やっとオープニングムービー
オープニングムービーで考えたことをつらつらっと。
細かく書いていたら、オープニングにたどり着くまでこんなにかかってしまいました。やっとゲームが始まるよ~! 安部公房の『なわ』の引用が終わると、ゲームの主人公サムが爆発ポエムを詠み上げます。
昔 爆発があった
この宇宙は 爆発で生まれた
昔 爆発があった
この星は 爆発で生まれた
昔 爆発があった
この生命は 爆発で生まれた
そしてまた 爆発が起こる
宇宙が爆発で生まれるのは私でもわかるんですが、ビッグバン宇宙論ですよね。英語音声では「時間と空間が生まれた」と表現されているので、のちにハートマンが、浴びるとそこだけ急速に時間が進む時雨や、物理法則を超えて視認できない BT を例に挙げて、デス・ストランディング現象や BT によってこれまで当たり前に我々が認識してきた次元の常識が崩れ始めていると語る、その秩序が最初の爆発で築かれたと考えられます。
次の星が生まれる爆発がよくわからないんですが、超新星の爆発とかそんな感じでしょうか? 星ができるのは星を構成する物質が引力で中心に引き寄せられる力と、外側へ分散しようとする力がある程度同じになって均衡が保たれている状態だと認識しているんですが、そうなるまでのエネルギーの衝突を指しているのかな? 狭義に地球の誕生だとすると微惑星同士の衝突によるエネルギーを爆発と表現しているんでしょうか? 英語音声を聞いていると「ビッグバンでできた空間で回転する星が生まれた」みたいな表現になっています。そういえば、このゲーム、自国以外の状況もわからないほどカイラル雲に国土が覆われていて、上空の様子もまともに観察できない設定なんですよね。なので、リアル志向のオープンワールドにありがちな時間経過による昼と夜の差がありません。これも次元が狂うことで星の自転にともなう諸々の現象も常識が通用しなくなったということなのかな。
生命誕生の爆発はもっとわからないんですけど、恒星が強烈なフレア爆発を繰り返すことで地球上の物質の化学変化が促されて有機生命体が生まれたみたいな説でしょうか? サムが「オレたちも知ってのとおり」みたいに付け足しているので「オレみたいなバカは知らねぇよ!」と言いたい気分なんですが、英語では不可算名詞の“life”を使っているので、漠然とした生命なら有機生命体が誕生するきっかけが爆発だったという解釈になるはずです。あるいは、カンブリア爆発みたいな細かいこと言い出すと爆発は関係なさそうな名ばかり爆発も含んじゃうのかな? 上の2段を考慮すると、デス・ストランディング現象で通用しなくなった常識の変化が絡んでいそうなので、大量絶滅の反対の大量発生もありかなと思いました。環境の劇的な変化で進化が促されて、それまでにない種が大量に姿を現すイメージですね。たしか物語の後半で絶滅は進化のチャンスでもあるみたいな話の流れがあったはずです。ゲーム本編では出生率も激減していましたし、それまでの子孫を繁栄させていれば自ずと進化する当たり前が通用しなくなってしまった感じでしょうか。上の2段と違って、この爆発はそれでもしぶとく生きていく生命の可能性が残されているので、これがオチにつながるのかな。日本語の字幕だけだと、受精の瞬間に卵子が火花を散らして輝くらしい話とかも想像しちゃいそうですけどね。もっと言えば、胎児が成長過程で繰り返す細胞分裂とかもけっこうなインパクトらしいので、爆発と言えなくもないのかなぁとか、最初は考えていました。
最後のまた起こる爆発については、のちほど実際に目の前でイゴール大爆発が起こるのでそのときに。
オープニングムービーが始まって最初の感想は、やっぱり「めちゃめちゃ映像キレイ!」でした。本当にリアルです。リアルだけど、ファンタジーっぽい理想も詰まっているちょうどいい塩梅です。見た感じ、乾燥した砂漠地帯とか、赤土の地層とか、ザ・アメリカ感がある地形があんまりないので、時雨の影響だとか次元の歪みだとかは生態系や地質学的な部分でも影響が大きいと考えたほうがいいんでしょうね。
