見下ろすポート・ノットシティ

ポート・ノットシティへ

ご指名の配達依頼をこなしながら、前回で一度出発地点のキャピタル・ノットシティまで戻ってきたブリッジズ第二次遠征隊のサム。いよいよここから東部エリア最後の拠点、ポート・ノットシティを目指します。うちのサムワンもそろそろ初心者向けの練習エリアを卒業する時期がやってまいりました。大きな節目ということで、ここを過ぎると、またしばらくムービー続きになります。

ママーがサムの血液を使って絶賛開発中だった対 BT 兵器は、試作品が予定どおり仕上がったようです。小説『デス・ストランディング(上)』だと、理論的な原案はハートマンで、実用化に向けた具体的な設計はママーが担当したそうです。

今回は支援物資とともに、その新作の兵器も運びます。ゲームだと不安なセリフをかき消すように、バッチリ効果があること請け合いな雰囲気で試作品を受け取る流れになるんですが、小説ではどの程度効果があるのか本当に不確かなまま受け取るので、サムがじゃっかん責任を感じて不安がっています。

支援物資のなかには、閉ざされた都市部で近親交配が進むのを避けるための人工授精用の卵子と精子も含まれているそうです。そう言えば、サムがせっせと今までつないできたのはすべてブリッジズの配送拠点で、都市らしい都市はまだキャピタル・ノットシティしかないのでした。ポート・ノットシティをつなげば、人口が比較的集中している都市部を結ぶことがかなうので、ブリジットもアメリも危惧していた人口の減少に少しでも歯止めをかける施策が早急に求められているのかもしれません。

配達ケースのなかの卵子と精子は、カイラリウムの無時間効果を利用して保存されているらしいです。そんな便利なことができるなら、前回運んだクリプトビオシスも……と思ったところで気づきました。クリプトビオシスはもともとビーチ、少なくとも結び目に生息している存在なので、無時間効果の利き目が北米大陸のものと違うんでした。

サム指名の配達依頼 No. 14「ポート・ノットシティ[K3]へ支援物資を配送せよ」

今回の細かいミッションは以下のとおりです。

キャピタル・ノットシティ[K2]からポート・ノットシティ[K3]へ支援物資を運び、カイラル通信を接続する。
支援物資には、薬剤や保存された精子・卵子、完成したばかりの対 BT 兵器などが含まれている。ポート・ノットシティのために、困難な配送を成功させてほしい。

サム指名依頼 No. 14「ポート・ノットシティ[K3]へ支援物資を配送せよ」の依頼の詳細より

今回の配達を受注すると、試作品の兵器が道中で使えるようにサムにも別途支給されます。

血液グレネード

サム。開発した対 BT 兵器よ。完成したての第一号。既存のグレネードを改良したものなの。急ごしらえで作った試作品ね。理論上は完成していると言えるわ。でもその効果は、あなたに実地で試してもらうしかない。効果が証明できたら、あなたは BT を仕留めた最初の人類ということになる。ただし、使いすぎには注意して、使うのは、あなた自身の血液だから。血を抜きすぎたら、貧血症を起こすことだってある。

ママー

ママーはサムが配達荷物を背負ってキャピタル・ノットシティを出発した直後に、もう一度「対 BT 兵器『血液グレネード』を試してほしいの」と念押ししてきます。やっぱり作り手としても、ポート・ノットシティに届ける前に、効果を確認しておきたいようです。

しかし、サムの血液を使った兵器はこの後もいろいろ開発されていくんですが、ちょっと個人的に不思議なのが、みんなあらかじめその兵器にサムの血を込めておくんじゃなくて、サムがその兵器を使ったときに初めて、その場でサムの体から必要分の血を抜き取るんですよね。これって、どういう原理なんでしょうか……? たぶん手錠端末を使っているんでしょうけど、カイラリウムを使ったワイヤレス血抜きみたいなテクノロジーがあるんですかね?

