の特徴によく出ています。

カイラリウムとは

カイラリウムのことを教えてほしいだって? なかなか難しい質問だ。
定説はまだないんだ。それでもいいなら話してみよう。
カイラリウムは、宇宙の誕生と同時に別次元に存在していた、という説がある。ビーチがその次元を繋いで、はじめて存在を明らかにしたというんだ。それどころか、カイラル汚染によって人体や精神に影響を及ぼし、カイラル結晶という状態で、観察することもできるようになった。ビーチが多次元宇宙理論で説明できるのも、カイラリウムの存在のおかげと言える。
さらに、カイラリウムは時間の影響を受けない粒子で、この宇宙が生まれたビッグバンの時点から時間経過していないと考えられているんだ。だから、これまでカイラリウムは観測できなかったという説もあるんだ。
私は、このあと第一次遠征隊として西へ向かう。
その道のりで、ビーチやカイラリウムについての新発見ができるんじゃないか、と期待しているんだよ。

ここで書かれている多次元宇宙理論を正しく理解するのは簡単じゃないんですが、できる範囲で考えていきたいと思います。宇宙はもともと、ざっくり138臆年ぐらい前に小さな点から膨張して、今の星や銀河がクモの巣状に広がる成長をしてきたと考えられています。まさにサムがオープニングで語る「この宇宙は爆発で生まれた」です。起源となる点は、もっと密度が高く、温度も熱々で、今は重力で偏っている物質も均一に存在していました。

アメリのビーチ

そう考えていくと、アメリのビーチで見える燃える天体は、もしかしたら原始の宇宙の姿、そのものかもしれませんね。

宇宙の起源となる点、さらにそれ以前の宇宙について、アインシュタインの一般相対性理論などの理論で考えていくと、今の物理学では当たり前の原子や原子核、重力、密度といった考えが破綻する特異点が存在するという理論に至るそうです。

「特異点」、つまり通常の基準が適用できないものという表現は、じつは『デス・ストランディング』でも物語を語るうえで大きなキーワードになっています。まず物語の初期に、座礁地帯自体が「特異点」として語られています。あそこはかつての北米大陸の物理学的概念が通用しなくなっている場所です。

アノマリサ

もうひとつは、サムの実父クリフォード・アンガーが、サムを助けるために、サムの実母であり、自身の最愛のパートナーでもあるリサを手にかける際に彼が呼びかける「アノマリサ(My Anomalisa)」という言葉です。

『アノマリサ』は2015年に公開された長編アニメーション映画で、アカデミー賞にもノミネートされています。この単語自体は造語ですが、作中で語られる重要なキーワードになっています。このシーンのクリフの言葉は、明らかにこの映画から引用されています。

世間一般的には成功者でありながら、心に闇を抱え、人の顔に見分けがつかない主人公のマイケルが、リサという特別な女性との出会いを通じて、その闇を見つめる大人向けの物語になっています。マイケルは自著によく「変則的なもの」や「異例なもの」を意味する「アノマリー(anomaly)」という言葉を使っていて、ほかの区別がつかない人々と違い、彼の目に魅力的に映ったリサを、“anomaly”と“Lisa”の名前を組み合わせた「アノマリサ(Anomalisa)」と呼ぶようになります。作中ではリサの言葉で、和英辞典に「天上の女神(Goddess of Heaven)」という意味が載っていたとされていますが、ご存じのように英語にも日本語にもそんな意味はありません。

サムの父、クリフォード・アンガーは、戦争に身を置く優れた軍人で、自分は戦うことしかできないと考えていました。でも、サムの実母と出会うことで、人の父になることができました。弱点と思われた家族は、クリフをより強い人間へと変えてくれました。リサはまさに、クリフにとって生きかたの常識を変えてくれた「アノマリー」であり「特異点」であったわけです。また、リサは初めてのブリッジ・ベイビーである特別なサムを生み出した母親としても「特異点」であると言えます。

多次元宇宙理論にはさまざまな仮説があり、物理法則が異なる宇宙が球状に複数存在する説や、層状に展開する説、さらに空間や時間の概念があいまいになることで境界なく宇宙が広がっている説など様々で、私の脳みそではなにがなにと検証するのは難しいのが現状です。『デス・ストランディング』でハートマンが言う多次元宇宙理論が具体的にどういうものかはわかりませんが、少なくとも、絶滅体アメリのビーチは宇宙の誕生から時間経過せずにずっと、サムたちの北米大陸の宇宙と共存していて、「特異点」によってつながってしまった、そして過去にもなんどかつながっていると解釈するのがいいようです。ゴーストのような存在が出てくる時点で、ファンタジーのような設定が必要になってきますが、多次元宇宙理論を採用することで、『デス・ストランディング』の物語に宇宙物理学にもとづいた現実味が出るんだと思います。

本作の「特異点」に見られる特徴はなにかと言えば、私はやはり「愛」だと思います。クリフはサムの母を愛し、サムという子をなして、以前の自分からは考えられないような愛情を抱くようになります。BT という座礁体が北米大陸に来るのも、生者へ手を伸ばして爆発するのも、私の説では愛を求める絶滅体由来の恋情があればこそで、爆発は肉体を持たない彼らなりに、我が子と呼べる新たななにかを生み出す繁殖行為です。『デス・ストランディング』の世界は、これまで常識だった物理法則が愛で崩壊したと考えられます。それは幼いころに父を亡くし、最近母を亡くした小島監督が、宇宙物理学に則って、死者の魂はたしかに存在し、愛によって我々とつながっているということを描きたかったからじゃないかなと思いました。いや、そう考えるとちょっと美しいじゃんと勝手に思う私なのでした。

変態マスクっぽい

この K2西配送センターの新しい依頼2件が終わったところで、うちのサムは一度、K2西中継ステーションまで戻って、北東のミュールの集荷基地に殴り込みにいったり、道中落ちていたバトンさんの荷物を届けてあげたりしました。そのお礼にバトンさんとの親密度が少し上がって、サムのマスクを真っピンクに変更できるようになりました。すごい変態臭くない……? ものすごく、こう、タツノコプロの昔のアニメーションにでも登場しそう。

次回はこの淫靡なピンクの変態マスクのまま、新しいブリッジズの拠点へ配達に向かいます。

指さし 風力発電所へに続く
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