自動配送ロボと熱々のピザ配達
誰だってそーする。おれもそーする。
配送端末を立ち上げるとすぐにダイハードマンとのカイラルグラム通信が始まります。開口一番「フラジャイルはヒッグスに嵌められたか」と本題に入り、悪びれる様子もなく「手錠端末の記録(ログ)を見た」と説明します。
サムは英語版で「またヒッグスの野郎が来たのか?」みたいな皮肉を言っているようですけど、表立った抗議の声をあげません。これ、なかなかのプライバシー侵害ですよね。相変わらずプライベートとは名ばかりのルームですね。あそこでサムがその気になってフラジャイルを押し倒していたら、それも全部筒抜けだったってことになります。なおのことフラジャイルの不用心さが際立つでしょ。そんなんだから際どい写真の流出は本人の責任だみたいな論調になるんだぞ。
前回クラフトマンはメールで「こんなことができるのも、UCA に加盟したからだ 😀 UCA に加盟すると、俺たちはカイラル通信の拠点としてシェルターを提供する。それから、プライバシーを含めた情報も。その見返りに、UCA はカイラル通信を介した情報や機械を俺たちにくれる 👍」と語っていたので、シェルターの住民たちもサム同様にプライバシーの搾取がおこなわれている可能性があります。何気ない会話から、口にする意見、いつ寝て、なにを食べ、何回トイレに立ち、だれと交流して、どんな音楽を聴き、どれくらい体を動かして、今日の血糖値と尿酸値はいくつで、いつセックスして、どれくらい自慰をしているかみたいな情報が、ブリッジズには当たり前のように提供されるのかもしれません。ダイハードマンの落ち着いた口ぶりからすると、「それが当たり前ですが、なにか?」といった雰囲気さえあります。恐ろしい世界!
ダイハードマンは「ミドル・ノットシティ([K5])周辺のアーカイブも復活してきた」と語り、その復旧データと照らし合わせてもフラジャイルの言っていることには矛盾がないと太鼓判を押してくれます。フラジャイルはあやしい女ではなく、悪いのはヒッグスということで確定したみたいです。
ここでサムがめずらしく自分の意見を口にします。「アーカイブを見なくても、俺は彼女のことを信じる」だそうです。あの~、それ、さっき本人に言ってあげるべき言葉だったんじゃないですかね……?
この状況で視線を逸らして、顔を横に振るような素振りも見せて、なにも答えなかったんですよ、この男。でも、本人以外には「俺はアイツのことを信じる」って胸張って即答できるんですね。ちょっとサムの人格もあやしく見えてきました。なに考えてるんだろ? なんでこんな男が特別なんでしょうね?
話し終えたダイハードマンの姿が、ママーにすぐ切り替わって、「自動配送ロボが、目的地に着いた」といういい知らせが聞けます。どうやらエルダーはおいしいご飯にありつけたようです。実験の成功を喜んだママーは、サムが自由に使える自動配送ロボを1台用意してくれました。
自動配送ロボは、使用を許可された台数分、「指名なし依頼」を受注できます。許可台数すべてが配送中の時は、新しい依頼を受注できません。
先に書いたとおり、今後自動配送ロボを使う予定は今のところありませんが、物語の後半に指名なし依頼が追いつかなくなってきたら、簡単な依頼を任せてもいいかもしれませんね。
ここでやっといつもの受注画面に戻ってきましたが、またダイハードマンの音声で案内が入り、「『プレミアム配送』を受けられるようにしておいた」と教えてくれます。プレミアム配送は配送条件が厳しい代わりに、達成時の評価がよくなる見返りがあります。
あんまり気にはしていないんですけど、ハードモードでプレミアム配送を何件か達成すると手に入る実績のトロフィーがあるらしいので、次の指名なし依頼消化旅からちょっとずつやるようにしています。
さて、思っていた以上にイベントが早く終わってしまったので、残りの配信時間でピーター・アングレールのピザ配達をやることにしました。前回依頼のメールが直接届いていた案件ですね。
ピーター・アングレール(シェルター23-84)は、病気の妹にピザを食べさせてあげたい。兄妹の絆を守るためにも、冷めないうちに届けてほしい。ピザは縦にしたら崩れてしまうので要注意! 運ぶ時には、ケースを横にして平たく積むことが重要!