当然、現場でやたらとサムの血が失われることになるので、デッドマンが輸血用の血液パックを持たせてくれます。その性質から、ほかのゲームで言うと、攻撃するたびに消費される武器の弾や魔力みたいなものと同一視していいかもしれません。このゲームではサムの体力も血液ゲージで表されるので、ゲームプレイ要素としては、回復アイテムも兼ねています。

あんたから採取した血液で作った輸血用パックだ。装備している間、あんたの血液量を回復する。

デッドマン

このふたつのアイテムは、カイラル・プリンターで作成できるほかのサムの装備や道具と同じ要領で、必要があれば配送端末から今後作って都度ほしいだけ受け取ることができます。

キャピタル・ノットシティを出て、目の前の小川を渡るころに、ダイハードマンが通信で突然チームワークを強調してきます。大丈夫? どうしたの、突然? 帰還者だからって、突然一人だけそとに放り出してしまったことを今になって後悔し始めたんでしょうか。仮面にも良心ありですね。それとも、うちのサムワンが、なにか協調性のないことをいたしまして……?

しばらく進んで K2西配送センター辺りまで来ると、今度はハートマンも一方的に通信で語りかけてきます。これまでも何度か過去のメール文書で読んできたとおり、ビーチの発見で死が身近になり、個人にひもづいたビーチを解明するために、心理学などのどちらかと言うと科学的というより精神的な分野で能力者(DOOMS)の研究が盛んにおこなわれてきたと説明してくれます。ハートマン自身も能力者なので、彼も研究対象にされて、カウンセリングやら星占いやらをやたらと受けたことがあるのかと思っていましたが、通信の最後に、ハートマンは研究者側の探究心をあらわにして「(サムの)カルテを、いつか見たいものだ」という言葉を述べます。

サムは以前にも研究対象になって、自分のなかに潜む毒のようななにかが暴かれることに嫌悪感を抱いていましたから、この通信が切れたあとに悪態をついてもおかしくないぐらいイヤな気分になっているんじゃないでしょうか。ハートマンはある程度サムと同じ立場で、気持ちがわかる人物と思っていましたが、めちゃくちゃ筋金入りの研究者でしたね。自分の目的がしっかりしているぶん、余計にタチが悪いのかもしれません。

サムのカルテと言えば、亡き妻ルーシーによるカウンセリングの診断書です。カウンセリングはサムと妻を結びつけた記念すべきもので、ルーシー亡き今は、サムにとって同時に苦々しい思い出がつきまとうものでもあります。サムが忘れられない大切な家族の記録であり、プライベートのコアな部分が詰まった情報でしょうから、絶対に見られたくないでしょうね。

ゲームのサムはちょっと背筋がゾッとする通信を受けていますが、小説のサムはポート・ノットシティへ抜ける山の稜線を遠目に見て、ちょっと癒やされています。距離を置いて見ると、山を越える大変さより、その美しさや崇高さが際立つようです。

配達依頼を受けてキャピタル・ノットシティから出発したサムは、自分がまるで機械になったような感覚になっています。最初は戸惑っていた第二次遠征隊の任務も、じょじょに慣れてきて、体も効率的に動くようになってきたようです。自分のこの機械になったような感覚は、ブリッジ・ベイビーがブリッジズから装備品扱いされるのとどこか同じじゃないかとも考え始めています。この二人は、ある意味で、背負った仕事のために、その内容に特化して自分を変えていくプロフェッショナルなんでしょう。

そこから大自然に癒やされる流れになって、やっぱり二人はそれでも人間だという結論になるようです。自然のなかで怯えることや、ストレスで自家中毒を起こすこと自体が、人間の証明であるというような理屈みたいです。職務で職場を離れると、仕事のためにフタをしていた人間味がよみがえってくるところもあるのかもしれません。

実際にゲームのなかで出会うポーターもそうなんですが、この世界の配達人は孤独を避けるために二人一組で行動することが多いらしいです。ポーターが仕事を辞める理由は、肉体的なものより、精神的なものが多いと言います。単独で任務にあたるサムは、こういう点でも、この世界の配達人としては、なかなかめずらしいほうと考えられます。

実際に山で荷物を運んでいる歩荷のかたの話を、以前に YouTube で拝見したときに、山に入るのが好きな人は、そもそも人間嫌いが多くて、むしろ人を避けるために登山や歩荷をしている人も少なくないと聞いて、みょうに納得してたんですが、この危険と隣り合わせの北米大陸では、さすがにちょっと勝手が違うのかもしれません。

