久々の DEATH STRANDING のプレイ日記を今、まとめています。軽く4か月ぶりぐらいの更新になってしまいました。いつも読んでくださっていたかた、申し訳ございません。やっと更新再開できます! お休み中、引っ越しでバタバタしているあいだも、小島監督の根強いファンのかたがゲーム語りを一緒にしてくださって、ずいぶんと気晴らしができて助かりました。小島監督は KONAMI からの独立で一悶着ありましたが、それ以降、とくにデスストを発表してからは安定しているので、ファンのかたとも安心してお話ができるのがいいところでした。

今だと FINAL FANTASY シリーズの話題で、XV の主人公だったノクティスの声優さんが自宅連れ込み不倫で大炎上しているので、奥様の背後にソニー・ミュージックがいるのもあって、いよいよコラボさえもできない黒歴史としてスクウェア・エニックスに封印されるんじゃないかとか、暗い話題になりがちです……。作品に罪はないんですけどねぇ。ただでさえシリーズの汚点扱いされることが多い作品なのに、開発に携わった人間自ら作品に汚点をつけていくので、不憫で仕方ありません。

そうそう、それで、デスストもついに、9月には PlayStation 5(PS5)向けリマスターの DEATH STRANDING Director’s Cut が発売されるそうですね。SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)ゴリ押しの完全版商法への参入、おめでとうございます!?

ニュースに目を通して、トレーラーを最初に見た段階で、上位ハードに合わせたグラフィックの向上や最適化などといった調整だけでなく、多岐にわたる追加要素もあるらしいということにやっと気づきました。近接戦闘の強化や新しい武器、レースゲームなどのミニゲームの追加ぐらいまではたいして気にならなかったんですけど、ストーリーに関連した新しい配達依頼も増えているらしいです。今までうちではこの作品の物語を重点的に掘り下げてきたんですけど、そんなことされたらこの PS5版をやるかやらないかで物語の見方もずいぶん変わってきちゃうんじゃないですか? あれ……? これって、いわゆる完全版商法じゃ……?

ということで、ワタクシ、ここまで考えてやっと気づきました。小島監督の作品は安心して話せると言っていたのは、どこのどいつだって感じですよね。今までさんざ完全版商法を批判してきた手前、場合によっては今後のプレイ日記の方針にも影響があると考えて、DEATH STRANDING のプレイ日記を再開する前に、ここにまとめて私の考えを書き残しておきます。

ファンのかたから教えていただいたんですが、小島監督は「ディレクターズ・カット」という表現が気に入っていないらしいです。じゃあ、だれの意向でこの名称になったのかと言うと、十中八九、品薄の最新ゲーム機、PS5をゴリ押しで売ろうとしている SIE でしょうね。

同時期に Ghost of Tsushima も、新要素を追加した Director’s Cut を発売すると発表しています。この名称の統一性を見るに、SIE 主導での展開でまず間違いないと思います。こちらは PS5だけでなく、オリジナルと同じ PlayStation 4(PS4)でも発売される予定だそうです。両方で発売されるとなると、なおのこと完全版となにが違うのかという感じになってくるので、海外では早くも批判が相次いでいるそうです。まあ、そりゃこうなるよね。せっかくの良作が大人の事情で台無しです。

小島監督は今回、あくまでも名称についてしか言及していませんが、もしかしたら SIE のゴリ押し路線にもちょっと難色を示したい意思表示だったのかもしれません。大人の事情でこの PS5向け新バージョンの製作を断れなかった可能性はあると思います。

「ここまでいけば黒字」というラインは全然超えているので、開発費の回収も含めて「成功」と言っていい数字だと思います。これから PC 版もリリースしますし、次に向けて準備ができるだけの利益は確保できていますから、心配はいらないですよ。

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監督は過去のインタビューで DEATH STRANDING の収益は黒字で、次の作品作りに向けて動き出す利益は確保できていると話しています。

公式 Twitter でも PS4版と PC 版で累計500万本を販売したと、数字上、遜色のない記録があるらしいことを明かしているので、今から利益確保のために使い古しの資産を活用して批判覚悟の完全版商法をやるリスクはないように感じます。この手の炎上は少なからず先例があるので、大なり小なり結果が目に見えていますから、批判されることが予測できないならただのバカだと思います。じゃあ、批判も厭わず PS5 向けの完全版を性懲りもなく売りたいのはだれかと言ったら、SIE じゃないかという推測になります。炎も間接的にしか浴びないから、火傷の被害も少なそうですしね。

