新型コロナウイルスがまたブイブイ言わせてますが、みなさんお元気ですか? うちは翻弄されっぱなしで、また仕事のテンポが狂っていきそうです。子供の学校のスケジュールも変則的になるかもしれないし、見通しがあんまりよくありませんが、できれば小さくても楽しいことをどんどん見つけるようにしようと試みています。人生なんて、本当に楽しんだもん勝ちやで。そんなわけでこの年末は、いつものプレイ日記更新やゲームの配信が素っ頓狂なペースになっていてもお察しください。

こんな嵐の気配を感じている私とは対照的に、ブリッジズ第二次遠征隊になったサムは、前回で東部エリア最西端のポート・ノットシティに到着して、一仕事終えたあとの安らぎの一時を堪能していました。

眠りから戻るのは、海の底から浮上する感覚に近い。
結び目から帰還するときとは逆だ。海の底に繋留された身体のイメージを求めて還ってくる。
目覚めること、現実に帰ってくることとは、どんな意識の運動なのだろう。
ビーチは個人の意識に紐づいていると定義されている。覚醒するときの上昇の感覚と、よみがえるときの下降の感覚。ビーチと無意識。それはクラインの壷のように、ねじれて背中合わせになった関係を結んでいる。

小説『デス・ストランディング(上)』

このポート・ノットシティのプライベート・ルームで目を覚ましたとき、小説版のサムがその感覚をあらためて言葉に表しています。上に書き出したその文章からすると、眠りから目覚めるときは上昇する感覚で、死んで結び目から肉体に帰ってくるときは下降する感覚らしいです。私としては、後者の感覚は意外でした。死は足下の黄泉の国から上がってくる感じじゃないんですね。BT もたしかに浮いているし、肉体を離れてさまよっていたカーがまた天から地上の肉体に戻ってくる感覚なのかもしれません。戻ってくるときの感覚が違うということは、夢のなかで訪れるアメリのビーチと、そこからつながっているらしい結び目は似ているようで非なる場所と仮定したほうがよさそうです。

せっかくなので、このままここのプライベート・ルームでまた気になるメールや過去の文書を掘り返していくことにします。まず最初に取りあげるのが、前回会ったばかりのヴィクトール・フランクさんです。

ヴィクトール兄さんからのメール

「死んだイゴールを思い出す」というタイトルから始まるとおり、サムから訃報を聞いた弟についてメールで語ってくれるヴィクトール兄さんです。宇宙飛行士の格好をした形見のルーデンス人形にふたたび言及があり、「あいつの分身みたいなものだ」として、サムがこの人形と西海岸へ行くことで、イゴール先輩が果たせなかった第二次遠征隊の任務を代理で果せることになるというふうな考えを示しています。なんか、ええ話じゃない……? ワシ、こういうの弱いねん。

小説のサムも、ヴィクトール兄さんから夢を託されていると知って、悪い気はしなかったようです。ヴィクトール兄さんはかなり人間ができているみたいで、よくありがちな弟の訃報にばかり心を奪われる様子は一切なく、むしろ一人で北米大陸を横断して各地の拠点を結ぼうとしているサムに「ここは孤独な衛星ではないんだ。地球と外宇宙をつなぐ結び目なんだ」とサムがもたらした希望について興奮気味に語っていたそうです。ちゃんと気持ちを切り替えてポジティブな考えかたもできる大人なんですよね。サムのほうもぶっちゃけ、ダイハードマンから指令をもらうよりは、こういう個人の期待に応えるほうが、フリーランスのポーター時代と同じ感覚なのでやりやすくて気が楽だと感じています。

BB-28を心配するベンジャミン・ハンコックさん

次のメールは K2西配送センターから届いたベンジャミン・ハンコックさんのお便りです。「BB を大事にしてくれているか? 大丈夫か?」というタイトルに父性が炸裂しています。アンタ、BB-28の一体なんなんだ……。

メールの内容をよく読んでみると、彼もブリッジ・ベイビーに感情移入せずにはいられない真っ当な感性の持ち主であることがわかります。「いいね」されたこともあるので、とても装備品とは思えなかったとのことです。

あえて気になる文章を挙げるとすれば、やはりブリッジ・ベイビーが水に「沈んだりするのは怖がったりする」という一文だと思います。ポッドが水に浸かることで BB-28のストレスゲージが減るということは以前にも取りあげたことがあったんですが、普通の水がなにかのキーワードになるのかな?