美しい風景が連続で映るんですけど、よく見ると遠くに BT がいることを示す黒いへその緒が天に向かって伸びていたり、岩が浮いていたり、クリプトビオシスが漂うサンゴみたいなのが岩の隙間に交ざっていたり、カイラル物質が育っていたり、ゲームおなじみの風景もちゃんと違和感なく混ざっています。これが地味に、でも素直にすごいなと感心してしまうところです。
そして逆さ虹を背景にタイトルが表示されます。逆さ虹は運がよければ氷の結晶を通した光の屈折などで普通に観測できるそうですが、そういうのがなければ、これも次元の乱れで当たり前の物理法則が通じなくなった現象としてとらえたほうがいいのかもしれません。基礎知識がないから説明を読んでもいまいちわからないんですけど、観測者を中心にして光源である太陽と反対側に虹の中心点がくるそうです。基本的には地平線の下にある太陽から光が届かないと逆さ虹はあり得ないって認識でいいんでしょうかね? 光が歪んでこの世界に入ってきているイメージでしょうか。
追記
本作の逆さ虹は下向きになっている以外にも、色の並びが通常と逆になっているんでした。なので、やっぱり物理法則が乱れている現象とみていいでしょうね。
オープニングのクレジットムービーでは普通に白いフォントでタイトルが表示されていますが、ゲームのメニュー画面では黒文字にへその緒がついているんですよね。へその緒付きの文字は上段のへその緒が被って判断がつかないものを除けば、「E」「A」「T」「S」「T」「I」「N」「G」です。“EAT STING”は目的語に冠詞が必要ないか気になってちょっとモヤッとするし、下段のへその緒被りも含めて考えると“EAT STANDING”でいきなりステーキ感漂ってしまいます。アナグラムかなと思い立ち、オンライン世紀末ライフシミュレーションの核発射コード解読で知っていた専用ツールにサクッとかけてみると“ESTATING”が一番それっぽいという結論になりましたが、だからなんだと思ってしまう程度の結果だったので、あんまり文字としての意味はないんじゃないかなという結論で妥協して諦めることにしました。上段は真ん中、下段は両端の文字がヘソの緒垂らしてるから、絵面的にバランスいいじゃんっていう気持ちですね、ハイ。
強いて言うなら、“antedating”とか“gestating”とか“antigens”とか、全部使い切ろうとしなくても一連のアルファベットの組み合わせで興味深いワード作りはいろいろできるので、「コレ!」っていうひとつの単語だけじゃなくて、示唆したいキーワードが複数あるとか、そんな感じで受け取ることにしました。ま、10個くらいアルファベットあったらそりゃある程度の単語はできるだろうけど。
あらためてオープニングムービーを観ると、映画監督のシェルターが近くにありそうな感覚がしてくる荒野をサムがバイクで走っています。まあ、映画監督の近くはあり得ないにしても、どこらへんを走っているのかあとでよく調べてみようと一瞬思って、そういえばここら辺は爆発で吹っ飛んでいる可能性が高いんだったと気付きました。
すでにタールを湛えるクレーターもできているんですよね。これはデス・ストランディング現象でできたものなのか、それとも中部のテロみたいに爆弾でできたものなのか……。
第二次遠征隊の正規装備のほうを見慣れてしまったので、フリーのポーター時代の装備は逆に新鮮です。あちこちに“POTER”の文字が入ってて、どこから見ても「フリーですが、なにか?」アピールがすごい!
バイクには“RAVEN”と“372c”、それからスペードの1のロゴ。ついついいろいろ見てしまうんですけど、ついでに細かいこと言うと、バイクにブーツハンガーついてるのって作中ありましたっけ? なにげにレアな気がします。腰元の水筒は、最初は通信機器とかバッテリーの類だと思っていました。正体はハイテク水筒でしたね。
バイクはサムを演じたノーマン・リーダスさんが自身のバイク番組を持つほどのバイク好きなので、細かいこだわりが見受けられるんですが、私はもう何世紀も前に普通二輪の免許を取ったっきり乗っていないので、知識がまったくないんですよね。この世界のバイクは安定性がすごくよさそうだから、ちょっと乗ってみたい感じはありますけど、うっかりポーター相手に人身事故を起こす自信もたっぷりあります(実際にうちのサムも2回ぐらい事故を起こしてました)。平謝り!