遠目に見て美しいとサムが感じていた山は、実際に山道に入るとずいぶん印象が変わってきます。ここらへんはけっこうな確率で時雨が降っている定番の座礁地帯です。岩で歩きにくい山道は狭くて、すぐに BT に見つかりそうになります。

せっかくなので、ここの道中で血液グレネードを使ってみることにしました。グレネードが弾けると、真っ赤な血液成分が周辺に飛散します。その際に近くにほかの BT がいれば巻き込むこともできます。グレネードの爆発に巻き込まれた BT は、真っ赤になってもがき苦しんで、そのうちぐったりした様子で昇天していきます。へその緒も真っ赤になってしなって、最後にはちぎれているようにも見えます。黒いモヤも出ていますね。これで血液グレネードはゲイザー相手なら一発でビーチに送り返すことができるとわかります。

洞窟

山道のてっぺんでは、岩場に空いた洞穴を通ってグラウンド・ゼロ湖方面へ抜けることになります。

見下ろすポート・ノットシティ

洞穴を抜けると急勾配の坂道になっていて、すぐに視界が開けて眼下にポート・ノットシティが見えるようになります。この狭いところから一気に視界が広くなるゲームマップってよくあるんですけど、今作の場合はオープニングでも似たようなことを書いた記憶があるので、もしかしたらここも宗教建築の産道を意識した生まれ変わりの表現なのかもしれません。

ポート・ノットシティは、小説ではもともとボンネビルという都市で、ブリッジズ第一次遠征隊が到着したときにアメリカ都市連合(UCA)に加盟してポート・ノットシティという記号のような名前に改名したと語られています。ボンネビル(Bonneville)はフランス語由来の名前で、「良い」を意味する形容詞“bon(ボン)”と「定住地」を意味する名詞の“ville(ビル)”を組み合わせてできています。同名の都市がアメリカ合衆国の地図でどこらへんにあるか調べてみたら、ユタ州とかアイダホ州とか、けっこう西側に多かったので、いまいちつながりが見えてきませんでした。アメリカ西部を開拓したフランス生まれの軍人に同名の人物がいるそうですが、もしかしたら人物つながりの可能性もあるのかな?

Asylums for the feeling feat. Leila Adu

坂を下り出すところから、また曲が流れ始めます。今度はいつもの Low Roar ではなく、 Silent Poets の Asylums for the feeling feat. Leila Adu という曲です。2018年の E3で公開されたトレーラーで流れていた曲ですね。

この曲も孤独感となにか絡んでいるのかもしれませんね。タイトルの“Asylum”は亡命のことなんですけど、歌詞の内容が政治的じゃないので、精神を病んだ人が保護施設に入る「避難」みたいなイメージのほうでしょうね。タイトルは特定の感情のためにその保護を受けることを指していますが、その感情というのが歌い出しで語られる沈黙、なにかが欠けた不完全な気持ち、静かな過ちといったもので、後ろ暗いものを感じます。けっこう生きる意味を見失って絶望していて、最後のコーラスの盛り上がりでは「おまえの友達を全員連れてこいよ。みんなまとめてかかってこいよ。おう、つべこべ言うんじゃねえ」みたいな急にフランクな口調のケンカ腰になるので、なにがあったのか不安になる情緒不安定さもあります。サム、メンタル大丈夫かな?

ポート・ノットシティの人口

ポート・ノットシティのゲート前まで来ると、都市の名前とともに、人口51,329人も表示されます。思ってたよりも多いというか、キャピタル・ノットシティより多いんですね! どこらへんだろうと地図とにらめっこしてみたんですが、メンフィスとかのあたりかな? ミシシッピーと他州の境目ぐらいに見えたんですよね。メンフィスだとワシントン D. C. より人口が少ないけど、グラウンド・ゼロ湖の地形の変化がなんか影響を及ぼしているのかな?