KOJIMA PRODUCTIONS の公式 Twitter アカウントでは現在、小島監督自ら編集したトレーラーよりも、SIE が編集した予約受付のトレーラーがトップに固定されています。わざわざ「ソニーさん(SIE)が作成した」と明言して区別しているあたりに、本バージョンをめぐって SIE との距離感があることを示そうとする同プロダクションの意図が感じられるような気がします。小島監督の個人アカウントでも「僕が編集した PV ではありませんが」と断りの一言が丁寧に入っています。この記事を書いている時点で、監督はまだ Twitter に編集真っ最中のコメントを投稿しているだけなので、まだお手製の PV は完成していない可能性もありそうです。スマホで見られることを意識しているなど、要点を心得ていそうな監督のことなので、今の時代、スピードが命なこともきちんとわかっているはずです。情報がバンと出た時点で、宣伝用の素材がまだのらりくらり用意できていないなんて、なんかせっかく作った「ディレクターズ・プラス」を製作者自ら率先して売ろうとしているように感じられないんですよね。だって、PV を真っ先に用意したのは SIE なんでしょ?

いや、あくまでこれは私が感じたこと、そして推測したことなので、これが正しいと言い張るつもりはありません。毎度、勘違いして突っかかってくる荒らしが一部いるので、念のため。私はむしろ、こういう話題については、いろんな視点で人の意見を聞きたいと思っているぐらいなんですけど、非建設的な意見で荒れると真っ当な人ほどこちらに気を使って意見交換してくれなくなるので、さびしいところがあります。

以前から完全版商法じゃないかと、FINAL FANTASY VII REMAKE もめちゃくちゃ批判していたんですけど、同作も最初から PlayStation 独占配信だったりで、スクウェア・エニックスと SIE がタッグを組んだ大目玉の作品になっていました。DEATH STRANDING も PlayStation 先行販売で、1年弱ほど期間を置いての PC 版発売だったので、SIE には気を使ったリリースになっていたと感じています。PC 版が発売されたあとにも、たいして期間を置かずに PS4版に大きめのアップデートが入り、ハードの性能で制限があるもの以外は同等の機能が追加されていましたしね。今回の Director’s Cut のあと、PC 版のほうにコンテンツがしばらく追加されないなら、やはり「デスストやるなら PS5で!」の売り文句が成立するので、SIE への忖度が否めない流れだと思います。なんか必死だなぁ。

例えば、作品の構想をある程度練って、一通りできあがったものを販売して、好評を受けて黒字になったので、利益を利用して、開発当初は時間や予算の関係で泣く泣く作れなかった要素を後付けで発表するというのは、作品を応援するファンとしてもありがたいことだと思います。これを否定するつもりは私もないんですよ。でも普通、こういう後付けのコンテンツって、従来だとダウンロードコンテンツ(DLC)だったり、別メディアで完結するものだったり、コラボ企画だったり、時間が経過して新しい互換性がないハードに対応したリメイク作品だったりで、本編に付随する形で発売されるものだったからこそ、消費者も納得して買っていたはずなんですよね。今の PlayStation 周辺で当たり前になりつつあるこの手法は、本編含めて都度都度、なにかと言っちゃあお金を出させて買い直しさせようとする動きになっています。前から書いているように、クリエイターがいい作品を作るために本当にそのお金が必要なら、ファンは彼らを支援しないといけないというのが私の考えです。クリエイターの努力、さらに、優れたハード機器やプレイ環境を用意してくれる技術者のみなさんに対しても、ゲーマーはその対価を支払うべきです。でも、今の SIE がゲーム製作会社とやろうとしているお商売のやりかたは、消費者のその感覚を超えた強欲さがにじみ出ているように感じます。あくまで個人的な感覚の話になるんですけど、それは違うんじゃないかという違和感が今でも否めません。本当に完全版商法をしてまで利益を上げる必要がゲーム業界にあるなら、業界全体の存続のために、もっと売り手と買い手、相互に気持ちいいお商売ができるようにビジネスを考え直す必要があると思います。だって、今後こんなこと続けられたら、ゲーム買う側としては胸くそ悪いよ。

FINAL FANTASY VII REMAKE については、2020年4月に発売されて、翌年の2021年4月まで独占配信だったことが明らかになっています。その後は独占配信の期間が終わる目前の2021年3月に Playstation Plus の月額850円で遊べるフリータイトルになり、PS5向けに本編とユフィの新規エピソードを含む FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE が新たに発表され、独占配信が切れた6月に二度目のローンチというふうになっています。これが完全版商法じゃないかと批判が相次ぎ、Yahoo! ニュースでも取りあげられる事態になりました。私もこのスクウェア・エニックスの動きには批判的な人間の一人です。このスケジュールは、好評を受けて追加コンテンツの制作が決まりましたレベルではありえないテンポです。最初から計画して、売上げを上げるため、ひいては PS5を売るための忖度で完全版商法をするつもりだったと考えられます。今振り返っても、最初に作品を買ったファンを財布としか思っていないからできるお商売としか感じられません。