ジョージ・バトンさん

お次は、K2西中継ステーションのジョージ・バトンさんからのお便りです。以前にサムが配達直後に評価される5項目、安全性、数量、速度、サービス、ブリッジリンクのうち、配送担当者がどれを重視するかという話を書いたことがあったんですが、その続きのお話として、バトンさんはブリッジリンクが一番重要と考えていることがこのメールで判明しました。

ブリッジリンクの評価項目は、ほかのプレイヤーとのつながりが評価対象になっていて、配達の手助けをしたり、建設物を建てたりして、「いいね」を受け取ることで評価が伸びていきます。メールに「BL が増えていけば、他者からの助けの手が、より多く差し伸べられるはずだよ」と書かれているとおり、この項目の評価グレードが上がっていくほど他者とのつながりに関わるブリッジリンクの機能も充実していきます。

正直に書くと、私、このバトンさんからちょっと恐怖を感じます。「つまり、これこそ BL つまり Bridge Link だ ♥」でハートマークまでつけて書き切るあたりに背筋がゾッとするような感覚がします。だいたい人間の絆のよさとかを普段からやたらと強調したがる人って、むしろ精神的に不安定なことが多いから、その反動でキレイごとに酔いたがる側面があると思うんですよね。この人、物語にはあんまり絡んでこないキャラクターだけど、けっこう根は社会性に問題がある人柄の設定なんじゃないかなというカンが働きます。間違いだといいんですけどね。

追記 追記
コメントで、ジョージ・バトンさんのメールは英語で読むとわりと普通だと教えていただいたので、確認してみました。

Bridge Link について英語で語るジョージ・バトンさん

たしかに、気弱な人が普通に頑張っている印象を受けます。やっぱりハートマークは使いどころを間違うと、文面全体に狂気が漂うようになるんやで……。

オジサンたちからのメールはここまでで、ここからはカイラル通信のネットワークがポート・ノットシティまで広がったことで読めるようになった過去のオジサンたちのメールを確認していこうと思います。

大統領への報告 #1

【大統領への報告】
大統領、今日からここが、あなたの新しい執務室です。住居の移設も終了しました。このことは主要スタッフにしか知らせていません。合衆国の大都市が爆発のせいで消えてしまってから、あなたがアメリカ再建にすべてをささげたセントラル・ノットシティは、残念ながらもはや安全とは言えません。分離過激派の活動が東側でも目立つようになってきました。
フレデフォートこと、セントラル・ノットシティにあなたがいると、ほとんどの人間が思っています。ブリッジズの本部もそのまま機能させています。ご指示のとおり、カイラル通信の研究開発機関と、配送システムの運営拠点は、内密にこちらの、サドベリーすなわちキャピタル・ノットシティに移転させています。あとは、セントラルとキャピタルの間でのカイラル通信の実証実験が始められるように急ぎます。もちろん、大統領、あなたの治療も。ここから、アメリカ再建の新たなステージを始めます。

ダイハードマン

最初の過去のおじさんメールは、1年数か月前にダイハードマンが大統領に送った報告文書です。大統領の執務室をセントラル・ノットシティから内密にキャピタル・ノットシティに移していたことがわかります。目的はテロ攻撃を避けるためという名目ですが、1年数か月も前からだったんですね。てか、メールの送信日時に「数か月前」みたいなザックリとした表記があるのもなかなか斬新です。内部データをちゃんと見れば具体的な日時がわかるんでしょうけどね。

ここで注目すべきなのはやっぱり、ブリッジズ本部の機能はそのままセントラル・ノットシティに残しているのに、第二次遠征隊の仕事に欠かせないカイラル通信と配送システムの重要な機能は、ブリジット・ストランド大統領の「ご指示のとおり」キャピタル・ノットシティに移していることだと思います。イゴール先輩が大爆発を起こしたときに、たぶん、絶滅体のブリジットとアメリが意図してやっている説もあると書いていたんですが、計画的にサムを巻き込んでセントラル・ノットシティを切り捨てるつもりで動いていた可能性も十分考えられると思います。

大統領への報告 #2

【大統領への報告】
大統領、実験は成功です。セントラル・ノットシティと、キャピタル・ノットシティ間でカイラル通信は無事に繋がりました。
カイラル濃度の急激な上昇や不具合も見られません。Qpid は、理論値通りに稼働していると、報告がありました。
カイラル・ホログラムやカイラル・プリンター、DS の影響で失われてしまったデータや記録の復旧などの実証実験は、これからですが、まずは通信そのものの実験は成功です。これで UCA 再建計画はまた前進しました。
今後は通信以外の機能を検証していきます。第二次遠征隊の準備も順調に進んでいます。
UCA は必ず私たちが再建します。
はい、もちろんサムのことも捜索中です。