バイクで荒野をひた走るサムに時雨が追いついてきました。このサムが通る隙間の空いた岩、逆さ虹が架かる(ぶら下がる?)し、焼却場の近くでよく見るカラスが湧き出るように上空をワラワラ飛んでるし、なんか象徴的ですよね。なんとなくの推測ですけど、女の股を模したもので、受胎か誕生、あるいは転生の表現かなと考えたりもしました。宗教関係の建築美術で多そうなテーマです。
サムのフードなんですけどね、骨がちゃんとあるのは風で煽られて脱げない設計でいいと思うんです。でも、さすがにこんなフードだと心許ないですよね。座礁地帯も真ん中のほうに行くとかなり豪雨になるので、実際こんなフードで配達していると顔だけおじいちゃん通り越してドクロになりそうです。ある意味、ダイハードマン。実際、フェイスマスクを追加で被るぐらいでもいいんじゃないかな。
フロントフォーク周りにものすごいお手製感あふれる応急処置の痕跡があります。これもポーターならでは、ですよね。第二次遠征隊は惜しみなくリソースが投じられるので、どっかの車庫に入れりゃあすぐ新品同様に修理してもらえます。贅沢! はがれたテープで一部見えない文字は“ENDURANCE”だと思うんですけど、こう見ると皮肉です。それか、逆にバックアップしてくれる大手組織がないなかできちんと動作するバイクは END 極振りのタフネスと言えるのかな。
雨に追いつかれてカラスがやられたところで、崖を飛んで逃げる2匹のシカを目撃するサム。残念ながら後ろのシカはジャンプ力が足りずに落ちてしまいます。このシカってなんの暗示なんでしょうね? 一般的には純真無垢なイメージがシカには多いんですけど、二匹セットだと作中のだれか二人組のことを指しているのかなと思ったんですが、いまいちピンとくる顔が思い浮かばないままでした。あくまで厳しいデス・ストランディング現象後の自然の演出と、崖で行き詰まったサムの目下の進路示唆だったのかな。
崖を無事に渡ったサムの前に突如現れるフラジャイル。私、このゲームをやり始めた理由のひとつが、この子、レア・セドゥなんですよね。かれこれ映画『ミッション:インポッシブル / ゴースト・プロトコル』に出演したころから好きなんです。だれか、届くメールの差出人と「いいね!」してくれた人の名前が全部この子になる MOD を作ってください。このゲーム、おっさん連中も絵文字いっぱいのかわいいメールをくれるので、きっと妄想がはかどるゼ☆
これは私が勝手に確信していることですが、フラジャイルはきっとサムに惚れていると思います。最初から抱かれてもいいと思っています (断言) 。だからバイクの進路もわざと体を張って塞いだんですよ。なんか彼女は、男心を刺激するいじらしさがありますよね。
それにしてもすごいですよね、今やボンドガールですよ。普通ならこの子だけが目玉になって終わってしまうところですが、主役はノーマン・リーダスだし、重要な役回りながら最初は小出しの出演シーンしかないナゾの人物にはマッツ・ミケルセンというキャスティングだし、すごい顔ぶれです。これだけお金かかってるとキャストの話題だけでごり押して終わってしまうリスクもありそうなもんです。そういえば The New York Times もプロモーションがさながら映画だと指摘していましたね。
今回、ちゃんと本業の俳優さんをゲームのキャラクターモデルに起用するのはすごくいいなと感じました。というのも正直な話、日本のゲームやってると、「あ~、特撮の人の動きだな~」って感じること、多いんですよね。もちろん、あのかたたちもその道のかなりのプロだし、表現の問題だから、善し悪しの話じゃないんですよ。ただ私はあの被り物をしていることを前提にした大きな動きや、席が遠い観客まで意識した大振りの演技をゲームでは不自然に感じてしまうんですよね。ムダに大きな動きに、カメラが目の前にある映像作品を作っているのに、そこまでバタバタする必要あるのかなって思ってしまうんです。キャラクターにリアリティがないっていうか。そう考えるとドラマや映画の俳優さんのほうが完成物に求められるリアリティが感覚的に近いんじゃないかなと考えた話です。
バイクの進路に突如現れるというフラジャイルのお茶目さんぶりのせいで、サムのバイクが横転して大事故が起こります。初見では、サムの手足は大丈夫かとか、あんな固そうなケース背負って転んだら絶対背中やられそうとか、自分が転けたときの気持ちで観てしまうんですが、二周目は完ぺきにゲームプレイ視点になるので、思うことはただひとつ。
「あぁっ、オレの荷物が~!!!」
こんなんフラジャイル相手でも思わず暴言出るわ。もはや劣化率と荷物の数しか眼中にありません。崖下に落ちたバイクも実際にゲームプレイが始まればみんなが至る所に乗り捨てたバイクを拾えるので、痛手というほどでもありません。問題はバイクに載せていた大事な荷物なんです……。
ということで、愛しのフラジャイルのせいで事故ったところから初めてのサム操作が始まります。ここのサム操作はお試しプレイみたいなもんですけどね。
初めて~の、サム~♪ に続く
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