サム指名依頼 No. 26「[至急]ピーター・アングレールへ、焼きたてのピザを届けろ!」の依頼の詳細より
ピーター・アングレールは面識のないプレッパーズの一人なんですが、物語の終わりにその正体がヒッグスだとわかるオチになっています。そんな彼からは今後もたびたびなにかにつけてピザを持ってきてくれと頼まれます。今回はその記念すべき第一回目の配送です。
ヒッグスの名前の由来は、1964年にヒッグス粒子を提唱したピーター・ヒッグス博士です。同じ年の少し前にヒッグス博士とは別に、素粒子が質量を持つ仕組みの理論を発表したフランソワ・アングレール博士もいます。このプレッパーズの名前は、ヒッグス粒子に縁のある両博士の名前から考え出された偽名だと思われます。
配信で言っていたんですけど、ヒッグスはピーター・アングレールというニセの人格を作るにあたって、妹がいる設定にしています。これってヒッグスの育ての親である伯父さん、つまり病の妹と言われているのは、ヒッグスを産んですぐに亡くなったお母さんの設定で話しているのかなと考えていました。
サムの父親はクリフォード・アンガー(Clifford Unger)で、「怒り(anger)」を意識した命名かなと疑っていました。アングレールはつづりが“Englert”なので怒りとは全然関係ないんですが、なんかカタカナの両者の響きは似ている気がすると以前にどこかで書いていました。そのときはサムとヒッグスの親父(実父と養父)比較で、なにか比較できないかなと思って書いていたんですけどね。実際のアングレールはドイツによく見られるゲルマン系の名前で、一説では天使に由来する名前だそうです。なんか崇高だな!
ヒッグスの両親は幼いころに亡くなって、母方の伯父に育てられたという話でした。でも、この妹のことを気遣うピーター・アングレールの話を見ていると、兄と妹の仲のよさが強調されていて、そのほかの妹の夫や、ましてや甥っ子の話なんてみじんも出てこないんですよね。これって、じつはヒッグスのお父さんは最初からいなくて、アングレール兄妹の近親相姦の結果がヒッグスだったんじゃないのかなってちょっと思ったんですよね。何度も書きますけど、小島監督は METAL GEAR SOLID のオタコンですでに、血のつながりのない義母や義妹とは言え、近親相姦を意識させるネタやってますしね。
そうすると、『ある男の手記』のなかで、けっして関係はよくなかった伯父のことを、あえて距離が近い「父」という表現でヒッグスが振り返っている説明にもなりますし、配信のコメントで vylga さんに教えていただいたんですが、ヒッグスが自分の顔を嫌っている理由にもなるかもしれません。コメントをいただいたときにとっさに該当のセリフや文書が思い浮かばなかったのでピンとこなかったんですが、それらしいところを調べたら、確かにフラジャイルを処刑するシーンの「実をいうと俺は、この顔が好きじゃない」っていうセリフがすぐ見つかりました。フラジャイルの顔をイジってたのは覚えてたのに、なんでここ忘れてるんだろう……? 自分の顔に父親の存在を感じてしまうから、本能的に嫌っているって感じですかね。近親相姦って、こんな終末の世界でも、普通に考えるといい生まれとは考えられないと思うんですよね。だいたいはコンプレックスになりそうな出自じゃないですか。でもヒッグスはエジプトに傾倒しているので、兄と妹の結婚も普通だったエジプトの神話とか、王家とか、そういったやんごとなきポジションの人に自分の境遇を重ねられますよね。これがエジプト大好きになったきっかけかなと思ったんです。
デス・ストランディングの世界って、よくコロナ禍を予言したみたいな感じで比較されるんですけど、新型コロナウイルスの蔓延で巣ごもりを余儀なくされる人が増えて、家庭内暴力が増加したっていう調査があるんですよね。この家庭内暴力は、たんに数秒に1回どこかで女が配偶者やパートナーにボコボコに殴られているっていうだけじゃなくて、性暴力も同様に起こっています。法務省が掲載している調査では女性の十人に一人が性交を強要された経験を持っていて、そのうち約1割の相手が親や兄弟などの親戚だったことがわかっています。家庭内性暴力はとくに幼少期から被害に遭っているケースが多いし、実態がつかみにくいから、親や兄弟、親戚から性暴力を受けて、望まぬ妊娠をして、周りにバレたくないからお腹の子を泣く泣く殺して何回も妊娠を繰り返す女の子がどれくらいいるのかわかりません。でも日本でもフラワーデモなどで性暴力に反対する社会運動が広がるにつれて、被害者が経験談を語り出すと、意外と身近な問題であることに気づきます。ヒッグスの母も、兄の暴力から逃れられなかった被害者の一人だったら、この世界のリアルな社会問題がちょっと垣間見えるなと思ったんですよね。