ダイハードマン

次も同じ、ダイハードマンによる大統領への報告メールです。先ほどのメールにもチラッと書かれてあったとおり、セントラル・ノットシティとキャピタル・ノットシティが実験的にカイラル通信でつながったことの報告で、メール文書の送信日時を見てみると、1年前に成功していたことがわかります。

カイラル通信の開発については、以前にママーの文書が先に読めるようになっていて、経緯が少しわかっていました。彼女は第一次遠征隊が出発する直前の3年前に Qpid の基本設計を終えて、あとの開発をセントラル・ノットシティの開発部門に託して第一次遠征隊の後発隊として出発していました。今回の情報もあわせると、開発メンバーはその後2年で、言い換えれば、サムが第二次遠征隊になる1年前にはカイラル通信の実証実験に成功していたわけですね。

そして、最後を締めくくる「はい、もちろんサムのことも捜索中です」というこの言葉でまた背筋がゾッとするお話です。この書きかたからすると、もちろん捜索するように指示を出していたのはブリジット・ストランド大統領でしょう。キャピタル・ノットシティへの必要機関の移転から、カイラル通信の開発、そして第二次遠征隊の準備にサムの捜索と、この一連の流れが書かれた報告文書に目を通していると、やっぱりブリジット・ストランド大統領がかなり前から計画的にサムを第二次遠征隊にしようと画策していた示唆じゃないかなという気がしてきます。

ミュールとポーター

今ではミュールと言えば、荷物を奪う配達依存症の集団、ホモ・ゲシュタルトとも言われる集団を意味するようになってしまった。
だが、すべての配達人がそうなったわけではない。本来、ミュールは配送組織のことだった。だから今でも、仕事を受注して荷物を届ける配送組織は存在している。その大手のひとつがフラジャイル・エクスプレスだ。
また、個人で配送をこなす“運び屋(ポーター)”と呼ばれる者たちもいる。配達依存症を発症しないのは、強力なリーダー・シップを発揮する指導者のいる組織か、個人のポーターが多い。
彼らに共通しているのは、個人の判断と責任が尊重されているということだ。
我らがブリッジズも、そんな組織であり続けるよ。人類の未来のために。

ダイハードマン

お次は話題が変わって、ミュールとポーターに関する話です。ちょうどサムがこれから同業者のフラジャイル・エクスプレスと協力する流れになるので、この世界の配送業界の説明として差し込まれているんだと思います。送信日時はまたさかのぼって2年前になっていますね。

ミュールはもともと健全な配送業者のことを指していたということなので、以前にズラズラッと書いた名前の由来の推測のうち、たぶん家畜のラバ説が一番有力かなぁという気がします。

あともうひとつ、配達依存症を発症しないのは、強力なリーダーシップを発揮する指導者に恵まれている組織か、個人のポーターだという件を読むと、やっぱりミュール自体が資本主義の企業や、盲目的な企業戦士に対する皮肉なんじゃないかなという気がしてきます。「個人の判断と責任が尊重されている」って、組織の利益が第一で、個が尊重されない組織体制のブラック企業にはおおよそ当てはまらないと思います。でもそう考えていくと、ブリッジズも個が尊重されまくってサムのワンオペみたいになっている点で、別の意味の真っ黒々な組織なんですけどね。ハッ……前回、唐突にダイハードマンがチームワークを強調しだしたのはそういうことなのかな?

時雨とブラックアウト現象

もちろん、ブリッジズには志願して入った。
兄のヴィクトールと一緒にだ。俺たちには、アメリカが生きていた頃の記憶がある。空を飛行機が飛んで、通信衛星のおかげで世界中が繋がっていた。世界は今よりもっと広かった。だから、それを取り戻すために二人で入隊したんだ。
兄貴は第一次遠征隊に選ばれて、もうすぐ旅立つ。俺はこのセントラルで仕事をつづけている。
死体処理班という仕事柄、時雨にはしょっちゅう遭遇している。
降り出したら、かなりの確率でブラックアウト現象が起きる。
カイラル濃度の上昇によって電磁波が変化して、それが電気系統をダウンさせるためだと言われている。さらに、その電磁波が水を分解し、オゾンが発生する。そのせいで周囲の温度が下がる。最初のうちは怖くて寒気がするんだと思ってたよ。
時雨には慣れたが、少し浴びすぎたようだ。
本当の歳より老けて見えるだろう?
兄貴に会ったら、笑われるだろうな。

イゴールフランク

最後のメール文書は、亡きイゴール先輩のお便りで、お兄ちゃんのヴィクトールさんが第一次遠征隊として出発する直前の3年前に書かれた日記のような内容です。イゴール先輩はそのときから死体処理班をしてきたんですね。そりゃ、イチかバチかの任務でお声もかかりますわ。