いっぽうの DEATH STRANDING はどうかと言うと、2019年11月に発売されて、PC 版が2020年7月の発売になっています。ハードのスペックもあるので、グラフィックなどの細かな差はありますが、物語の構成など、基本的なところに両者の差はなく、どちらで遊んでもほぼ同じ内容が楽しめます。公式な小説も発売されていて、大筋はゲームのストーリーをもとにしていたので、個人的に DEATH STRANDING の物語は PC 版が出そろった時点で一区切りついたと思っていました。あとはコラボとかグッズでちょこちょこ収益をあげる感じかなと考えていたぐらいです。今回の Director’s Cut は、PC 版がリリースされてからさらに1年のスパンを置いての動きになります。追加要素は、製作過程でボツになったものもなかにはあるでしょうが、「追加製作した」ものだと小島監督本人も明らかにしています。FINAL FANTASY VII REMAKE との大きな違いは、明らかに後付けである点です。なぜ蛇足になるリスクを冒して、後付けを売るのか――単純に考えて、小島監督が DEATH STRANDING でもっと描きたいものがあったからか、大人の事情があったからでしょう。私は前者であるなら、お金はおのずと付いてくるものだし、お金の流れは本来そうあるべきものだと思っています。

小島監督は今回の Director’s Cut の発売にともなって、そのコンセプトを Twitter で明かしています。私はなんとなく、一番最後に「DS が好きな人を呆れさせない後付け作品にする」も透明な空気になって挿入されている気がします。

PS4でオリジナルがリリースされた作品の PS5向け完全版商法が、なぜこんなにも印象が悪いかというと、まず PS5自体が品薄で一般人には簡単に手に入らない状況であることも一役買っています。引っ越し中も Amazon で買い物をよくしていたので、商品ページをたまにのぞいたりしていたんですが、いまだに継続して商品を販売することができていない状態のようです。販売開始したのは2020年の11月で、かれこれ半年以上も再開されては売り切れを繰り返すレア商品になっています。希少価値ばかりが不用意にたたき上げられていて、一般のゲーマーほど、だんだん白けてきているのが実情だと思います。この温度差があるなかでこう大規模な完全版商法をされると、メーカーを応援する気も削がれてしまうというのが率直な感想です。

もうひとつ致命的なのは商品のラインナップがわかりにくいことだと思います。 FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE でも、それぞれフルプライスではいくら、PS4 でオリジナルを購入していればアップグレードにはいくら、「本編」とは PS4向けと PS5向けのどちらのことなのか、PS5 でないと購入できないのはどのコンテンツで、それはいくらなのか等々、商品ページの記載がかなりわかりにくいと批判を浴びていました。従来の DLC 商法なら、各コンテンツがいくら、全部まとまったシーズンパスならいくら、このコンテンツは別ハード向けというふうに、区切りがはっきりしていてもっとわかりやすかったと思います。あえて従来の DLC 商法をやめて今回の Director’s Cut 戦法に切り替えたのは、この情報弱者を狙った棚ぼた収入ほしさだったんじゃないかなという気がします。こう書き出すと哀れなほど必死だなぁ。

DEATH STRANDING Director’s Cut も、じつは PS4版を持っていると、フルプライスで Director’s Cut を買わなくてもいいらしいことが KOJIMA PRODUCTIONS のインタビュー動画でわかります。字幕によると、PS4版のオリジナルから Director’s Cut へのアップグレードは「10ドル(1,100円)」の費用だけで済むようですが、具体的な価格は現地通貨によって違うので、「詳細は Playstation ストアをご覧ください」と、最終的に Playstation 公式ストアへ誘導する形で説明は切り上げられています。

なので私も公式ストアを覗いてみました。

DEATH STRANDING Director's Cut

ログインして、PS4版の DEATH STRANDING を購入しているデータが反映された状態で商品ページを表示させても、ドドーンと Director’s Cut をフルプライスで予約する案内が画面いっぱいに表示されます。その下に作品紹介、PS5の魅力紹介、各エディションの一覧と続き、最後の最後に下のほうに小さくやっと目当ての説明がありました。