ま、私が知る限りこれの根拠となる情報はゲーム内に一切ないので、あくまで私の妄想です。実際同じ『ある男の手記』のなかでヒッグスは「両親を亡くした赤ん坊の私を育ててくれた人」と明記してますしね。父親と慕ったのは、自分の DOOMS の能力が彼の死由来だと信じていたからかもしれません。それか、物語の設定上、本当に DOOMS の力は父親由来だったことを示しているのかもしれませんね。ヒッグスが仮面をかぶって棺桶になったのは、父親の BT を自分の体に呼び戻すためかな? だとしたら、ヒッグスが仮面を着けだしてから病的に凶暴化した理由にはなります。ヒッグスの育ての親は妹を愛した暴力的な男、サムの実父は戦場にしか居場所を見つけられなかった兵士、フラジャイルの父親はフラジャイル・エクスプレスの創業者です。フラジャイルの父親が人格者で、棒よりも縄でみんなをつなごうとしていた人物であったことはエルダーとの昔話からもわかるので、彼女の能力がやたらと高い理由にもなります。
ピーター・アングレールの案件を請け負ったら、先ほどはできなかった車両の共有機能がやっと使えるようになりました。
サム。車庫には、他の配達人と共有の車両が停まっていることがあるわ。見つけることがあったら、気兼ねなく使ってみて。
ママー
【車庫】
この施設にある車両を管理します。
車庫には、自分の車両、オンラインで共有された車両があります。
車庫からエレベーターに取り出すと車両を利用できます。
車庫からブリッジリンクでつながっている Mr. サムワンの車両を引き出して勝手に借りられます。配達先で借りパクのまま乗り捨てることもできるので便利です。このタイミングからできるようになるんですね。
ピーター・アングレールのシェルターまでの道は、小川もあるし、岩がゴツゴツと出ていて車両では走りにくいので、最初は徒歩で行こうと考えていたんですが、行けるところまで行って、適当な場所で乗り捨てる作戦に切り替えました。
依頼を受注して配達荷物を受け取る段になると、丁寧に「ピザが入った荷物ケースは、必ず水平に積むんだぞ。縦にして運んだら、中のピザがピザでなくなってしまうからな」というダイハードマンの寄り弁注意報が聞けます。「ピザがピザでなくなってしまう」という表現が好きです。
M サイズの荷物は普通にサムの背中の背負子に積むと、自動的に縦積みになってしまうと思うんですよね。バイクの荷台も縦だし、仕方がないので適当な荷物をプライベートボックスから引っ張り出してきて、土台を作ることにしました。
適当に血液袋とかを引っ張り出して、これでこの上にピザを積めば横置きになってくれるはずです。
土台を作るために依頼の受注画面を巻き戻してメニューまで戻ったので、もう一度受注の流れをやったんですが、ダイハードマンは丁寧に「ピザがピザでなくなってしまうからな」ともう一度忠告してくれます。うん、そうね。
バイクに乗ってピーター・アングレールのシェルターへ向かいます。画像のとおり岩場が続くんですが、意外とバイクでスイスイ(?)行けました。あと、目の前の小川にはナイスな橋が建設されています。これ、本当に神の所業! これの奥には発電機も見えましたし、みんないい位置に建設物を残してくれてるんですよね。
1周目プレイをしたときは、ここ、けっこう面倒だったのを覚えています。ピーター・アングレールのシェルターは微妙にカイラル通信の範囲外で、建設物の設置場所はギリギリのところで吟味しないといけないんですけど、今回は人様のを借りるだけでまったくストレスなく行けました。たぶん、発売から月日が経つことで、建設物も淘汰が進んでるんだろうな。ちょっと感動!
シェルターに着きました。地理的には元ミドル・ノットシティ[K5]が近いんですけど、右上に出る表示によると、レイク・ノットシティ[K4]の所属らしいですね。入り口は西のミドル・ノットシティのほうを向いています。こちらの方面は、イゴール大爆発跡地みたいに、ミドル・ノットシティ跡地から立ち上る黒い瓦礫が見えますし、BT の黒い臍帯も何本も見えます。
このシェルターは、ヒッグスが父親を意識してピーター・アングレールという偽りの人格を作ったという私の説が正しければ、もともとヒッグスが父親から受け継いだ生家だと思います。『ある男の手記』で、たまたま発見したプレッパーズの死体を処分したのもここら辺の近くのはずですけど、ミドル・ノットシティ方面だったのかな?