はい、ということで到着しました。サムが第二次遠征隊として出発してからずっと目下の目標にしていたポート・ノットシティです。この東部エリアでは最西端にあります。ここの窓口になっている配送担当者は、サムと遺体を運ぶ途中で対消滅(ヴォイド・アウト)してしまったイゴール先輩の実兄、ヴィクトール・フランクさんです。この兄弟は、兄のヴィクトールさんが第一次遠征隊(後発隊)、弟のイゴール先輩が第二次遠征隊になる予定でしたが、イゴール大爆発が起きたせいで、兄弟でブリッジズの夢の橋をつなぐ野望はかないませんでした。

第二次遠征隊の代わり

ゲームの映像を観た限りでは、サムの姿を確認したヴィクトールさんが「第二次遠征隊の代わりだって?」といった言葉をはじめ、本来の第二次遠征隊はすでに全滅していて、代理の配達人が一人で任務にあたっているという事情をある程度知っているふうに話しています。

小説のヴィクトールさんは、第二次遠征隊に弟がいることを知っていて、無事にたどり着ける確率の低さを覚悟しながらも、久々の兄弟の再会を秘密裏に心待ちにしていました。そのため、第二次遠征隊として到着したサムが一人だけなのを見て、隊がすでに全滅寸前で、這々の体でここにたどり着いたと考えています。当然、弟の命運についても、サムから具体的な言葉を聞く前に察知しているところがあります。

ねぎらいの声をかけようとして、息をのんだ。
ホログラムのサムが幽鬼のように見えたのだ。後ろで縛っていた髪は、ほとんどほどけて、乱れた前髪が顔の半分を隠している。その髪には幾筋もの白髪が混じっていた。そげ落ちた頬は、やはり白髪交じりの髭に覆われている。目は落ちくぼんでいるが、鋭利な光をたたえていた。

小説『デス・ストランディング(上)』

小説のこのシーンは、ヴィクトールさん視点で描かれているんですが、おもしろいのはサムの印象です。彼はサムのことを「幽鬼」に例えています。つまり亡霊で、BT のような存在です。危険な大自然のなかで任務をこなしてきたサムは、気迫とかオーラだけでもほかと一線を画しているみたいです。

もっとも、小説のサムはゲームで運んだ支援物資と兵器に加えて、建設用素材なども大量にお届けしたようなので、うちのゲームのサムワンより働き者だったのかもしれません。持てるギリギリの重量で「水を飲ませろ」と悪態をつきながら目的地にたどり着いたとしたら、そりゃ鬼のような必死の形相にもなりますわね。

人形

小説ではイゴール先輩のことをはじめ、サムにいろいろ質問を投げかけようとしたヴィクトールさんが、思わず BB-28のポッドからぶら下がるルーデンスのフィギュアを目にして、最初にサムを問いただすことになる「その人形」のことなんですが、ゲームではカイラル通信をつないでホログラムがキレイになったことで、ヴィクトールさんがサムのフィギュアに気づいて話題が広がっていきます。

ヴィクトールさんのルーデンス

ズボンのポケットからヴィクトールさんも自分の人形を取り出します。にも書きましたが、小説で追加されたフランク兄弟のエピソードで、両親を失った幼い兄弟が、デス・ストランディングで崩壊し始めた北米大陸をさまよっていたとき、この宇宙飛行士の人形をお守りのように大事に持ち歩いていました。大人になってからもその存在感は大きいようで、イゴール先輩が握りしめていたルーデンスのフィギュアは、今でもサムが胸に抱える BB-28のポッドからぶら下がっています。ヴィクトールさんが懐からすぐに取り出せるのも、大事なお守りとして今も肌身離さず持っていることの示唆でしょう。

もともとこのフィギュアは崩壊前のアメリカでは人気だったようで、モデルによれど、子供が持っているようなこんな小型の商品は、それこそある程度は量産されていたと考えられます。それでも持っているだけでヴィクトールさんが弟とのつながりをすぐに言い当てられるところを見ると、今ではかなり珍しいものなんでしょうね。ルーデンス・マニアみたいなコレクターが出てくるわけです。

二人の話題はルーデンスのもとの持ち主に移り、サムは言いにくそうに言葉を選びながらイゴール先輩の最期を遺族に知らせます。ヴィクトール兄さんはめちゃくちゃ落ち着いた様子で、弟の訃報を飲み込みます。この家族の死を知った瞬間の妙に動揺しなくなる現象、めちゃくちゃリアルだと思います。