PlayStationR Store等でPS4版『DEATH STRANDING』を既に購入している方は、1,100円(税込)でPS5版『DEATH STRANDING DIRECTOR’S CUT デジタルデラックスエディション』を入手することができます。※4
PS4向けソフトウェア(パッケージ版)をお持ちの上で、PS5向けソフトウェア(ダウンロード版)をダウンロードしたりプレイしたりするには、PS4版のディスクをPS5に挿入したままにする必要があります。
なお、PS4向けソフトウェア(パッケージ版)からのPS5アップグレードにはディスクドライブ搭載のPS5本体が必要となります。

※4 アップグレードは発売日に購入が可能になります。

https://www.playstation.com/ja-jp/games/death-stranding-directors-cut/

違法にならない範囲で、なるべくフルプライスなほうに誘導して、「間違って買っちゃった~!」を頻発させたいんじゃないかなというイヤな気配がプンプンします。少なくとも、不親切なんですよね。消費者目線の心証が明らかに悪すぎます。これだと不信感を煽るだけで、将来的なお商売に悪影響が出そうなんですけど、天下のソニーにはそんなこと関係ないのかな?

そもそも1,100円だけと言うけど、アップグレードするにはもちろん PS5本体が必須なわけで、しっかりそのぶんの出費も考えないといけません。まだまだレアな最新ハードをなんとか購入させて、すでに購入済みの作品を最新ハードで遊ばせるために追加費用も払わせるという行為を、悪どい商売と考えるか、必要経費と考えるか、それだけでも消費者によって感覚のバラツキがあります。私は、いいゲーム機、いいゲーム環境、おもしろいゲームを作るために必要な対価なら喜んで払うけど、今の状況だと、なにかにつけて金を巻き上げてやろうという悪意を感じるので、買ってはいけない警戒心が働いている状態です。

DEATH STRANDING の Director’s Cut については、先にも述べたとおり、KOJIMA PRODUCTIONS も大人の事情でやらざるを得なかった被害者なんじゃないかなという印象を個人的にちょっと受けたので、今回の件で完全版商法と言えるかどうかは、最終的に小島監督の腕次第だと思っています。同情の余地も含めて、後付けでもなんでも、対価を払うに値する追加要素ならファンは歓迎するものだと思います。個人的にどうも過去の METAL GEAR SOLID シリーズを連想させる要素がねじ込まれていたり、『なわ』のコンセプトはどこへ行ったのかと戸惑うほどド派手な兵器が追加されていたりする点に、商業的に見栄えがする集客力重視のコンテンツ作成が求められていたんじゃないかという懸念がどうしても残ります。派手にやりたいことだけ詰め込んで、まったく物語をまとめようとしないどっかのスクウェアみたいな芸当をやらかしてたら救いようがありません。Director’s Cut がリリースされて、フタを開けてみたらこういう懸念が杞憂に終わったというオチが私はほしいんですよね。やっぱり小島監督は自分の作品に対して筋が一本通ってるって納得できる上位バージョンなんだったら、Director’s Cut を買って監督の支援に回るのもありかなと考えています。その前に必死に PS5を探さないといけませんが……。逆に FINAL FANTASY VII REMAKE の二の舞になるようだったら、私はこのプレイ日記も容赦なく書きかけで捨てます。ゲーム業界を怪しいお商売で成り立つ業界にするヤツはこの世から消えほしいと素直に思います。

そもそもの個人的な問題として、PS5がほしいともう思わなくなってしまったんですよね。こんな殿様商売を展開するなら、時間がかかっても PC 版に Director’s Cut 相当の追加コンテンツがおいおい入ることに期待して、別ルートで KOJIMA PRODUCTIONS を応援したほうが賢明だと思うようになりました。

とりあえず9月に Director’s Cut がリリースされて、詳しい内容がわからないことにはなんとも言えませんね。期待どおりなら、PS5 が手に入った時点で Director’s Cut のプレイ日記に切り替えるかもしれないし、懸念どおりならプレイ日記もプレイ自体もやめるし、少なくとも SIE 絡みのゲームはもうしばらく買わないぐらいまで考えると思います。この完全版商法の流れは本当に酷いもの。

指さし 追記
小島監督本人が編集したものではないそうですが、KOJIMA PRODUCTIONS の「イケてる映像チーム」が用意したという Director’s Cut の最新トレーラーが公開されました。収録されているのは英語版なので、もしかしたら海外市場主導の動きなのかもしれません。

https://www.youtube.com/watch?v=v9_PV8aLV2g

今はまだ絶賛編集中の監督お手製トレーラーは、ご本人曰く「ファイナルトレーラー」らしく、ほぼローンチトレーラー扱いと見ていいようです。なので公開は来月の発売前あたりの時期になる予定みたいですね。