ちなみにこのヒッグスが処分したというプレッパーズの死体は、サムと対比させるとイゴール先輩と運んだ死体に相当すると考えられます。サムはこのときのトラックの横転事故で足にケガを負い、流れる血に BT が反応することに初めて気づいています。あのシーンは背景にアメリのビーチに浮かんでいた五人の人影が映り込んでいたりして、妙に意味深長な構成になっていたので、それ以外にもなにかを示唆していた可能性があると疑っています。
ピザを納品しても、ピーター・アングレールは出てきてくれません。「SND」って目の前に表示されるんですけど、これって「音声」のみってこと? 機械音声のみで評価が表示されて素っ気なく終わります。
ピーター・アングレールのシェルターって、ちょっといびつな円形の高台にあるんですよね。なんかクレーターでも意識してるのかなと思ったこともあるんですが、よくわかりません。ミドル・ノットシティが滅んだ今は、なかなかの景色が一望できる立地になっていますが……。
地図で確認するとこんな感じです。普通の人だと座礁地帯を意識して住むのが怖くなりそうな立地ですね。
ヒッグスの生家だったとしたら、ミドル・ノットシティに近すぎるので、前回『ある男の手記』で「今日は、ミドル・ノットシティの近くにあるシェルターまで荷物を届けた。今までで一番長い距離を運んだことになる」と語っていた内容と食い違うかもしれません。むしろお届け先がここだったんじゃないかと疑いたくなるぐらいです。住民が死んでたシェルターってもしかしたらここのことで、それを奪ったのかな? それとも依頼を受注した場所が遠くで、たまたまお届け先がこの近くなだけだったみたいな感じかな?
レイク・ノットシティへの帰還中に、ピーター・アングレールからのお礼メールが届きました。ピーター・アングレールは「ちょうど、外に出ていて不在」で、「妹は眠っていて気がつかなかった」と教えてくれます。居留守と永遠の眠りかな?
オチを知らないと、ちょっと変な感じはしますが、そう悪い人にはまだ見えないですよね。ハムがトッピングされたお届け物のピザを貪りながら、サムにお礼のメールを書くヒッグスを想像するとちょっと笑えます。
私も、今回の配信をまとめていたら妙にピザが食べたくなったので、ちょっと遠くのスーパーまで行って本格的な窯焼きピザを買ってきました。ハムがなかったのでベーコン・ピザです。残りはあっという間に子供たちに食べられてしまいました。M サイズのボックスに入るピザを一人で食べるヒッグスは、絶対あのトロイ・ベイカーさんの体型を維持できないと思うんですよね。
ちなみにトロイ・ベイカーさんは SILENT HILL 2 で主人公のジェイムス・サンダーランドの声を担当されたかたです。オマージュみたいな側面があるなら、ヒッグスの狂気と女性への暴力性はこれが元ネタとも考えられるかな? これも強引か。
今回の配達は、気軽にバイクというかトライクに乗れるようになるタイミングからしても日本のデリバリーピザを意識しているはずですが、焼きたての熱々のピザがなにかの暗喩になっている可能性はあるかなと思って、Urban Dictionary あたりで“pizza”を引いてみました。「イタリアで誕生した人類史上最高の料理」とか「神々の食べ物」とか「現代のアメリカ合衆国の野菜」みたいなネタがズラズラ並んでいて、いまいちピンとこなかったんですが、強いて言うなら「マリファナの隠語」っていう説を採用して、ミュールの中毒症状から分離過激派テロリストへみたいな進化でヒッグスにつながるかなぁ?
マリファナは中毒性が低いらしいんですが、なるかならないかで言うと中毒になりますしね。その場合、ヒッグスがテロリストになる前から軽い薬物中毒者、あるいはその比喩である配達依存症だった疑いも出てくるし、薬の影響が絡んでくるなら『サイレントヒル』シリーズのネタが残ってるとも考えられるかな。いや、また強引か。病床の妹にマリファナをって言うならもっと想像しやすいんですけどね。なんならブリジット・ストランド大統領のお見舞いのときもモルヒネと一緒に熱々のピザを持っていってあげればよかったね。
ま、いろいろ考えたけど、ピザがおいしいからどうでもいっか。
最後にプライベート・ルームで休憩すると、自動配送ロボのフィギュアが追加されていました。METAL GEAR SOLID の AI はアメリカ合衆国を牛耳っていたけど、DEATH STRANDING の AI は自ら現場に出て、ミュールやテロリストに破壊されながら健気に荷物を運ぶんですね。
北米大陸の良純と呼んでくれに続く
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2 Comments
この間は唐突にコメントして驚かせてしまってすみませんでした。
配信楽しかったです!👍👍
小島監督がBBの推進力が謎だと言っていた動画を載せておきます。
2019年のE3の動画です。43:33辺りで言及しています。
https://youtu.be/NKI5QXAFims
おお、vylga さん! こちらにもコメントありがとうございます👍
いやいや、私が勝手にスパムや攻撃的なコメントを警戒していただけなんですよ。どうかお気になさらないでください……💦
そうそう、情報提供もありがとうございます~!
なるほど、2019年のプロモーション時からすでにセルフツッコミが入っていたんですね 😂
記事本文にも教えていただいた動画、追記させていただきますね。
うちはゲーム好きの趣味語りとか全面的に歓迎してますので、またお暇でしたら遊びにいらしてください~✋