逆に同情してくれるヴィクトール兄さん

動揺を見せないようにする姿勢どころか、ヴィクトール兄さんは「そんなことがあってから、すぐにまたこんな役目を任された?」と社畜を労う優しい言葉までかけてくれます。おい、この人、ブラック企業にいても普通の感覚を保っている善人だぞ!「こいつは、いよいよだな」と言われたサムは、心のなかで「ホントにな!」と思っていることでしょう。

第二次遠征隊のメンバー

ヴィクトール兄さんは第二次遠征隊のメンバーとして、そのルーデンスのフィギュアも連れていってほしいとサムにお願いします。なんか……いい話だなぁ……。絶対はずせませんやん。

古代エジプトの死生観を掘り下げた記事で、私はイゴール先輩もサムの影にあたる「シュト」の一人じゃないかと言及したんですが、こういうところも大きいんですよね。ブリッジズの夢を背負って、宇宙飛行士ルーデンスのように荒野を開拓する精神は、イゴール先輩がサムの影として背負っていた性質じゃないかなと推測しています。

小説でヴィクトール兄さんは、サムについて、かつて人類に残された最後のフロンティアであった宇宙を探索する宇宙飛行士のようだと印象を述べています。これまでも、サムが歩くこの荒々しい北米大陸そのものが宇宙のようだと例えられることがあったので、宇宙を意識したスケール感が物語のコンセプトの根底にあるのは間違いないでしょう。

東側のマップ

サムが第二次遠征隊としてキャピタル・ノットシティを出発したとき、ノットシティをつないだ線がカシオペア座みたいだと書いたんですが、ノットシティが夜空に瞬く星で、サムがつなぐカイラル通信で星座のように浮かび上がるというギミックも、もしかしたら天文学のなにかを意識したデザインなのかもしれません。

血液グレネード

ヴィクトール兄さんは、ルーデンスだけでなく、「これを、あんたも持っていってくれ」と血液グレネードと血液袋まで支給してくれます。これ、その場ですぐカイラル・プリンターとかで作ってくれたのかな? 小説だと「ノットシティに納品されたあと、サムに支給される段取りになっていた」という記述があるんですが、もし本当にサムがここまで背負ってきたものを分けてくれたんなら、「今まで背負ってきた意味は……?」という気分にまたなりそうな気がします。あ、いや、ありがたいんですけどね。

船も作れるカイラル・プリンター

支給されたものをありがたくいただくと、今度はアメリまでホログラムで姿を現して、「カイラル・プリンターが稼働するようになれば、船だって新造できる」と言います。でっかい話だなぁ。

小説ではアメリの登場について、実際は地下からホログラムを通じてサムと会話していたヴィクトール兄さんの視点で、「天使の声」が天から降ってきたように描写されています。おもしろいなと思うのは、さきほどサムが BT にも近い「幽鬼」に例えられていて、本当に北米大陸を滅ぼす絶滅体のアメリが「天使」に例えられているところですよね。彼女こそ BT の親玉みたいな存在なのに、皮肉です。

あと、個人的に気になるのは、ほかの人たちのホログラムと違って、アメリのホログラムが黄色がかって表示されていることです。小説では生身の姿をそのまま投影しているのではなく、あらかじめ蓄積してあるアメリの姿のローカルデータも利用されている特殊性が取りあげられているので、技術的な差異を表すための区別かもしれませんが、私はどうしても、金色ならカイラリウムの結晶と同じ理屈でこの色なんじゃないかと疑ってしまいます。キューピッドの金色の矢じりが激しい恋情を催すことから、デス・ストランディングは絶滅体の発情期を示唆しているんじゃないかという仮説を私は立てています。

テロの懸念

ポート・ノットシティをカイラルネットワークに加えられたことを、アメリは喜んでくれましたが、しかしそれはいいことばかりでもないと、「テロに狙われることも増えるでしょう」と語ります。というか、2周目プレイだとわかるんですけど、そのテロリストをけしかけてきているのは、ほかでもない、あなたですよね? すげえ、女だぜ!