ベテランらしく、ブリッジズ謹製のマニュアルをあらかた頭に叩き込んでいたらしいイゴール先輩は、このメールの途中でブラックアウト現象について詳しく書き出しています。小説ではサムがイゴール先輩と一緒に死体を運んでいたときに、すでにそれらしい似たような説明が出てきていたんですが、ゲーム内ではこれが初めての文章で書き出された説明になるかもしれません。オゾン(O3)を発生させる電磁波って、ピンとこないんですけど、どんなものなんでしょうね? 以前にハートマンの過去のメール文書で、カイラリウムがカイラル線というなにかを発していることが明らかにされているんですが、放射能みたいなものかなという私のカンが正しければ、このカイラル線が電磁波の一種なのかな? 新型コロナウイルスの影響で、オゾンの殺菌効果に注目したオゾン発生器なるものが注目を集めていると耳にしたことがあるんですけど、仕組みを調べてみた限りでは、電磁波ではなく、無声放電で酸素から作るのが一般的みたいです。まあ、でも、心霊現象の現場はやたら寒いというホラーゲームあるあるの設定にデススト流の科学的な説明を加えてみたら、こういう感じなんでしょう。

最後の「兄貴に会ったら、笑われるだろうな」は、ここに至るまでの展開を考えるとちょっと悲しい締めくくりですが、見た目の年齢という話の流れから見れば、死体処理班という仕事柄、人より時雨を浴びてジワジワと老化が進んでいたイゴール先輩が本来、年上のヴィクトールさんと見比べてもどちらが年長かわからないぐらいになっているという理由付けになるんだと思います。この兄弟は年少者が時雨で老けることで見た目が似てきた兄弟ですが、このゲーム、見た目がそっくりな双子がほかにもいて、物語が云々というより、むしろそもそも登場人物のモデリングの工数を抑えるための工夫じゃないかというふうにも考えられます。たぶん、イゴール先輩とヴィクトール兄さんを演じてらっしゃる役者さんは同一人物ですしね。

さて、気になるオジサンたちのメールは以上でおしまいなので、サムにはシャワーを浴びて、おめかしをして、地上に出てもらおうと思います。

プライベート・ルームから地上に出るまでのエレベーターで、サムはまたいつものように BB-28と接続して、クリフォード・アンガーの映像を目にします。今回のクリフは手に宇宙飛行士のルーデンスのフィギュアを持っていて、視点主のブリッジ・ベイビーのポッドにつけてあげると話しかけています。ここの映像も、サムが目にしたばかりのものや感じたものが反映されているんですよね。

このフィギュアはヴィクトール兄さんとイゴール先輩が大切に持っていた人形と同じです。しかもポッドに付けられている点も同じです。ですが、このフラッシュバックの映像を目にすることで、人形の出所が違うことがわかります。これはよくよく考えると、BB-28とフラッシュバックの視点主が違うブリッジ・ベイビーであることの暗示になっているんですが、私みたいにぬぼ~っと一周目をプレイした人間には、言われないとわからない話でした。ええ、サッパリ気づきませんでした。

あと、人形をポッドにくくりつけたあと、クリフが口笛を吹いてくれる曲は、BB’s Theme というタイトルでサウンドトラックにも収録されているいい曲で、以前にも追い詰められたクリフが目の前のブリッジ・ベイビーに子守歌のように歌っていたことがありました。ゲーム中もサムがふとした折に BB-28に口笛を吹いたり、休憩中にハーモニカで吹いたりしますし、物語が進むと、サムとクリフの関係を解き明かすカギとしても機能するようになります。ま、前にも書きましたけど、私はサウンドトラックを聴くようになるまで、すべて同じ曲だと認識できなかったぐっだぐだなプレイヤーなんですけどね。

時雨が降ってる真っ最中のポート・ノットシティ

エレベーターで地上まで出て、前回ヴィクトール兄さんから指示されていたとおり、港の波止場のほうまで行こうと外に出てみると、前回ヴィクトール兄さんが雷鳴を気にしたサムに対して口にした「大丈夫、ポート・ノットに雨が降ったことはない」という言葉とは裏腹に、時雨が辺り一面にザーザー降り注いでいる光景が目前に広がります。グラウンド・ゼロ湖方面には立派な逆さ虹も輝いています。

そんなわけで、次回はここポート・ノットシティでサムが初めてのボス戦に挑みます! ちなみに前世のサムは戸惑うばかりで何回もここでボッコボコにされました。

指さし 初めてのボス戦に続く

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