より詳しいトレーラーを観て、少し安心しました。作品のコンセプトに大きく絡んでいた非殺傷系兵器の重要性などを鑑みると、どうも以前のトレーラーでは作品のメッセージにブレが生じるんじゃないかと思わず心配になってしまう内容だったんですね。こちらの新しいトレーラーを観ると、追加要素はおおかたミニゲームの遊び目的か、あくまでも配達用途の道具に留められているようです。ストーリーについてはどの程度拡張されるのか出てみないとさすがにわかりませんが、以前のトレーラーより誤解が少ない内容にはなっているのは確かだと思います。ここらへんも作品の売りかたをめぐる製作会社と SIE の温度差を感じる理由だったりします。

発表時のトレーラーを観て、作品のメッセージ性のブレを心配したのは、私だけではないようです。大手ゲーム情報ブログの KOTAKU には、Death Stranding Director’s Cut Seems Like It’ll Undermine What Made The Game Good(『DEATH STRANDING Director’s Cut はどうやらこのゲームのよさを自ら台無しにするつもりらしい』)という記事が投稿されています。タイトル下の概要には“The PS5 version of the game looks more Metal Gear Solid 5 than sad delivery man sim(このゲームの PS5向けバージョンは、悲しい配達人のシミュレーションゲームというより METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN のように見える)”とまとめられています。

これは私が感じていた印象と同じです。「孤独な配達人のシミュレーションゲーム」のくだりは、ちょっとオリジナルのゲーム性をあざける意図もありそうなので、もしそうならそこまで同調するつもりはないんですが、北米大陸をつなぎ直して、断絶された人々を救う物語というより、過去にヒットした代表作の要素をとってつけて、大衆受けするように調整された、つまり言い換えると DEATH STRANDING の特徴があえて消された作品になるリスクをはらんだバージョンだと感じているのは同じです。この点が、小島監督の初期の構想において、予算や時間の都合で泣く泣く実現できなかったものを今回追加して充実させるというより、商品をもっと売れるようにしようという商業的な思惑が働いた結果じゃないかと感じる理由になっています。

コメント欄では、Director’s Cut の追加要素が「的外れ」かどうかで議論が進んでいます。ある人は、サムに自身を投影することで、このゲームの物語を体感したからと言って、クリエイター以上にこの作品の要点を理解しているとは言えないんじゃないかと、我が物顔の大きな声で批判記事を書く KOTAKU に「ちょっと度が過ぎる」と物申しています。ある人は、クリエイターがもともとの作品のテーマから離れてしまうことはよくあると、長編 SF 映画の『華氏451』や FINAL FANTASY VII REMAKE などのほかのゲーム作品を例に挙げて指摘しています。けっきょく、ファンが作品のメッセージをはき違えることは多々あるが、生みの親であるクリエイターだって一貫性とはほど遠い存在だという「世の中そんなもん」で納得しているゲーマーも一定数いるようです。

読み進めると、そもそも DEATH STRANDING に確固たるメッセージ性なんて最初からあったのかと疑問を投げかける声も目立ちます。なかには配達というゲーム内タスクに面白さを見出せず、ストーリーも理解できない点が多すぎて、ちゃんとひとつの物語としてまとまっている印象を最初から持てなかったという人も相当数いるようです。彼らは総じて、戦闘の面白さがあるなら、今やっているゲームが終わったときにまたやってもいいという感じのノリなので、Director’s Cut で取り戻したいプレイヤー層はここらへんなんだろうなという気がします。小難しい物語云々より、ゲームの爽快感や、グラフィックの華々しさがないと、作品の魅力は顧客に訴えられないということのようです。

最近 B 級映画『シャークネード』の製作者インタビューを読んだんですが、彼らは自分たちの映画製作のスタンスを、以下のように話していました。

若かったし、お金が必要だったからアート系を扱っていたけど、多くの人は小難しくて映画祭で賞を取るような映画より、B級映画の方が好きだってことに気付いたんだ。例えばドラマ作品を売ろうとしたときに、かわいいビキニ姿の女性の背景が爆発してるようなB級映画っぽいポスターを使うと、お堅い単館系のポスターをそのまま使うより、よっぽど集客数が伸びた。結局、一般の人たちはB級映画を観たいんだっていう事実を、マーケティングが明確にしてくれたってわけさ。僕たちは無節操な人間だから、単純に観客が観たい映画、楽しくてお気楽なB級映画が作りたかったんだ。

https://eiga.com/news/20181008/4/

なんか、似たようなジレンマを Director’s Cut からも感じるなぁ……。

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