サムを待っている

アメリは最後に、また念押しするようにサムの到着を待っていると訴えかけます。なんとしてもサムには西海岸まで来てもらわないと困るというわけです。

また、小説ではこのシーンの違和感が視点主のヴィクトール兄さんによって明らかにされているんですが、ここでアメリはサムの到着を待っている主語に、一貫して「みんな(私たち)」を使っていて、「わたし」個人の話じゃなくなっているんですよね。

Any city that joins the UCA becomes a bigger target for the terrorists. But we have to accept the dangers and press on, no matter what. The rest of America is waiting, Sam. Waiting for you to take the first step and connect them to the chiral network. I know you can reach them.

Samantha America Strand

ここの彼女だけ、妙に第三者視点になっています。これって、トランプ大統領とか、選挙戦のときに主語を“We”にして呼びかけるのと似ていますよね。自分をニュートラルな立場にして、利き手に当事者感を芽生えさせるというか。

直前にアメリがサムに「西海岸で待ってる」と訴えかけた寝起きドッキリのシーンを振り返ると、このシーンでは、「私を助けて」というふうに、ちゃんとアメリ個人が主語になっています。つまり、彼女はブリジットの政治家としての手腕をちゃんと発揮していて、民衆の目があるときと、サム個人に訴えかけるときで、アプローチの仕方を絶妙に変えているんですね。サムの前では哀れなビーチ姫だし、民衆の前ではアメリカのために身を粉にする公僕といった感じです。

ブリッジズの船はない

アメリが言いたいことだけ言って突然姿を消すと、またヴィクトール兄さんが代わりに出てきて、今後の流れを指示してくれます。これからサムは、デス・ストランディングの爆発で北米大陸の真ん中にできた大きなクレーター湖「グラウンド・ゼロ」を渡って、西岸の中部エリアへ向かいます。しかしここにあるブリッジズの船は全部テロにやられて使い物にならないとかで、民間の運送会社「フラジャイル・エクスプレス」に協力を仰いだそうです。これは、オープニングムービーのあとでサムに接触してきた女性の会社ですね。しばらくぶりの登場なので、忘れてしまう人もいそうです。初回プレイ時は「そんな人おったなぁ」という感じだった私です。

雷鳴

フラジャイル・エクスプレスの船はすでに入港間近らしく、準備ができたらサムも波止場にじかに行けと言われます。その会話の最中、そとから雷鳴が聞こえてきます。時雨の気配です。

時雨が降らない場所

心配そうにそとに目を遣るサムの姿を見て、ヴィクトール兄さんはここで雨が降ったことがないと教えてくれます。こういうブリッジズの拠点を築いたのは第一次遠征隊ですが、場所を選定するときに、アメリのビーチ由来のカンをもとにして、比較的安全な場所を選んでいるようですね。死体処理班のイゴール先輩も、ノットシティの周りでネクローシスを起こすまいと必死で気を遣っていましたし、ノットシティの周辺はあんまり BT とかの脅威がない気がします。

プライベート・ルームで休んでいけ

ヴィクトール兄さんはサムを労って、プライベート・ルームでの休憩を勧めてくれます。サムも納得したのか、このムービーではプレイヤーの介入なしに、そのままサムがプライベート・ルームに直行します。

血液袋

いつもどおり、プライベート・ルームで横になってすぐに寝てしまったサム。対 BT 兵器が本格的に運用されるにあたり、貴重な資源であるサムの血液を、できるだけ無理なく確保するため、サムは今後プライベート・ルームで寝るたびに500ml の血を抜かれます。ブラック企業の特徴に、あらたな強制献血の項目が加えられました。恐ろしい組織だぜ!

ところでこのとき右下に表示されている蚊みたいな赤いマークってなんなんでしょうね? 本当に蚊かなぁ? 病気を媒介する性質を指しているんなら、サムの血液からそういった危険因子を取り除くテクノロジーが稼働している目印みたいなもんでしょうか? 蚊はクリプトビオシスと違って六本脚ですもんね。あんまりほかの仮説とつながるフックにはならないかなぁ。

今回もそろそろいいボリュームになってきましたし、これから西岸にたどり着くまでムービーがどんどん挟まるので、今回の記事はここまでにします。次回は、また読めるようになった昔のメール文書を確認して、波止場に向かおうと思います。

指さし オジサンたちのメール確認回に続く
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